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コンテンツ入門:UXライティング

コンテンツ入門:UXライティング

翻訳記事 Apr 13, 2022

この記事はGather Contentのブログ: Content 101: UX Writingの翻訳転載です。著者のパトリック・スタッフォードさんの許可を得て公開しています。

UXライティングとは何か

コンテンツ戦略の役割と分野が幅広く定義されるなか、新しい分野が出現してきています。なかでも最も重要で急成長しているのが、UXライターという仕事です。

Google、Facebook、Booking.comなどのデザインチームで欠かせない存在となっているユーザーエクスペリエンス ライターは、ユーザーインターフェースで見たり聞いたりするあらゆるテキストを作成します。ユーザーとコンピューターが一緒に何かを成し遂げようとする場面では、必ずUXライティングの仕事があります。

Dropboxのアンドレア・ドゥルゲイは、このように説明しています。

"UXライティングもコンテンツ戦略も、その「プロダクト」がソフトウェア(SaaS)であれ、Eコマース(小売)であれ、メディアサイトであれ、プロダクトでの体験全体を広く考慮する必要があります"

アンドレア・ドゥルゲイ - Slack社 グループマネージャー(コピー)
Twitter LinkedIn


頭についている「UX」が、ここでは極めて重要です。なぜなら、インタラクションデザイン中に配置されたコピーは、ただのコピー、つまりデザインの専門家であり出版も手がけるジェフリー・ゼルドマンが言うところの「装飾」ではないからです。UXライティングは、ユーザーの行動を促し、その助けになるもので、正式なUXプロセスの一部として設計、反復、検証した場合に限り、効果的に機能します。

インタラクティブなデザインにおいては、ユーザーの行動を阻む抵抗感のないコピーが競争優位性を生み出し、それが価値に直結します。そのため、UXライティングに対する注目が高まるのは、ごく当然の流れなのです。

UXライターは何をするのか

UXライターは、デジタルプロダクト全体で使用されるコピーを作成します。これには、ボタンやメニュー、エラーメッセージなどのコピーも含まれます。一般的なコピーライターとは異なり、UXライターはユーザーとユーザーエクスペリエンスの設計について徹底的に理解する必要があります。

Microsoftのジョディ・アラードの言葉を借りると、「UXライターは、単に文章を書くだけではない。顧客の擁護者として、顧客視点からエクスペリエンスのあらゆる側面を考慮する」ということです。

UXライターの基本的な仕事は、タスクの各段階で、そのタスクを行なうべき「理由」とその「方法」をユーザーが理解しやすいように説明し、シンプルで簡単だと感じられるようにすることです。UXライターは、デザインプロセスを通じて、ユーザーエクスペリエンスを向上させるために何を変更、削除、あるいは追加すべきかを、プロダクトデザイナーやプロダクトチームに提案することもあります。

Mailchimpのスコット・キュビーは、UXライティングの分野におけるオピニオンリーダーで、このツイートは、UXライティングの根幹について、UXライターの間で共有されている一般的な見方をよく捉えています。

"あなたがUXライターなら、UXデザイナーでもあるのだから、UXデザインについて学ぶ必要がある。(必ずしも)UXデザインのソフトウェアは必要ないが、UXデザインの原則と方法論は必要だ。UXライティングは「アプリのライティング」というより、「言葉のデザイン」なのだ"

スコット・キュビー - Mailchimp社 スタッフコンテンツストラテジスト
TwitterLinkedIn


UXライターは、マイクロコピーを書き、ユーザーエクスペリエンスを向上させるだけでなく、企業やプロダクトのブランドボイス作成を助ける役目を担っています。また、ブランドボイスを組織内のすべてのコンテンツに適用するための手引きとなるスタイルガイドを作成することもあります。

UXライティングの分野で重要な思想家であるLatticeのジョン・サイトウは、そもそも企業がUXライターに投資すべき理由の核心を突いています。

"ユーザーは誤字脱字や矛盾に気づき始めると、あなたの会社に対する信頼を失い始めます。時間をかけてきちんとした文章を書けないような会社に、どうして時間やお金を任せることができるでしょうか?"

