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「一語一句に手間ひまかける」SmartHRを支えるUXライティングユニットとは?

「一語一句に手間ひまかける」SmartHRを支えるUXライティングユニットとは?

インタビュー Jul 14, 2021

3年連続シェアNo.1(※)のクラウド人事労務ソフトを提供するSmartHR。日本国内でも早くからUXライターの採用を行なってきたユニコーン企業です。今週のインタビューは、SmartHRでUXライターとして活躍されている高田邦明さんに、社内でのUXライティングのお取り組みについてお話を伺いました。

※デロイト トーマツ ミック経済研究所調べ『HRTechクラウド市場の実態と展望 2020年度 労務管理クラウド部門』


高田さん、こんにちは。本日はどうぞよろしくお願いいたします。まずは読者の方へ自己紹介をお願いできますか?

はい、高田邦明と申します。2020年の12月にSmartHRに入社して、UXライターとして働いています。今日は折角ですので、SmartHRのチーム全体の取り組みを知っていただけると嬉しいです。

どうもありがとうございます。高田さんご自身はどのようなキャリアを経てSmartHRのUXライターのポジションに就いたのでしょうか?

僕自身は元々、エンジニアの出身です。そのあとWebデザインを勉強して、WebディレクターとしてWebサイトの企画や改善をしてきました。前職もSaaSの会社で、その会社にはカスタマーサクセスとして入社したんですね。お客様のサポートをやりつつ、初心者ユーザー向けのヘルプコンテンツも作成していました。仕事で文章を書き始めたのはその頃からです。その会社ではヘルプページだけでなく、プロダクトの文言も考案していました。

その時にエンジニアの方から「高田さんの職種はなんて言うんですか?」って聞かれて、調べたら「UXライター」「UXライティング」っていう領域があって。それにやっていることが近いな、と(笑)。

なるほど。SmartHRさんには「UXライティングユニット」というチームがあると伺いましたが、一体どのようなチームなのでしょうか?

SmartHRは大きくビジネスサイドとプロダクトサイドに分かれています。「UXライティングユニット」は、プロダクトサイドのカスタマーサポートチーム内の部署です。現在、僕を含め7名在籍していて、そのほとんどが編集かテクニカルライターの経験者です。

 UXライティングユニットで取り組んでいる主な業務は3つあって、まず1つ目がSmartHRのプロダクトの文言のライティングですね。

僕たちUXライターは、開発チームの一員として、日々新しい機能に関する文言を作っています。機能の大きさにもよりますが、新しい画面が必要になった場合、プロダクトマネージャーとデザイナー、エンジニア、UXライターが集まってプロジェクトを進めています。デザイナーはUIの部分を主導しながら、UXライターは文言を主導しながら共同で作っていく。これが大きな特徴です。

2つ目が、ヘルプセンターのコンテンツ作成です。SmartHRのヘルプコンテンツは約600記事ありますが新機能をリリースする際はページ追加が必要です。また、既存のページも常にアップデートが欠かせません。チャットサポートや、カスタマーサクセスのメンバーと連携をとって「ここがわかりづらい」といったお客様からのフィードバックがあれば、その声を元にヘルプページに反映しています。

そして3つ目が、「文言ガイドライン」の運用です。

今もアップデートを重ねている途中ですが、たとえば用字用語集。「ボタンを押す」「ボタンをクリック」のような表記揺れが起きないように、ガイドライン内で統一ルールを定めています。それから、これとは別に文章の書き方をまとめたガイドラインもありますね。

僕たちはこれらを「文言ガイドライン」と呼んでいます。もしガイドライン化されていない用語や書き方が出てきたらアップデートしていく、という流れです。現在は、Google スプレッドシートで管理していますが、SmartHR Design System から参照できるようにする予定です。

これら3つの業務を、ZoomやFigmaを使いながらリモートワーク環境で進めています。SmartHRでは「一語一句に手間ひまかける」というバリューを掲げているのですが、開発チーム全体で言葉を決めていくこのプロセスそのものが、自分たちのバリューを体現しているのかな、と。

たとえば、エンジニアやデザイナーと一緒にガイドラインの読み合わせをすることもありますし、普段の仕事でも(UXライターだけで進めるのではなく)開発チーム全員からフィードバックをもらうようにしています。UXライティングユニットの最終的なゴールとして、開発チームの誰もがプロダクトの文言を作っていけるようにしたいですね。

今「文言ガイドライン」のお話が出てきましたが、ガイドラインを運用する目的は何ですか?また、具体的にどのような点でメリットがあるのでしょうか?

