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移り変わるユーザーエクスペリエンス:ドキュメントなんて必要ない

移り変わるユーザーエクスペリエンス:ドキュメントなんて必要ない

翻訳記事 May 25, 2022

この記事はMicrosoft Designのブログ:UX in Flux: Where We’re Going, We Don’t Need Docsの翻訳転載です。著者のカレン・ケスラーさんの許可を得て公開しています。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の最後で、ドクがデロリアンに乗ってマーティとジェニファーを迎えに行き、未来の子供たちを助けに行くシーンがありました。覚えていますか?

マーティはドクに、時速88マイルに達するには道路が足りないから、もっとバックしなきゃと提案します。すると、ドクは答えます。

「道路...?我々がこれから向かう先は道路なんて必要ない」

道路のない世界を想像するのは難しいでしょう。道路をなくすために、どれだけのことを変えなければならないか、考えてみてください。

同じように、買ったばかりの製品の基本を説明する資料やマニュアルがない世界を想像できるでしょうか?あるいは、引き継ぎ資料なしに覚えなければならない仕事が存在するでしょうか?機器やソフトウェアのマニュアルが時代とともに減っているのを考えてみてください。最後にマニュアルを読んだのはいつですか?デロリアンに乗っていたときが最後かもしれませんね。

ご自身で想像してみてください。

「ドキュメント...?私たちがこれから向かう先はドキュメントなんて必要ない」

スマホ、パソコン、Webサイト、アプリはより洗練され、より使いやすくなっています。確かに、これらのテクノロジーを使う人々の多くは、より巧みになり、よりデジタルに精通するようになりました。しかし、人々が選べる選択肢は増えています。誰もシンプルさを求めて、選り好みするようになっているのです。

マイクロソフトでは、CEOのサティア・ナデラが、ユーザーフレンドリーで、共感でき、協力的なプロダクトを作ることの重要性を強調するプロダクト倫理について話しています。つまり、慎重に選ばれた言葉やメッセージでユーザーをガイドする、よく練られたUXです。ドキュメントを必要としない、直感的なUXです。

これは素晴らしいことです。私自身ライターであり、大規模なコンテンツチームのリーダーとして、ドキュメントをなくすことについて考えてきました。そして、テック業界のコンテンツにとって、これが何を意味するのか、周りの人たちと話し合ってきました。

ジャーナリズムでの経験を経て、私がテック界隈でライターとしてのキャリアをスタートさせたのは約20年前のことです。がーん! それでもマーティが1985年から1955年まで旅をしたのと比べれば、短いものです。 私はマイクロソフトでチームを率いながら、技術マニュアルの時代から、オンラインコンテンツや製品のWebサイト、プロダクト内のメッセージ、そして今、バーチャルリアリティの時代へと、多くの変化を見てきました。私はテック業界での旅をとても楽しんでいます。私自身の濃密さによって、ここまで来ることができたのです。

コンテンツ制作がプロダクト制作の一環になる

この進化について考えるとき、ゲーム業界からの教訓が頭に浮かびます。ゲームの攻略本を覚えていますか?

有名なゲームの攻略本

攻略本は、ゲームをプレイし、楽しみ、次のレベルに進むのを助けてくれるため大人気でした。ゲームを学びながら没頭できるため、これは素晴らしいアプローチでした。おかげで、すぐに次のレベルに行けるようになります。すぐに得られる満足感と達成感は格別です。

しかし、これらの攻略本はすぐに消え去り、ゲーム内のヒントやTipsに変わってしまいました。任天堂が少し前に始めたことですが「Minecraft」や「PUBG」のような人気ゲームにその例がよく見られるようになりました。

ゲーム内のヒントやTips

同じように、複雑な技術やUIのシナリオを乗り越えるために、詳細な技術ドキュメントが長年にわたって普及し続けています。しかし、新しいクリエイティブなアプローチをとっている企業もあります。セールスフォースは、自社システムの学習にゲーム性を持たせるためにTrailheadを開発しました。彼らは、顧客のプロダクトの知識をレベルアップさせながら、コミュニティを形成しているのです。感動的!