ジョン・サイトウ - Lattice社 シニアプロダクトデザイナー
TwitterLinkedIn

 

UXコンテンツの種類

UXライターが作成する具体的なコンテンツの種類は、企業、チーム、エンドユーザーのニーズによって異なります。とはいえ、最も一般的なUXコンテンツの種類は次のとおりです。

  • UIテキスト(UI = 製品を使用する際に画面や音声で提供されるインターフェーステキスト)
  • UXコピー(UX=マーケティングやサポートなど、ユーザーエクスペリエンスのあらゆる部分に関する文章)
  • インターフェースのコピー
  • UIコンテンツ
  • マイクロコピー
  • コンテンツ
  • プロダクトまたはプロダクト内のコピー

これらのコピーは通常ソフトウェアのために作成されますが、UXコンテンツは、Webアプリやその他のWebベースのインタラクションデザインのために作成されることもあります。複雑なウェブサイトのナビゲーションシステム、チャットボット、あるいはプロダクトセレクターなどがこれにあたります。

オンボーディングテキスト、使い方の説明、エラーメッセージ、コンテキストヘルプ、ツールヒント、フォームフィールドのラベルなど、すべてUXライティングの一部です。

優れたUXライティングの原則

ユーザーインターフェースのための文章は、詩を書くのに似ています。すべての言葉には目的があり、すべての文章は本質的でなければならず、意味が重要で、タイミングがすべてなのです。まるでDNAの一部であるかのように、簡潔な文章を提唱する必要があります。

しかし、優れたUXライティングの原則は、それだけにとどまりません。効果的なUXライティングには、以下が求められます。
 

  • 期待を持たせる
    ユーザーは、製品が自分に何をしてくれるのか、どうすればいいのかを理解する必要があります。説明と安心感が必要です。そのためには、明快で簡潔、かつ楽しいコピーが必要です。

  • ユーザーが質問する前に答える
    UXライティングは、ユーザーの質問を予測し、それに答えながら作業を進める必要があります。この対話こそが、UXライティングの核心となるものです。それを1つの画面に収めるのは容易ではありません。この対話は、ユーザーエクスペリエンス全体を貫くものです。

  • プロダクトに関する知識を示す
    ユーザーにプトダクトの最適な使い方を教えるためには、その仕組みも正確に理解しておく必要があります。何が難しいのか?何が簡単なのか?複雑なタスクや難しいタスクの場合、ユーザーが簡単に手順を追えるように、すべてのステップに分解する必要があります。

  • 徹底したリサーチ
    プロダクトについて上手に書くには、そのデジタルプロダクトがどのように機能するか以上の知識が必要です。そのプロダクトがユーザーに何をもたらすのか、どのように生活を向上させるのかを知っておかなければなりません。

  • 競合他社を分析する
    競合他社が何を提供し、それについてどのように語っているかを知りましょう。理想は、UXライティングによって、プロダクト独自の価値提案や、プロダクトがユーザーに提供する、他では簡単に見つからない最も重要な利点が補強されることです。

  • コンテンツデザインを取り入れる
    UXライターにとって、コンテンツは言葉だけの問題ではなく、いかにコンテンツをデザインするかも重要な要素です。優れたUXライティングは、ユーザーリサーチとユーザージャーニーに関する深い知識に基づいたコンテンツデザインの原則を取り入れ、ユーザーにとって最も有益な方法でコンテンツを提示します。

    UXライターがコンテンツデザイナーでない場合は、通常、プロダクトデザインチームの誰かと協力し、コンテンツにUIデザインの原則が盛り込まれるようにします。小規模な企業では、1人のライターがこれらすべてを担当することもあります。Google、Facebook、Microsoftなどの大企業では、特定の機能や製品を専門に担当するUXライターが何人もいるかもしれません。

ユーザーインターフェースのための文章は、詩を書くのに似ています。すべての言葉には目的があり、すべての文章は本質的でなければならず、意味が重要で、タイミングがすべてなのです。まるでDNAの一部であるかのように、簡潔な文章を提唱する必要があります。
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UXライティングの方法論

