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フィンテック業界におけるUXライティング

フィンテック業界におけるUXライティング

翻訳記事 Oct 24, 2022

この記事はカラ・ラム氏のブログ記事: UX writing in the FinTech industryの翻訳転載です。著作元のUX Content Collectiveの許可を得て公開しています。


過去10年間、ユーザーエクスペリエンスはテック業界で人気を博してきましたが、ついに金融業界にも浸透してきたことに、私たちは興奮しています。

しかし、UXというと、多くの人がデザインやリサーチを思い浮かべます。まだあまり知られていませんが、UXライティングという比較的新しい分野も重要です。そして、信じられないかもしれませんが、人のお金を扱うとなると、私たちが何について、どのように話しているのかが細かくチェックされることになるのです。

なぜUXライティングが重要なのか?

UXコンテンツは、Webサイトやモバイルアプリで常に目にするものですが、普段はあまり意識しないものです。よく使うアプリやウェブサイトで目にする説明文やボタンについて考えてみてください。銀行で本人確認が必要な理由を説明した長い文章から、「支払いをする」という小さなボタンまで、さまざまなものがあります。 

調査によると、人はウェブコンテンツ全体の約20~28%しか読んでいないことが分かっています。これは、F字型の読書パターン(左から右へ読む言語の場合)でページをスキャンし、ページの左上にあるテキストが最も注視されるからです。下へ行くほど、そして右へ行くほど、注意が向かなくなるのはご想像のとおりです。

ニールセン・ノーマン・グループによるヒートマップは、3つのウェブサイトにおけるユーザーのアイトラッキング調査結果を示しています。赤はユーザーが最もよく見ている場所、黄色はその中間、青はユーザーが最もよく見ていない場所です。

UXライターは、ユーザーがデジタルプロダクトを利用する際にイライラしないよう、複雑な概念を会話表現に置き換えて説明します。また、競合他社の分析や情報アーキテクチャの調査を行うことで、冗長なテキストを効果的に削ぎ落とし、タスク完了までの時間を縮めることも可能です。効果的なコンテンツがあれば、ユーザーはより短時間でタスクを完了でき、プロダクトに対する満足度、ひいてはブランドに直接的かつポジティブな影響を与えることができるのです。

また、エラーが発生した場合、優れたUXコンテンツはユーザーと共感し合い、すばやく問題を解決する手助けができます。例えば、「4506エラーです。もう一度お試しください」と「そのパスワードは正しくありません。 CapsLockがかかっていませんか」とでは、どちらが親しみやすく、イライラしないでしょうか?

最後になりますが、UXライティングは多様性をもたらします。例えば、スクリーンリーダーに頼っているユーザー、視覚障がいのあるユーザー、英語を母国語としないユーザーに配慮した文章を書けば、より多くの読者にリーチし、より多くの顧客にサービスを提供することができます。

UXライティングのためのクイックヒント集

UXライターの仕事は、適切な文字量でユーザーを目的地へ導くことです。もちろん、無理は禁物!しかし、小説にストーリー展開があり、広告コピーに型があるように、私たちUXライターにも、コンテンツを役立つものにするためのヒントやトリック、戦略があります。

  • まず、すべてが簡潔であること。短い段落、箇条書きのリスト、重要な単語を文頭に置いた文章、余白などを使って、読みやすく、ざっと読みしやすいようにします。
  • 第二に、すべてが役立つものでければなりません。Webサイトやモバイルアプリで目にするすべての言葉は、慎重に設計され、幾度となくデザインと検証が行われてきたはずです。
  • 第三に、すべてが徹底的に明快であること。誰が、何を、いつ、どこで、何が起きているのかを具体的に示すことです。ユーザーは、何か問題が起きたときに迷子になりたくはないでしょう。

ツールチップ、ボタン、入力欄のラベル、説明文、エラーメッセージ、ポップアップなど、さまざまな形で表示される言葉は、ユーザーが最小限の労力でタスクを完了できるよう、すべて連動しています。

UXライティングが金融機関にもたらすメリット

オンラインバンキングが新たなスタンダードになるにつれ、従来の金融機関はシームレスなオンライン体験の提供へ、移行対応しなければなりません。コンテンツ開発のプロセスにUXライター(またはチーム)が参加していないと、よくわからないファイナンス用語、顧客離れの原因となる煩雑なオンボーディング、さらには訴訟やブランド毀損につながる誤解を招くメッセージなどが生じる可能性があります。最近の例では、ある個人向け金融サービス会社が、ユーザーを騙してクレジットカードを契約させ、信用スコアを悪化させたとして訴えられています。

ここにUXライティングへの投資が、長期的にどのように利益をもたらすかをご紹介します:

  • ブランド構築:一貫したボイスと(文脈に則した)適切なトーンは、ブランドが一体感のあるストーリーを語るのに役立ちます(さらには顧客を喜ばせることもできます)。
  • 顧客ロイヤリティ:良いUX=良いビジネス! ポジティブな体験は、顧客に満足感を与え、リピーターになってもらうことができます。
  • 高い競争力:質の高いUXを重視しない銀行やその他の金融機関は、市場で出遅れることになります。
  • 危機管理:アクセスできないコンテンツや誤解を招くようなコンテンツは、莫大な費用を要する訴訟に発展する可能性があります。ビジネスをリスクにさらさないようにしましょう


執筆者プロフィール:カラ・ラム(Cara Lam

カラ・ラムはInstagramのコンテンツデザイナーです。また、UX Content Collectiveのインストラクター、コーチとして、ワークショップを開催しています。

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