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ライティング、コピー、コンテンツ。言葉がいかにUXを左右するか

ライティング、コピー、コンテンツ。言葉がいかにUXを左右するか

翻訳記事 Nov 24, 2021

この記事はAdobe Xd Ideasのブログ: Writing, Copy, and Content: How Words Make or Break the User Experienceの翻訳転載です。著者のオリバー・リンドバーグさんの許可を得て公開しています。

言葉がなければ、プロダクトは生まれません。ウェブサイトでもアプリでも、言葉は、マイクロコピーエラーメッセージ、ボタンラベル、ナビゲーションメニューなど)、マーケティング、サポート資料、価格ページ、オンボーディングフロー、完了メール、通知などを含む、コンテンツのエコシステムに不可欠な要素です。これらのコンテンツには、ユーザー体験に影響を与える、意味のある言葉が使われています。

最近になって、UXライティングはようやく注目されるようになり、プロダクトの設計プロセスの中で重要な役割を果たすようになってきました。しかし、企業はいまだに、言葉がもたらす違いを十分に理解していなかったり、誤った言葉を使っていたりすることがあります。この記事では、Adobe、Dropbox、The New Yorkerといった企業から、インフォメーションアーキテクト、コンテンツストラテジスト、UXライターを招き、コンテンツがいかにユーザーエクスペリエンスと密接に結びついているか、またUXコピーがいかにプロダクトの良し悪しを左右するかを説明してもらいました。彼らのコメントは以下の通りです。

優れたコンテンツ=優れたUX

デザイン会社EightShapesの創業者兼代表のダン・ブラウンによると、ユーザーエクスペリエンスの定義では、コンテンツはUXから切り離すことはできません。両者は一体なのです。

「ユーザーエクスペリエンスとは本質的に、コンテンツ、スタイル、レイアウト、構造の要素の組み合わせ、つまりゲシュタルトなのです」と彼は説明します。「プロダクトやWebサイトのコンテンツが悪いと、体験も悪いものになります。コンテンツが良くても、ナビゲーションのせいでコンテンツへアクセスしにくい場合、そのプロダクトの体験は悪くなります。つまり、コンテンツに十分な注意を払わなければ、本当の意味でプロダクトをデザインしているとは言えないのです」

Condé Nast社で『The New Yorker』のシニアUXライターを務めるソフィー・テヘランもこれに同意し、インターフェースの中の言葉が考え抜かれて書かれていれば、ユーザーはそれに気づかないはずだと指摘します。

「UXライティングの目的は、摩擦を減らし、ブランドにふさわしい表現でユーザーを導き、できるだけ簡単にタスクを達成できるようにすることです」と彼女は言います。「ブランドボイスが滑らかであればあるほど、ユーザー体験も滑らかになります。しかしこのデメリットは、UXライティングがありがた迷惑な仕事になることです。コピーがシンプルで自然に聞こえると、ライティングのプロセスもシンプルであると思いがちですが、詩的に書くことよりも簡潔に書くことの方が難しい場合が多いのです」

テヘランは、UXライティングがユーザーエクスペリエンスを左右することを示すには、言葉をインターフェイスから完全に取り除いてみることが最善であると提案しています。「サインイン画面やエラーメッセージに何も書かれていない状態を想像してみてください。そこから何ができるでしょう?」


赤くハイライトされている部分は、ニューヨーカー誌が最近立ち上げた「Future of Democracy」の記事にどれだけのUXコピーが存在しているかを示しています。同時に、コピーのほとんどが注目されていないことを表しています。

ユーザーの言葉で話す

Content Design Londonの創設者であり、書籍『Content Design』の著者でもあるサラ・リチャーズは、たった一つの言葉がサービスの良し悪しを左右することを身をもって知っています。

「数年前、私はイギリス政府の数百万ドル規模のデジタル取引を担当し、プロダクトへの実装を控えていました」と彼女は振り返ります。「しかし直前になって、ある幹部がNational Insurance Number(国民保険番号)の代わりにNINという言葉を使いたいと言い出しました。バックオフィスのスタッフが使っていた言葉なので、一般の人にも覚えてもらいたいということでした」

リチャーズのチームは、そんな言葉を知っている人はいないだろう、デジタルサービスではユーザーの言葉にこだわるのが一番だと主張しました。彼らが行った調査の結果は、これ以上ないほど明確なものでした。

「案の定、ユーザーの失敗率は100%でした。国民保険番号についての質問は、最初のページにある3つの質問のうちの1つでした。NINが何であるかを知らないために、誰も次のページに進むことができなかったのです。私たちは、用語をNational Insurance Numberに戻し、サービスの完了率は86%となりました。たったひとつの言葉が、そのサービスを壊してしまったのです。ですから、常にユーザーの言葉を使うようにしましょう。ユーザーは、タスクの途中であなたから何かを教わりたいわけではありません。早く始めたいのです」

ユーザーのニーズを「憶測」するのではダメ

デジタルプロダクトを成功させるためには、入念な計画とユーザーリサーチが欠かせないと、コンサルタント会社ブレイン・トラフィック社のリードコンテンツストラテジストであり、『Writing for Designers』の著者であるスコット・クービーは同意します。

「目を見張るようなヒーロー画像や、完璧なアニメーションのフライアウトメニュー、ストーリーテラーに力を与えるモジュール式のテンプレートなどで、優れたウェブ体験のデザインはできません」

「そのようなものは、ウェブサイトというコンテンツの上のデコレーションに過ぎません。優れたウェブ体験は、優れたコンテンツから生まれます。誰のために、何のために、どうやって見つけて、どうやって使うのかを知っているコンテンツです」