従来のコピーライティングのプロセスは、かなり単純なものでした。一般的には、ライターと企業が協力して、巧みで生き生きとしたコピーを生み出します。

UXコピーは、UXライターがデザイナーやリサーチャーと協力し、最終的には顧客自身と対面する、綿密でしっかりとしたプロセスの中で行なわれます。理想的なのは、UXライターが自らリサーチ内容を作成することです。

多くのUXライターにとって、伝統的なデザインプロセスは次のようなものでしょう。

  • 問題を定義する
    UXライターは、デザイナー、開発者、プロダクトマネージャー、ステークホルダーと協力し、目の前の問題のスコープを定義する手助けをします。それには、新規ユーザーの獲得、エンゲージメントの向上など、組織が抱えるさまざまな問題があります。UXライターの役割は、その問題を解決するためにUXライティングをどのように活用するか、あるいはUXライティングが適切なツールであるかどうか考えるのを助けることです。

  • アイデア出し
    UXライターは、デザイナーや他のデザインチームと一緒に、次に直面するデザイン問題の解決策を見つけるのを助けます。つまり、UXライターは問題を視覚的に問題の大枠を描き出す作業にも関わるということです。また、コンテンツの優先順位マップや階層構造などのツールを作成して、インタラクションデザインの中でコンテンツを配置する最も効果的な方法をチームの他のメンバーが理解できるようにします。

  • プロトタイプ作成
    デザイナー、プロダクトマネージャー、ステークホルダーなど、プロジェクトに関わるすべての人からフィードバックを得ながら、UXライターはデザイナーが選んだ解決策をより忠実に再現するためのプロトタイプを作成するのを手伝います。

  • リサーチ
    デザイナーやリサーチャーとともに、リサーチにおける重要な役割を担うのです。UXライターは、リサーチャーが顧客に提供する、コピーに関するタスクを作成します。また、プロトタイプで使用されている言語に対するユーザーの反応に注目し、リサーチの様子を観察することも必要です。

  • イテレーション
    UXリサーチャーと協力しながら、定性的フィードバックと定量的フィードバックの両方を受けて、UXライターはより効果的なUXライティングを行ないます。また、オプティマイゼーション マネージャーと協力して、将来のABテストのための仮説やフレームワークを作成し、より大規模なイテレーションを行ない、定量的なフィードバックを迅速に得ることもあります。

  • デプロイメント
    デザインをデプロイしていくなかで、技術的な制約や問題が発生しデザインの方向転換を余儀なくされた場合、UXライターは開発者やエンジニアと一緒になって、臨機応変にコピーを調整しなければならないことがあります。例えば、ツールヒントの警告のサイズを短くする必要がある場合、UXライターはコピーの文字数を減らさなければなりません。

誰がUXライティングに関わってくるのか

UXライターは実際にコピーを作成する責任がありますが、デザインチームの一員である以上、常にコラボレーションとインプットが必要になります。チーム内だけでなく、カスタマージャーニーに沿った顧客からの意見も必要です。

UXライターは通常、次のような人たちと密接に交流します。

  • UXデザイナー
    大枠を決めるセッション、アイデア出し、問題のスコープ設定に参加。デザインやリサーチを通して、コピーのイテレーションを継続的に行ないます。

  • 社内ステークホルダー
    プロジェクトに必要な主要指標とビジネスゴールを理解します。

  • プロダクトマネージャー
    長期的な計画やロードマップを把握し、カスタマージャーニーの背景を理解します。

  • リサーチャー
    ユーザータスクやリサーチノートを作成し、またリサーチそのものにも参加して新たなデータポイントを収集します。

  • 開発者
    継続してコピーを作成し、開発が進むにつれ開発者と一緒に文章の編集を行ないます。

  • オプティマイゼーション マネージャー
    ABテストコピーの仮説とアイデアを特定し、さらに改良を加えてユーザーの反応を発見します。

 こうした他の仕事との関係を理解し、育くんでいくことは、UXライターにとって非常に重要です。優れたUXライターは、目の前にあるデザインに対応するだけでなく、コンテンツファーストの観点から、自分自身のアイデアや機能を積極的にデザインし、支持できるものだからです。

