
なぜデザインチームにプロのライターが必要なのか
Apr 28, 2021この記事はDropboxのブログ: Why your design team should hire a writerの翻訳転載です。著者ジョン・サイトウさんの許可を得て公開しています。
近年「デザインにおけるライティング」が話題になっています。UXライティング、プロダクトライティング、コンテンツデザインなど、どのように呼ぼうとも、デザインでは言葉が重要であることは明らかです。
2017年のDesign in Techの講演では、ジョン・マエダが「グラフィックや映像だけでは意味が通じないこともあり、言葉はとても重要だ」と言いました。Fast Co Designがその後「Forget Coding: Writing Is Design's Unicorn Skill(ライティングはコーディングを超える人気のスキルだ)」とまで断言しました。
一見、簡単に聞こえますよね?優れたデザイナーになるには、書き方を知っている必要があります。あなたはいつも文章を書いているのですから大したことはありません。メール、仕様書、ツイートなど、何の問題もありません。
ですが、実際に文章を書くのはすごく難しいことです。私は元英語教師でいまはライターを生業にしていますが、文章の書き方を学ぶのも、教えるのも大変です。だからこそ、Amazonにはライティングに関する本が50万冊以上もあるのです。
ライティングの基本を学ぶだけでも難しいのですが、何が本当に難しいかご存知ですか?それは、言葉選び、トーン、リズムなどの手に汗握る概念です。これらの文章力を習得するには途方もない時間がかかります。では、その点を踏まえたうえでデザインチームは何をすべきでしょうか?
ライターの採用を検討してみては?
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、最近のデザインチームでは、デザイナーのような発想を持つライターを採用するケースが増えています。
中小企業も大企業も、優れたコピーの重要性に気づき、言葉をデザインするためにライターを雇っているのです。Adobe、Spotify、Slack、HBO、GoPro、Intercomなどの企業は、この2、3年の間に初めてプロダクトライターを採用しました。このためプロダクトライターはいたるところで活躍しています。
誰もがライターを雇えるわけではないと思いますが、あなたが次に言葉に悩んだときのことを考えてみてください。ライターをチームに招き入れたらどうでしょうか?チームに欠けているのはライターなのかもしれません。
なぜすべてのデザインチームにライターが必要なのか、理由は次のとおりです。
ライターはデザイナーです:なめらかにデザインすることは、インタラクティブなストーリーを書くこととよく似ています。説得力のあるストーリーを語るためには、ライターの存在が不可欠です。
プロダクトデザインでは、ライターはストーリーの語り手となり、主人公(ユーザー)をシーンごと、画面ごとに導いていきます。
あなたがご自身をライターと呼ぶかデザイナーと呼ぶかにかかわらず、この2つの仕事には重なり合う点が多いことをおわかりいただけるでしょう。類似点を見てみましょう。
ちょっとした言葉の間違いが、デザイン上の大きな問題に発展することがあります。デザインの問題を言葉で解決してくれるライターがいたら、いいと思いませんか?
ライターは点と点を結ぶ仕事:デザイナーはプロダクトのひとつの領域を中心に考える傾向がありますが、プロダクトライターは複数の領域を横断的に見る傾向があります。これは、全体のエクスペリエンスのなめらかさや、矛盾点を見てとれるので良いことです。
ライターは、プロダクト全体をつなぐ役割を担っています。特に言葉の面において、プロダクト全体で一貫性を保つのに役立ちます。
例えば、あるところでは「Oh, shucks(ああ、クッソー)」といい、別のところでは「Terminal Error Occurred (端末エラーが発生しました)」と言えば、違和感があるのは当然です。
では、一貫性のある言葉づかいにするにはどうすればいいでしょうか? Dropboxでは、スタイルガイドを導入しています。私たちのスタイルガイドには、ボイス&トーン、用語集、句読点、大文字小文字の区別、アクセシビリティ(利用のしやすさ)など、さまざまな詳細が記載されています。
- 「Stuff(もの)」という言葉を使用してもよいか
- 「ドラッグ&ドロップ」というべきか、単に「ドラッグ」というべきか
- メールの件名に絵文字を使ってもよいか
- コロンの後の単語を大文字にするか
- 確認メッセージはどのように書くか
これらはすべてスタイルガイドで確認します。
私たちはスタイルガイドを生きたドキュメントとして扱い、少なくとも月に一度は更新します。また、スタイルガイドはDropbox Paperに保管されているため、検索、アクセス、更新が簡単です。
ライターはいつ発言すべきか、いつ口をつぐむべきかをわきまえています:ほとんどの場合、インターフェースライティングでは、黙ってユーザーの邪魔をしないことが大切です。ユーザーに読むことを強要したくはありませんよね。ユーザーは何かをしようとしているのですから、立ち止まってインターフェイスを読みたいとは思わないものです。
しかし、時には自分の言葉に気づいてもらいたいときもあります。そんなときは、声を大にして、はっきりと伝えたいものです。ユーザーが何か素晴らしいことをしたとき、あなたはたぶん、山頂から叫びたい気持ちに駆られるでしょう。
ライターは言葉のトーンを上手に使い分けます。豊かな表現で際立たせたり、控え目にすべきときを知っています。元気よくするのか、辛抱強くなるのか、毅然とするのか、華やかにすべきかを知っています。
私たちライターは、適切なタイミングと適切なトーンで伝えることを大切にしています。間違いなく、あなたのメッセージに含まれるあらゆる言い回し、コメント、主張を吟味します。
ライターは言葉を大切にする:優れたライターは細部にまで気を配ります。スペルミスやカンマの位置の間違いなど、文章の質に気を配ります。
しかし、言葉の質はそんなに重要なのでしょうか?プロダクトに誤字脱字があったとしても、大したことではありません。とあるページでは「ログイン」、別のページでは「サインイン」と書いてあるからといって、誰が気にするのでしょう?
