
ローカライゼーションのための効果的なUXコピーの書き方
Jun 01, 2022この記事はThe Startupのブログ:Writing Effective UX Copy for Localisation: Part1の翻訳転載です。著者のモンティ・マジードさんの許可を得て公開しています。
この記事は、2019年3月にミュンヘンで開催されたWrite The Docsミートアップで行った講演をもとに書かれています。
数年前まで私は、英語のみでのプロダクトの操作を望むユーザーのために、英語のみでコピーを書いていました。ローカライゼーションとインターナショナライゼーションの考えが、私の日々の仕事の会話の大部分を占めるようになったのは、ヨーロッパに移ってからのことです。私は、世界中の人々がその国の言語で使用するプロダクトに携わるようになりました。
UXライターとして、言葉を一語一句選ぶことは、それ自体がひとつのプロセスです。その言葉のさまざまな使い方を考え、文化的な意味合いを考慮し、特定の使い方がもたらす結果やエラーについて考えるなど、さまざまなことをしなければなりません。これらの検討事項を5倍、6倍...場合によっては20倍にして考えてみてください。
もしあなたが何かを書くたびに、現在書いている言語だけでなく、そのコンテンツのローカライズ先のすべての言語について、これらの要素を念頭においていなければならないとしたらどうでしょうか?
ローカライズコンテンツの世界へようこそ。ここから先に進む前に、ローカライズとは何か、そしてなぜUXライターとしてローカライズに関心を持つべきか、その背景を簡単に説明したいと思います。
ローカライゼーションとは何か?
ローカライゼーションは、単なる翻訳にとどまりません。
ローカライゼーションを最も簡単に説明するなら「翻訳+文化」です。
「ローカライゼーションには、プロダクトの機能を損なうことなくその文化にふさわしいものにするために必要な翻訳やその他の変更が含まれる」と、ロックウェル・オートメーションの用語担当者エレナ・ダン(Elena Dunn)は述べています。
「つまりローカライゼーションとは、元のプロダクトが、そのソフトウェアの文化圏のメンタルモデルに基づいていたとしても、プロダクトがあたかも自分たちの言語と文化のためにデザインされたかのように体験できるようにすることなのです」
なぜ気に掛ける必要があるのでしょう?
ソース言語で執筆するUXライターとして、ユーザーがどの言語でプロダクトを操作するかに関わらず、あなたは大きな影響力を持つことになります。あなたが書くコンテンツと戦略的判断は、ユーザーのコンテンツ体験の骨組みを形成するのです。
例えば、tado°では、コンテンツをヨーロッパの5つの言語に翻訳しています。つまり、私がデザインし、英語で書いたコンテンツは、おそらく50%のユーザーしか見たり、使ったりしないのです。しかし、コンテンツの内容を決定するときはいつも、対象となるすべてのユーザーを念頭に置き、5つの言語それぞれで機能するように「ソース」のコンテンツを調整する必要があるのです。
このような課題に直面したとき、最初の数回はうまくいかず、その後、自分のチームに合った、拡大可能な仕組みにたどり着くのが人間というものでしょう。そこで、まず、UXライターとして、ローカライズされるコンテンツを書く際に留意すべきことを見てみましょう。
ローカライズのために書くときの4つの注意点
1. 単語の長さ

免責事項:上記の言語を話す方には、誤訳の可能性があることを事前にお詫びします。翻訳にはGoogle翻訳を使用しました
上の画像でわかるように、英語はほとんどの言語より短いです。この画像は、同じ文をマラヤーラム語(私の母国語)、ドイツ語、フランス語、ロシア語、アラビア語で翻訳したものです。
元の英語の文章は38文字、ドイツ語の文章は44文字、ロシア語の文章は55文字です。
教訓:ローカライズされたコンテンツは、英語のソースコンテンツよりも長くなることを前提にコンテンツを作成する。
2. 語順
英語は主語・動詞・目的語(SVO)の言語です。つまり、英語の文は、someone-did-somethingという構造になっていることがほとんどです。
しかし、世界の言語の50%は主語-目的語-動詞(SOV)の言語です。
免責事項:上記の言語を話す方には、誤訳がある可能性があることを事前にお詫びします。翻訳にはGoogle翻訳を使用しました
この例では、英語の文章がマラヤーラム語、トルコ語、韓国語に翻訳されています。上記の文章の中で、「短い」を意味する単語(またはフレーズ)がどこに出てくるか見てみましょう。
