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より良いコンテンツ設計のための 10 のヒューリスティック評価

より良いコンテンツ設計のための 10 のヒューリスティック評価

翻訳記事 May 12, 2023

この記事はUX Content Collectiveのブログ: 10 heuristic evaluations for better content design の翻訳転載です。著作者の Rachel Wood さんの許可を得て公開しています。

コンテンツデザインのような成長分野で働いていてわかったことは、自分にはある分野から何かを盗んで、それを他の分野と融合させるコツを知っているということです。( 正直な話、卒論で本を何冊も読む代わりに、文学理論でビデオゲームを分析することができるのだと、大学の指導教官を1人だけでなく2人も説得したことがきっかけです ) 。また、学生時代に研究論文を書くのが好きだった私にとって、リサーチ方法とコンテンツを組み合わせることは、とても良い試みでした。

UXCCには、コンテンツリサーチを始めるのに役立つ素晴らしいコースがあります。ユーザビリティのリサーチに取り組む前に、多くのツールや用語、ベストプラクティスを学ぶことができます。ユーザビリティのリサーチにおいて私が強く惹かれたことの1つに、ヒューリスティックを使うという考え方があります。

もしかしたらこの言葉に馴染みがないかもしれませんが、ヒューリスティックなレンズを通してコンテンツを見直すための素晴らしいリソース(ボビーウッドのこの素晴らしいリソースを見てみて)がいくつかあります。しかし、私はリサーチの手法からヒントを得て、プロダクトのコンテンツには、ヒューリスティック評価が役立つことを見つけました。

ヒューリスティック評価とは?

ヒューリスティック評価とは、3~5人の専門家グループにあるタスクを実行してもらい、彼らの専門分野に基づいて気付いた点を指摘してもらうことで、プロダクトの使い勝手をテストするものです。

もしあなたがヒューリスティック評価をしたことがないのであれば、そのやり方は比較的簡単です。リサーチャーは、プロダクトが満たすべき理想の基準であるヒューリスティックのリストと、一緒に実行するタスク(または複数のタスク)をあなたに渡します。このリストは、ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10原則シュナイダーマンの8つの黄金律など、一般的に使用されているリストである場合もあれば、リサーチャーがあなたのプロダクトに合わせて、独自のリストを作成する場合もあります。

あなたは、タスクを実行し、そのルールのリストに準拠していない部分を書き出す役割を担います。例えば、意味不明な説明文、ドキュメントの不足など、ヒューリスティック・リストに反していると感じるものは何でもかまいません。その後、それぞれの問題の深刻度をランク付けし、解決策の優先順位を決めます。

コンテンツデザイナーは、評価グループに参加させるのにうってつけの専門家ですが、これらのヒューリスティックを独自のインベントリや監査に利用することもできます。

コンテンツのヒューリスティック評価では、私はページの各コピーを評価し、それがルールに違反しているかどうかを判断することにしています。ツールチップ、モーダルヘッダー、そしてボタンテキストでさえも、ヒューリスティックな問題は驚くほど多岐にわたります。

なぜヒューリスティックでコンテンツを評価するのか?

プロダクトの問題によっては、ヒューリスティックは、まず何に取り組むべきか、チームの足並みを揃えるのに有効な手段となり得ます。

問題を絞り込むことができる。何かがおかしいとわかっていても、それを説明するのが難しい場合があります。ヒューリスティックを問題に割り当てることで、問題の本質に焦点を当てることができます。あなたの抱える問題は、1つ以上のカテゴリーに当てはまりそうですか?もしかしたら、あなたは複数の問題に直面しているのかもしれません!

定性的な分析に定量的なデータを与えることができる。エクスペリエンスの改善を提唱する場合、定量的なデータは非常に重要です。これらのヒューリスティックを使って傾向を分析したり、問題の何パーセントが各カテゴリーに当てはまるかを集計して、チームが重点的に取り組むべき領域を見つけることができます。

分野を超えた取り組みができる。コンテンツを評価することは素晴らしいことですが、UIデザイナーやインタラクションデザイナーが行うのと同じリストを使ってこれらの問題を追究することはさらに良いことです。インタラクション全体を評価するための統一された指標を手に入れることができます。

評価者にとっても、ユーザーにとっても、一貫した体験が得られる。全員が同じヒューリスティック・セットを使用することで、分析と提案が一貫したものになり、全体としてよりスムーズなユーザー体験が実現します。

コンテンツに適用されるユーザビリティヒューリスティック

ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10原則シュナイダーマンの8つの黄金律ゲルハルト・ポワルズの原則など、いくつか基準となるヒューリスティック・リストがありますが、ここでは、コンテンツに焦点を当てた、ニールセンの「10のユーザビリティ・ヒューリスティック」の使い方を説明します。