クービーは、コンテンツファーストのアプローチ(A List Apartに掲載されたステフ・ヘイの2015年の代表的な記事を参照)は、全体のプロセスの半分に過ぎないと主張しています。

「テンプレートやビジュアルデザインの前にコンテンツを企画することは素晴らしいことですが、そのコンテンツは実際のユーザーニーズに応えるものでなければなりません」とアドバイスしています。「ユーザーがウェブサイトで何を求めているのか、何を必要としているのかを憶測で決めてしまうことは、ほとんどの企業が繰り返して犯してしまう最も大きな間違いのひとつです」

使える、役に立つ、責任のある言葉であることを確認する

Adobe社のUXコンテンツ戦略マネージャーであり、『Writing Is Designingの共著者であるアンディ・ウェルフルは、ユーザーエクスペリエンスにとって言葉は、ビジュアルデザインやインタラクティブデザインと同じくらい、時にはそれ以上に重要であると強調しています。

彼は、デザインの体験全体を通して、使用する言葉は3つの原則に従うべきだと勧めています。それは、「使える言葉」「役に立つ言葉」「責任を持つ言葉」です。早速、それぞれについて掘り下げ、いくつかの例を見てみましょう。

使える

「インターフェイス向けに書く言葉は、わかりやすく、役に立つものでなければなりません。また、UXデザイナーが義務づけられているように、設定したゴールを達成するものでなければなりません」とウェルフルは提案します。

下のビフォー(左)とアフター(右)は、Adobe Creative Cloudのモバイル検索ページで、チュートリアルのリストの最後にテキストが表示されています。ウェルフル氏のチームは、このテキストの長さを半分以下に短縮し、テキスト内の「検索」のアクションをタップできるようにしました。

「伝えるのではなく、見せることでより使いやすくなります」とウェルフルはアドバイスしています。

役に立つ

あなたの文章は、人々がやりたいことを体現しているでしょうか?ユーザーはインターフェースをコントロールでき、ユーザー体験に価値を与えていますか?

「Pinterestの利用規約では、法律用語の各セクションに追加の要約があり、小難しい言葉が何を言っているのかをよりわかりやすく説明しています」とウェルフル氏は説明します。「そもそも法律用語をやさしい言葉に置き換えられればさらに良いのですが、この原則は役立つ言葉を設計する大きな一歩となります」

責任を持つ

あなたがデザインしている言葉が、誤用されるのは何故か?言葉は真実に基づいているか?包容力はあるか?その体験は、ユーザーを欺くために設計されているのか、ユーザーの信頼を得るために設計されているのか?

ウェルフルは、このようなUXライティングの原則に反した欺瞞的なパターンが頻繁に見られると指摘しています。例えば「コンファームシェイミング」もその一つです。

ガーデニングのウェブサイトに見られる以下の例は、a)見つけにくく、b)ユーザーが嫌な気分になるように設計されており、押しつけがましいポップアップをオプトアウトするのを阻止しています。これでは責任を果たしていません。


No thanks, I know everything about gardening.
(園芸のことは何でも知っているので結構です。)

言葉で信頼を示す

Slackのコピー担当グループマネージャーであるアンドレア・ドルゲイは、ユーザーの信頼を得るためには、言葉が重要な役割を果たすことを認めています。

「プロダクトのコピーに一貫性のない言葉が使われていたり、ユーザージャーニーの中でトーンが大きく変化していたりすると、読者に一貫性のなさを印象付けてしまう」と彼女は警告します。「矛盾は不信感を生みます。プロダクトを使う人は、信頼できる確かな体験を提供してくれるのだと思いたいのです。あなたが言葉で信頼を示さないなら、ユーザーは他に何を頼りにすればいいのでしょうか?」

信頼を築くために、ドルゲイは、用語の統一と、状況に応じた適切なトーンを心がけることを勧めています。

「私にとってイライラするような場面でも、あなたの書くコピーが親切で丁寧であることを期待します。もっと楽しい場面なら、ちょっとした喜びを感じられるでしょう。」と彼女は指摘します。「しかし、その逆だと、優れた体験は失われてしまいます。対応の難しい場面で、素直ではない“ 気の利いたコピーに頼ってしまうと、顧客を失ってしまうかもしれません」

Oopsie! Your credit card was declined! Uh oh!
おっと!あなたのクレジットカードが拒否されました!あーあ!

より良いコンテンツでより良いプロダクトを作る

プロダクトのコンテンツには細心の注意を払い、顧客視点であらゆる側面を検討してください。(プロダクトの他の部分と同じように)早い段階でコンテンツをリサーチし、頻繁にテストしましょう。そうすれば、本来あるべきユーザーエクスペリエンスの中心にコンテンツを据え置くことができ、時間とコストを大幅に削減できます。

UXライティングは、摩擦を減らし、信頼を築き、ユーザーを導くものでなければなりません。ユーザーの言葉を使い、言葉が「使える」「役に立つ」「責任を持つ」という3つの原則に従っているかどうかを定期的にチェックしましょう。これらのことを心に留めておけば、より良いデジタルプロダクトのための効果的なコンテンツをマスターできます。


執筆者プロフィール:オリバー・リンドバーグ( Oliver Lindberg  

オリバーは、編集者、コンテンツコンサルタント、そしてPixel Pioneersの創設者として、イギリスのバースを拠点に活動しています。15年以上にわたってウェブデザイン・開発業界に携わり、世界中の企業が顧客とつながるコンテンツを作るサポートをしてきました。
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