テクノロジーは驚異的なスピードで発展し続けています。そして私たちは毎年、魔法のような新しい機能を目にしています。本来ならありえない未来を想像してみてください。自分の声を使って、社内にソフトウェアを配備できたらどうでしょう?アプリを作るのに「開発者」である必要がなかったら?デザインをスケッチし、機能を特定すれば、ツールが私のためにアプリを作成してくれるかもしれません。なんてことでしょう! 初めて3Dプリンティングについて聞いたとき、私の脳は少しフリーズしてしまいました。しかし、今はどうでしょう。

Microsoftでは、プロダクトから生み出すUXについてどう考えるかを変えようとしています。サティア・ナデラは、人々に愛される深い感情的なつながりと経験を生み出すために、ものづくりの感性に焦点を当てたプロダクトの倫理について話しています。同じように、私たちは作成するコンテンツについても、これまでとは異なる考えを持っています。

優れたUIテキストやUXライティングは、使いやすく、お客さまに愛されるデザインを生み出す中核となっています。こうした技術やデザインの進化に伴い、文章はページ単位からプロダクト単位へと移行しています。私たちはコンテンツを書くだけでなく、カスタマーエクスペリエンスを書いているのです。

私たちがコンテンツとUXライティングの未来にどのようにアプローチしているのか、いくつかシェアしたいと思います。

1. What:言葉のデザイン

  • お客様に愛される使いやすいエクスペリエンスを生み出すには、言葉をよく練り上げ、慎重に表現しなければなりません。
  • ボイス、トーン、パーソナリティの原則は、私たちが創造するUXのバックボーンであり、プロダクトを通じて顧客を旅に誘うコンテンツでもあります。
  • 言葉とビジュアルは、お客様に喜ばれ、理解されやすい、調和のとれた体験であるべきです。

2. How:UXライティングとストーリーテリング

  • クリエイティブライターが、デザイナー、エンジニア、マーケター、プロダクトプランナーと一体となって、プロダクトの開発に取り組む。
  • 企業や開発者向けツール、ITマネジメントソリューションなど、従来は「技術的」であった領域においても、その能力を高めていく。
  • 顧客が求めるシナリオを実現するためのUXを表現するストーリーや動画スクリプト、ナレーションを作成するための多才な人材を育成する。
  • 機能、サービス、ハードウェアなど、それぞれが横断する幅広いUXのシナリオをつなぐことにより注力できるようスキルを高めていく。

3. WHO:共感を呼ぶ文章を書き、プロダクトに想像力をもたらすクリエイティブの専門家

  • クリエイティブな経験を持つライターが、テクノロジーと人間の意図や理解を結び付ける。
  • シナリオライターは、プロダクトを通じたお客様の一連のストーリーを語り、シナリオを作り、台詞やシーンを書き上げる。
  • プログラム・マネージャーは、幅広いシナリオを想定し、最後まで一貫した体験を提供する。

4. カルチャー:プロダクト全体で共有する価値観と目標

  • UXの専門性を高め、技術ドキュメントを少なくする。
  • プロダクトに顧客志向を導入し、深い専門知識にはあまりこだわらない。
  • クリエイティブなストーリーテリングを重視し、特定の機能にばかり目を向けない。


これらのアイデアは、あなた自身のキャリアを歩む上で、現在、あるいは将来において役に立つかもしれません。私たちのボイスアンドトーンの原則をチェックしてみてください。コメントであなたの考えや洞察をお聞かせください。



執筆者プロフィール:カレン・ケスラー(Karen Kesler


カレン・ケスラーはMicrosoftのコンテンツディレクターです。エンジニアリング、データサイエンス、コンテンツ、デザイン、パブリッシングなど、さまざまな分野のチームマネジメントの経験を持つ業界のエキスパートです。
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