原則1.システムステータスの可視性

ユーザーは、今何が起こっているのかを知ることができ、インタラクションに疑問を感じることがないようにしなければなりません。例えば、コンテンツの場合、読み込みに通常より時間がかかる場合は、フレンドリーなトーストで通知することができます。


Googleドキュメントは、トースト通知を使って読み込みに時間がかかることを知らせ、再読み込みを促しています。


考えるべき質問:
・そのインタラクションには、ユーザーに自らのアクションの状況を知らせるコンテンツがあるか?
・一連のプロセスが完了したときに、ユーザーに知らせているか?

原則2.現実世界とシステムの一致

ユーザーの言葉に耳を傾けることは、コンテンツデザインの最も重要なルールの1つでしょう。プロダクトでは馴染みのある用語を使い、浮いてしまいそうな専門用語は排除しましょう。

AirBnbでは「リスト」という言葉を使い、ユーザーがリストを別々のカテゴリーに保存できるようにしている(ウィッシュリストのようなものです!)。

考えるべき質問:

・このやりとりの中で、聞き慣れない言葉や、一般的に使われているものとは違う意味を持つ言葉がないか?
・メタファー(比喩)を利用しているか?そのメタファーは、現実の世界や身近な意味と一致しているか?
・グローバルなプロダクトに取り組んでいる場合、これらのメタファーは異なる言語や文化にローカライズできるか?
・ユーザーのボキャブラリーにマッチしているか?

原則3.ユーザーに操作の主導権があり自由がある

人は誰でも、間違いを犯すものです。必要に応じて、ユーザーが素早く簡単にアクションを取り消せるようにする必要があります。キャンセルボタンを明確に表示し、進行中のアクションを変更する方法を説明することで、ユーザーが窮屈な思いをしなくて済むようにします。



このアプリでは、注文のキャンセルや、追加し忘れた商品の追加注文の方法についても説明している。

考えるべき質問:

・各モーダルやタスクのシーケンスには、明確な出口が示されているか?
・コンテンツには、そのアクションが元に戻せないことを明記しているか?

原則4.一貫性を維持しつつ、標準にならっている

このヒューリスティックは、古いインタラクションパターンを見直す際に、おそらく私が最も頻繁に使用するものです。このヒューリスティックは、コンテンツが全体的なスタイル(プロダクトのスタイルガイドなど)にマッチしていない、あるいはインタラクション自体に一貫性がない、とった問題を明らかにします。

この星形アイコンは、ツールチップとポップアップテキストの両方で、一貫して「お気に入り」と呼ばれている。

考えるべき質問:

・同じアクションや コンセプトが、インタラクション全体で同じようにラベル付けされているか?
・選んだ言葉は、一般的にユーザーが出会う、慣れ親しんだ言葉と一致しているか?
・プロダクトにスタイルガイドがある場合、コンテンツはスタイルガイドに合致しているか?

原則5.エラーの防止

ユーザーがエラーから回復できるようにしたいのは当然ですが、そもそもエラーを防止するのが理想的な対処法です。あるアクションが何をもたらすのか、特に破壊的なアクションはユーザーに伝えましょう。

このモーダルは、あるアクションが取り消せないことをユーザーに警告し、ユーザーのニーズに合った別の経路を示す。

考えるべき質問:

・破壊的なアクションを説明するコンテンツは十分に用意されているか?それはインタラクションの中に明確に配置されているか?
・重要な情報は、1カ所だけでなく、関連する場所で繰り返されているか?

原則6.覚えていなくても見て分かるようにする

ユーザーはある行動を完了するために、いくつかのステップを踏まなければならないことがあります。そのような場合、前のステップの内容を無理に思い出させることなく、ユーザーが必要とするときに情報を提示するようにします。


この確認モーダルでは、Mailchimpは、前のステップで選択した内容をユーザーに思い出させる。

考えるべき質問:

・指示は理解しやすいように小分けにされているか、それとも一度に提示されているか?
・UI内で適切なヘルプが提供されているか、あるいは外部リソース(サポートサイトなど)に頼らなければならないか?
・ユーザーは、1つのステップから次のステップまで、たくさんの選択肢を覚えておく必要があるか?

