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チャットボットが命を救う

チャットボットが命を救う

翻訳記事 Jun 23, 2021

この記事はUX Writers Collective: Chatbots save livesの翻訳転載です。著者フィン・アストルさんの許可を得て公開しています。


私たちは今、公衆衛生上の危機に直面していますが、今できることはただ待つことと家にいることだけです。感染の速度を遅らせ、時間を節約し、あらゆる公共サービスの準備をしていますが、世界が回復を待っている間、時間だけが私たちの治療法です。

世界はこれまで以上にオンライン化が進んでいます。日頃利用している行政、医療、金融、保険、通信などのサービスは、この変化に対応しようとしています。顧客からの問い合わせは非常に多く、カスタマーサポートを圧倒し、危機的なほどの待ち時間が発生しています。

だからこそ、チャットボットは時間を節約し、人の命を救うのです。

※この記事は2020年5月に公開されたものです。

時間を節約し、命を救う

自粛前と同じサービスを使いながらも、私たちの生活は続いています。

しかし、私の国ではサービスの待ち時間が長くなり、時には利用すらできません。

今週、私はいくつかのひどい経験をしました。契約しているインターネット・プロバイダーが私に「緊急時以外は電話しないように」と伝えてきたのです。インターネットがダウンしているというのに、誰もあなたに助けを求めたりしません。



また、KマートのWebサイトで買い物をしていたら、長蛇の列ができ、靴下を買うためにバーチャルロビーで30分も待たされてしまいました

他のウェブサイトはアクセスが急増したことでクラッシュし、サービスを提供できませんでした

そして、私たちはこの光景を目の当たりにしました。


※センターリンクは、オーストラリア政府の支援機関。生活困窮者など、財政支援が必要な人たちに福祉サービスを提供する。

電話を切らず、ひたすら保留音を聴き続けるのか。

私はなにも、すべてのカスタマーサービスをバーチャルなチャットボットに置き換えようと言っているのではありません。

自動応答のカスタマーサービスに問題点があることを、誰もが知っています。

#1をプッシュして相手と話し、何が問題かをすべて伝えます。この電話はカスタマーサービス部門に転送されますが、さっき答えたのとまったく同じ質問をする別の人に引き継がれるのです。

ライターとしての私たちの仕事、そして会話のデザイナー(チャットボットの設計者)としての私の仕事は、誰もが嫌うこのような不快な瞬間を和らげることです。

「何かお困りですか?」は、わかりきった質問です。私たちは組織や人々と協力して、答えを見つける必要があります。

 

チャットボットがどのように人の命を救えるか?

毎日のように新しい情報が出てきて、みんな付いて行くのがやっとです。私たちは、ウェブサイト、直通電話、カスタマーサポートチームの数を急速に増やしています。国内の何百万人もの人々が、同じ出来事や情報を見て問い合わせをしているのです。

企業は顧客を落胆させ、政府は国民に答えを出せていません。

サービスの内容やよくある回答集をベースにしてチャットボットの会話を設計すれば、顧客からの問い合わせの80%に答えられます。しかし、チャットボットによる自動化は人間の仕事に取って代わるものではありません。人間でなくても答えられる質問に答えることで、スタッフをサポートするのです。そうすることでスタッフは、人間にしか回答できない重要な質問にリソースを割けるようになります。

私自身、コールセンターでカスタマーサービスを担当した経験があります。誰かが書いたマニュアルを読んで「マニュアルに載っていない」という理由でお客様を助けられなかったあの気持ちは、今でも私を苦しめます。

お前はロボットなのかと聞かれたこともあります。

カスタマーサービスの仕事は、自動化によってさらに力を発揮するようになるでしょう。そして、複雑で他にはない質問に集中できるように、個別の代理店を奨励していくでしょう。

チャットボットはどれだけの命を救うか?