 

トップブランドによるUXライティングの事例

「優れた」UXライティングの具体例を挙げることは困難です。本質的に、成功したUXライティングとは、どれも徹底的なテストと顧客中心の設計から生まれた結果だからです。文脈を抜きにすると効果的でないように見えるものでも、ユーザーにとっては正しい可能性もあります。

とはいえ、UXライティングの良い仕事をしている企業は存在し、インタラクションデザインにおいて短く、簡潔で、うまく配置されたコピーが、どれほどブランドのアピールに役立ち、ユーザーにとって物事が簡単になるかの好例となっています。

Slack


SlackのUXの例は、直接的であることの大切さを示しています。

Slackは、優れたUXライティングがデザインに実装されている例として、よく取り上げられる企業のひとつです。SlackのUXの手法が効果を発揮することが多いのは、「喜び」の効果に邪魔されることなく、ユーザーに何が起きているのかを伝えているためです。見出しの「読み込み中」は正確な文脈を提供し、その下に少し個性を感じられる要素を注入しています。


Tinder


TinderのUXの例は、シンプルな励ましがいかに大きな効果をもたらすかを示しています。出典

Tinderは、UXライターを利用することで、アプリ自体でエンゲージメントを高められることを示す良い例です。常に期待値を設定したり指示を与えたりするのではなく、TinderのUXライターは、ユーザーが実際にメッセージを送るというアクティビティに参加できるよう支援します。


Mailchimp

MailchimpのUXの例は、あなたが知るべきことを的確に伝えています。

人懐っこいコピーで知られるMailchimpのインタラクションデザインは、凝っているようで実はシンプルです。このボタンのコピーを見てください。ユーザーが何をすべきか、何が期待できるか、そして将来の行動が正確に書かれています。


Google マップ

交通系アプリの作成は悪夢なのですが、GoogleのUXライティングの仕事はかなりシンプルです。それは、情報をわかりやすく、簡潔に、混乱の余地を残さず伝えることです。一番下にある小さなコピーの「ひどくなっています(that’s getting worse)」というフレーズは口語体で書かれており、コンピュータとユーザーとの間に人間的なつながりが必要であることを示唆しています。同じようなフレーズは、おそらく厳しいテストを経た結果であることは疑いの余地がありません。


Google マップのちょっとしたディテールから大きな文脈が生まれるのです。

 

スキルアップに役立つUXライティングツール

UXライティングに興味があるなら、これらのUXライティングツールを使えば間違いないでしょう。

  • デイリーUXライティングチャレンジ
    コンテンツストラテジストのライアン・ファレルは、14のUXライティングのプロンプトを含むニュースレターを作成しました。

  • Sketch
    大抵の場合で最も好まれるデザインツール。

  • Grammarly
    文章がわかりやすいか、構成がしっかりしているかをチェックするのに最適です。

  • Hemingway
    Grammarlyと同様のことができる素晴らしいツール。

  • Figma
    UXデザイナーが自分の言葉がデザインにどのような影響を与えるかを知るには、実際にデザインしてみるのが一番です。

  • メモ帳
    草案を考えるには、紙とペンほど便利なツールはありません。

  • GatherContent
    私は個人的にGatherContentをチームで使い、様々なデザインで使われる文字列やコンテンツを管理しています。

 UXライティングのリソース

UXライティングについてもっと学びたいですか?これらのリソースをご覧になってから、現在募集中のUXライティングの仕事をご覧ください。

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ポッドキャスト

コース

  • UX Writers CollectiveはUXライティングの基礎について、自分のペースで学べるオンラインコースを提供しています。

 
翻訳:Kanako Noda


執筆者プロフィール:パトリック・スタッフォード( Patrick Stafford 

パトリック・スタッフォードはUX Content CollectiveのCOOです。UXライティングとコンテンツ戦略に関するオンラインコースを提供しています。また、世界中のUXライターやコンテンツストラテジストのインタビューを集めたポッドキャスト「Writers of Silicon Valley」を主催しています。

LinkedIn | UX Content Collective