私は、言葉の質は間違いなく重要だと考えています。それは信頼につながるからです。ユーザーが誤字脱字や矛盾に気づき始めると、あなたの会社に対する信頼を失い始めます。きちんとした文章を書く時間が取れない会社に、時間とお金を預ける理由はないでしょう。
ライターは、ユーザーの信頼を失うことのないように、あなたの言葉に気を配るのです。
ライターはあなたがよりよいデザイナーになるよう後押ししてくれます:アインシュタインは「その物事を簡単に説明できないのなら、あなたは十分に理解できていない」と言ったそうです。この理論はプロダクトライティングの仕事にも当てはまります。
私たちプロダクトライターは、難しいコンセプトをできるだけシンプルに説明するよう求められます。しかし、書いている途中で、ある機能を簡単に説明する方法がないことに気づくことがあります。それはつまり、デザインが直感的でないことを意味しています。
そんなときは、デザイナーと一緒になってよりシンプルな解決策を考えます。デザインがわかりにくいと文章もわかりにくくなるので、ライターは筋が通っていないデザインを指摘することを恐れません。
言い換えれば、ライターはあなたがより良いデザイナーになるように働きかけ、より良いデザインはより良い文章を生み出すということです。素晴らしい結果は、みんながアイデアを出し合い、優れたエクスペリエンスを求めて協力しているときに生まれます。
そして、ライターはデザイナーの大ファンであることを忘れないでください。私たちはあなたと同じクリエイティブな人間です。創造性の高いプロセスや新たな発見に楽しさを感じています。デザインも大好きです。
ライターは表現の仕方を熟知している
あなたは良いコピーを書くための秘訣をご存知ですか?良いコピーとは、ライターが長年かけて磨き上げてきたテクニックの結集です。よく見ると、良いコピーライティングのほとんどに、これらのテクニックを見つけることができます。
ライティングのテクニックをいくつかご紹介しましょう。
- 頭韻法 同じ音で始まる単語を使って文章をなめらかにする。
- 韻を踏む 同じ音で終わる単語を使って、文章の響きをよくする。
- 増幅 特定の単語やフレーズを繰り返して強調する。
- 対句法 同じ文法構造を繰り返すことで印象的な表現にする。
- アンチテーゼ 反対の理論を重ねて強い主張を引き出す。
- リズム 言葉の音節やアクセントをもとに、テンポを作る。
- 3つの法則 パターン、調子、リズムを作るために、3つのグループで物事を言及する。
- 隠喩 あるものを別の表現に喩えて説明する。
- 価値提供 ユーザーの利益となることを強調し行動喚起する。
- 修辞疑問 文章ではなく、質問を使って主張すること。
- 質問&回答 興味を持たせるために質問してから自分で答える。hypophoraともいう。
プロダクトライティングでは、プロモーション、ランディングページ、エンプティステート(表示する情報が何もない状態)、メール、オンボーディングなど、説得力のある文章を書く際にこれらのテクニックが役立ちます。
誰でも説得力のあるコピーの書き方を学ぶことはできますが、習得するには何年もかかります。ライターは何年もの経験のなかで切磋琢磨し、多様な表現を習得してきたのですから、彼らの経験を頼ってみてはいかがでしょうか?
ではライターを採用しよう!
この話を読んで、ライターがデザインチームにもたらす価値がわかっていただけたのではないでしょうか。チームの成長を考えるときには、ライターの採用を検討してみてください。そうすれば、ユーザーにもっと愛されるようになるでしょう。
どのプロダクトにも驚くべきストーリーがあります。あなたのストーリーを伝えてくれるライターがいたら、最高だと思いませんか?
ライターを探し始める準備ができたら:以下の関連記事を参考にしてみてください。
『初めてUXライターを採用する』著者サラ・カルバー
『プロダクト・コンテンツ・ストラテジストの見つけ方 』著者アレイン・マッキンゼー
イラスト提供:Fanny LuorとBrandon Land
インフォグラフィック提供:Lauren Jochum に心から感謝します。
執筆者プロフィール:ジョン・サイトウ(John Saito)
ジョン・サイトウはテック業界で15年の経験を持つプロダクトデザイナー。デザイン、ライティング、プロジェクトマネジメントの経験を持つ、多才なチームプレーヤーです。何百万人もの人々に利用されるエクスペリエンスを創造しています。
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