原則7.柔軟性と効率性をもたせる

ユーザーによって、プロダクトやテクノロジーの使いやすさはさまざまです。ユーザーには、1つのフローで完結するのではなく、それぞれのユーザーが最も納得できる方法でプロダクトに接することができるような選択肢を提供しましょう。

このポップアップでは、ユーザーのニーズに応じて、デモツアーに参加したり、スキップしたりすることができる。

考えるべき質問:

・このインタラクションの中で、ユーザーがスキップできる画面はあるか?
・画面を削除しても、そのコンテンツは理解できるか?
・特定のユーザーに対してパーソナライズされた体験になっているか?
・コンテンツは、ユーザーの体験をよりスムーズで楽しいものにしているか?

原則8.シンプルで美しいデザインにする

ページ内に多くのものを詰め込もうとすればするほど、そのページの使い勝手は複雑になっていきます。余計な情報を削除することで、ユーザーは余計なものに気を取られることなく、目の前のタスクに集中できます。

短いヘルプコピーは、ユーザーを正しい方向に導く。詳細なリストへのハイパーリンクを追加することで、ページ上のファイル拡張子の長い文字列を避けることができる。

考えるべき質問:

・コピーは簡潔で読みやすいか?
・無関係なコンテンツや使用頻度の低いコンテンツがないか、別のビューに移動したり、より軽いUI要素に移動したりすることができるか?
・重要な情報は、より目立つ場所に配置されるなど、目立っているか?

原則9.ユーザーがエラーを認識、診断、および回復できるようにする

サーバーが壊れたり、インタラクションがうまくいかなかったり、アクシデントはつきものです。私たちコンテンツデザイナーは、ユーザーに不具合を知らせるだけでなく、それを解決する手助けをしたいと考えています。

無効化したボタンのそばにテキストを表示することで、ユーザーにこのボタンの前にどのようなアクションを行うべきかを知らせる。

考えるべき質問:

・エラーは平易な言葉で説明されているか(エラーコードや専門用語がないこと)
・ユーザーがエラーを解決するための手順があるか?エラーがユーザーの操作に関係ない場合、ユーザーがその答えを得られる方法(サポートメールやステータスページのリンクなど)を用意してるか?
・エラーは、情報が不足している入力欄の近くなど、解決の糸口となる文脈で配置されているか?

原則10.ヘルプやマニュアルを用意する

このヒューリスティックは、ユーザーが必要なときに追加のヘルプや情報を得られるようにするものです。 一般的に、ヘルパーテキスト、アプリ内ヘルプウィジェット、サポートドキュメントがこれにあたります。


Googleはアプリ内ビジュアルとドキュメントへのリンクで新機能を紹介する。

考えるべき質問:

・このインタラクションに関連するドキュメントは最新か(既存のプロダクトである場合)、またはアップデートが計画/予定されているか(新しいプロダクトである場合)?
・ヘルプは丁度良いタイミングで提供されているか、あるいはユーザーがプロダクトを離れて手動で探さなければならないか?
・ドキュメントは、簡単に真似できるような個別のステップに分かれているか?

次はどうする?

問題の在処がわかったところで、どうすればいいのか。

私は、普段の評価における重要度合いのように、リストアップした課題を「コンテンツの問題」「コンテンツ+デザインの問題」「全体的な使い勝手の問題」の3つに分類しています。

  • コンテンツの問題とは、コンテンツデザイナーである私が取り組めることであり、例えば、スタイルガイドに合致しない文章をアップデートすることなどが挙げられます。
  • コンテンツ+デザインの問題とは、UIの問題で、重要なテキストをツールチップからメインページに移動させるなど、デザイナーと共同で解決する必要があるものです。
  • ユーザビリティの問題は、コンテンツの問題から派生したもので、より大きなスケールで対処する必要があります。この問題に取り組むには、デザインチームの複数のメンバーが必要かもしれません。

さて、いよいよ調査結果を報告する段階になりました!どのヒューリスティックが最も多く出現したかをまとめ、改善が必要な領域を強調します。コンテンツのインベントリや監査と並行して行う場合は、評価で最も多く見られたヒューリスティックな要素を基に、提案書を作成することもできます。

チームへの働きかけも忘れずに。デザイナー、PM、リサーチャーと話し合い、これらの問題に対処するための戦略を練りましょう。カテゴリー分けをしたのであれば、誰が関与すべきかを基準にリストに優先順位をつけることができます(つまり、コンテンツだけの問題にはいつでも着手できるのです)。

さあ、あなたもヒューリスティックに評価しましょう!



執筆者プロフィール:レイチェル・ウッド(Rachel Wood


レイチェル・ウッドはプロコア・テクノロジーズのシニアコンテンツデザイナーです。ナラティブ理論、ビデオゲーム、UX、デジタルストーリーテリングに興味を持つプロダクトライター兼リサーチャーでもあります。

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