教訓:文章はすべての言語で同じように構成されているわけではないことを理解した上で、コンテンツを作成しましょう。
3.文法的性
いくつかの言語には、文法的性というシステムがあります。これは、すべての名詞に性別(または類)が割り当てられ、それが形容詞、冠詞、代名詞、および動詞の使い方に影響することを意味します。
世界の言語の4分の1は、文法的性のシステムを使用しています。
これは、特にコンテンツの内容が変化する場合に、課題となることがあります。ここで一例を挙げて説明しましょう。
私たちは、tado°のインストールプロセスの一部で、既存のデバイスが正しく設定されているかどうかを「確認」するステップにユーザーを導きたいと考えていました。このコンテンツは、ユーザーがインストールするデバイスに関係なく表示できる単一のバージョンにする必要がありました。
ユーザーがインストールしたデバイスを「確認」した場合、次のような結果になる可能性があります。
- すべて正しくセットアップされており、ユーザーはこれ以上何もする必要がない。
- ユーザーがデバイスの設定を変更する必要がある。
前者の場合、ユーザーは自分のデバイスを物理的に「確認」する必要はなく、後者の場合、デバイスのところまで行って、何らかの設定を変更しなければならないことになります。
このような制約を念頭に置きながら、私たちは英語でのコンテンツの最初のドラフトに辿り着きました。
これらの文字列には、変数の要素が含まれています。ユーザーが給湯器、給湯リモコン、室温調節器、のいずれを「確認」しなければならないかによって、コピーが変わります。
つまり、変数要素の{system}は、給湯器(boiler)、給湯リモコン(heating programmer)、室温調節器(room thermostat)という言葉に置き換えることができるのです。ここまではよいでしょう。
しかし、実際はそうでもないのです。このコピーをローカライズのために送ったところ、ドイツ人の翻訳者が「ドイツ語ではうまくいかない」と言ってきたのです。
ドイツ語では、変数要素の {system} は Therme(boiler)、Steuerung(heating programmer)、Raumthermostat(room thermostat)などの言葉に置き換えることができます。そして、文法的性があるため、英語のように簡単にはいきませんでした。
英語のタイトルをドイツ語に直訳すると、変数要素{system}のところに入る名詞によって、その訳が変わってきます。何時間も議論と交渉を重ねた結果、我々は最終的に以下のバージョンに決定しました。
我々はここでいくつかの妥協しました。ローカライズ担当者は、タイトルに変数の要素を使用できるような、ぎりぎりの訳語を見つけました。私は、ボディコピー(本文)から変数の要素を取り除くために、ボディコピーを言い換えることに決めました。ドイツ語で変数が使えないなら、他のヨーロッパ言語でも使えないと考えたのです。そして私たちは、変数の要素はタイトルだけに使うべきだと、開発者を説得しました。
教訓:英語で機能するコンテンツだからといって、他の言語で機能する必要はありません。コンテンツ制作の際には、妥協と協調の心構えを持ちましょう。
4. 文化の違い
ローカライゼーションとは、先に説明したように、ある体験を文化的にふさわしいものにするためのプロセスです。そのため、コンテンツを作成する際に文化の違いを認識し、考慮することが非常に重要です。
tado°では、言語だけでなく、コンテンツのチャネルによっても、ユーザーへの対応に異なるガイドラインを設けています。
例えば、ドイツ語では二人称の人称代名詞Sie(フォーマル)とdu(インフォーマル)を使用します。Webストア、顧客対応メール、トランザクションメールなどではSieを、Webサイト、アプリ、ソーシャルメディア、そしてユーザー側がduを使っている場合の顧客対応メールではduを使用する、というガイドラインを設けています。
このようなガイドラインは、言語によって異なります。フランス語の場合、コンテンツチャネルに関係なく、正式な二人称代名詞であるvousを使わなければならないというガイドラインがあります。また、スペイン語では、Webストアとトランザクションメールではフォーマルな二人称代名詞Ustedを使用し、それ以外のコンテンツチャネルではくだけたtuを使用すべきとガイドラインに書かれています。
教訓:文化の違いを当然と考えないことです。英語での用法が、他の言語では全く異なる意味合いやルールを持つ場合があることを理解した上で、コンテンツを作成するようにしましょう。