会話の自動化によって、顧客、会社、スタッフの時間をどれほど節約できるか見てみましょう。

オーストラリア政府の福祉サービスであるセンターリンクでは、最近、COVID-19関連の給付金の申請が殺到し、すべての人が「給付対象かどうか」の同じ質問をされています。

2020年、センターリンクのカスタマーサービスチームの平均待ち時間は15分44秒。2020年3月には、1日に25万件の問い合わせがありました。顧客への質問や回答の一部を自動化すれば、1回の電話で15分を節約できます。

では、ボットに聞いてみましょう。



面白いことに、顧客からよく聞かれる50の質問に効率的に回答できるボットを作るには、72時間しかかかりません。

聞き上手になるために

自動化によって、チャットボットが人命を救うもう一つの方法。会話の自動化サービスは、質問に答えるだけでなく、それ以上のことができます。現在では、AIによる自然言語の理解力を利用して「聞き上手」なボットをデザインできます。

たとえば、お客様がカスタマーサービスのスタッフと話している間に、AIに会話内のキーワード、感情、意図を登録するように教えることができます。この情報は、サービス、トランスクリプト、データに反映させることができます。

これは米国マクドナルドのプロトタイプの事例です。ドライブスルーのお客さんの注文をリアルタイムで書き起こし、マクドナルドのキッチンクルーに注文しています(かっこいいけど、もっといい会社がやっている例があればいいな)。

AIが会話を聞くことで、カスタマーサービス担当者は、録音メッセージではなくお客様の真の声に耳を傾けることができます。

これにより、ヒューマンエラーの危険性がなくなるのです。危機的な状況では、誤った情報が、顧客の財政状況や健康状態に打撃を与えることだってあり得ます。マクドナルドの注文に「スイート&サワーソース」を入れ忘るのとはわけが違うのです。

もちろん、私たちは人間です。完璧ではありません。自動化された会話やチャットボットは、人間が設計、構築するものなので、ヒューマンエラーは常に存在します。

私たちの言葉は、これまでよりも大きな意味を持っている。

論理的な会話、自動化、AIは、私たちのテクノロジーが、世界に住む人々やサービスを補助して、強みを引き出す方法を示しています。私たちはエッセンシャルワーカー(ライフラインを維持するために不可欠な労働者)です。今、私たちの言葉はこれまでよりも大きな意味を持っています。

もし誰かが外国で立ち往生して、帰国するために保険会社の助けが必要なら、私たちは言葉を使って彼らを助けることができます。

もしインターネットが使えなくなったら、私たちは3時間待って、遠隔操作で設定をサポートしてくれる人と話さなければなりません。

ウェブサイトにオンラインの待ち行列ができていたら、お客様が必要なものをすぐに見つけられるように、私たちがお手伝いできます。

お金をもらっていようがいまいが、私たちは全員、ライターです。

私たちは毎日、会話をしています。自分の声、キーボード、タッチパッドを使って、自分が伝えたいことを選択しています。

それを「体験」に自然に落とし込んでいくことは、もっと簡単なはずです。

企業は、サービスのバーチャル化にこれまで以上に投資しています。これは、サービスや産業が新しい時代に向けて変化していく過程で、今後も増えていくでしょう。

何千年も前から行ってきた会話を、テクノロジーの新たな動力源として使い始めましょう。人類の最初のコミュニケーションの形である「会話」を、最新のサービスに取り入れるのです。デジタルプロダクト、サービス、情報を利用するために、私たちが使っている言葉、身振り手振り、そして人間らしさを活用しましょう。

 

WHO(世界保健機関)のチャットボットの取り組みをご覧ください。コンテンツの長さと質問の量のバランスを自然言語でうまくとっています。

または、こちらのページから実際に会話してみてください

皆さんにお伝えしたいのは、ライターとして、私たちの言葉は本当に重要だということです。

チャットを通じて世界に情報を届け、自動化された会話を人間らしく、役立つものにすること。これこそが、デジタルライターの責任です。

チャットボットは時間を節約し、そして命を救うのです✌️


執筆者プロフィール:フィン・アストル(Finn Astle

フィン・アストルはオーストラリアのUXライター、チャットボットの設計者。Versa Agencyで、コンテンツと会話のデザインを担当しています。過去には国際的な企業であるDeepend、HelpMe Feedのクリエイティブを担当。いくつかの賞を受賞(Mumbrella's Emerging Agency 2018、30 Under 30 Creative Shortlist)しています。
Finn Astle Versa Agency LinkedIn