目的は2つあって、1つは「機能のリリーススピード向上」です。文言ガイドラインを充実させることで、エンジニアがUXライターに相談しなくても文言を決められるようになります。少しでも速くリリースをして、ユーザーさんに価値を届けたい、仮説検証のサイクルを高速にしたい、と考えています。

もう1つは「わかりやすさの担保」。ガイドラインがあれば表記揺れを防げるので、ユーザーさんの認知の負荷が下がり、わかりやすくて使いやすいプロダクトを提供できます。SmartHRはプロダクトの規模も大きくなってきているので、どの機能でも同じ表記、表現を用いることが大切です。

また、ガイドラインに関連して、UXライティングユニットでは「こういう文言にしました」という部分だけでなく、「なぜそういう文言にしたのか」をドキュメントに残しています。お互いに情報共有することで、開発チーム全体の底上げにもなりますし、僕自身にとってもインプットの源になっていますね。

それは便利ですね。ちなみに、ビジネスサイドではオウンドメディアなどのライティングもあると思いますが、プロダクトサイドと共通のガイドラインを使っていますか?それとも別のものを使っているのでしょうか?

今お話しした文言ガイドラインは、プロダクトサイドのみで使っています。というのも、ビジネスサイドのマーケティングチームには、僕たちとは別に文章の書き手がいて、彼らと僕らが書いているコピーはそれぞれ役割が違うからです。UXライティングユニットがコミットするのは「プロダクトをわかりやすくする」こと。そしてオウンドメディアなどでは、「チャネルとターゲットに合わせたわかりやすさ」を意識した表現や技法を、選択しています。

SmartHRさんのプロダクトはUXが良いと評判ですが、丁寧な作り込みにはやはり時間がかかると思います。仕事のスピード感はどのような感じでしょうか?

過去に在籍していた会社と比べても、SmartHRの仕事のスピードは速いほうだと思います。ほぼ毎日のペースで何かしらリリースをしていますね。

社内の表記ルールに合わせてわかりやすい言葉づかいにカイゼン

たとえば文言に関する最近の事例だと、SmartHRのプロダクト内の表記を「エクスポート」から「書き出し」に変更したり、ファイルの取り扱いに関するほかの言葉も、ユーザーさんが理解しやすいようにアップデートしたりしました。

ヘルプページに関して言えば「機能は完成しているのにヘルプページができていない」という状況は避けたいものです。なので、正確性を大切にしつつ、ユーザーさんへのリリースのスピードを常に意識しています。

高田さんご自身にとって、インスピレーションになっているものはありますか?

SmartHRは専門性の高いソフトウェアなので、必ずしも現場で使えるとは限らないのですが、気になるコピー、文章表現があれば、スクリーンショットを撮ってtumblrにアップしています。それから『UXライティングの教科書』のユーザビリティの章は役に立つ部分があってよく読んでいますね。

ありがとうございます。では最後に、UXライターを目指している方や、プロダクトのライティングスキルを身につけたいと考えている人たちに向けて、何かメッセージをいただけますか?

SmartHRのUXライティングは、ユーザビリティに重きを置いています。なので「ユーザーの立場に立って言葉を考える」ことが僕の仕事です。僕自身、元々は「ライティングのスペシャリスト」というわけではなかったので、ユーザーさんに実際に会って話を聞くことや、ユースケースをインプットすることを大切にしてきました。これからもその姿勢を忘れずに仕事に取り組んでいきたいですね。

今後もSmartHRさんのお取り組みに注目しています。ぜひまた取材させてください。高田さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!

現在、SmartHRさんではUXライターを募集しているとのことです。詳しくはこちらのUXライター募集要項ページをご覧ください。


今週のインタビュー:高田邦明さん 株式会社SmartHR

エンジニア、Webディレクター/グロースハッカーとして勤務した後、コラボレーションツールを展開するSaaS企業にカスタマーサクセスとして入社。ユーザーインタビュー、ヘルススコア策定、ヘルプセンター改善などを推進し、プロダクトのUXライティングも担当。2020年12月、SmartHRに入社。ロールにとらわれず、課題を見つけてなんとかするスタンス。
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