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UXライティングで顧客離れを防ぐ

UXライティングで顧客離れを防ぐ

翻訳記事 Oct 20, 2021

この記事はUX Writers Collectiveのブログ: Fight customer churn with UX writingの翻訳転載です。著者のメーガン・シェリーさんの許可を得て公開しています。

UXライティングが、ビジネスの成果を左右する場合があります。ここでは、あなたの言葉がどのようにカスタマーリテンション(顧客維持)を改善し、顧客の離脱を防げるかについてご紹介します。

優れたユーザーエクスペリエンスを構築することと、継続的な戦略を立てることは別問題です。読んで字のごとく、それは全くの別物でありとても難しいことです。

他のコンテンツライティングとは異なり、UXは一連の流れが止まったり、1箇所にとらわれたりするものではありません。UXは生きたコピーであり、ユーザーのニーズや成長を反映して常にアップデートされるべきものなのです。

私はウィリアム・バトラー・イェイツの言い方が大好きです。「書いているように聞こえたら、書き直す」。つまり、私たちが使う言葉は、ビジネスの成功にとって絶対的に重要なものなのです。

そして、ユーザーの離脱については、言葉がこそが重要な意味を持ちます。実用的なコンテンツを提供できなければ、あなたの収益や購読率は低下し、成長戦略は失敗に終わります。UXのコピーを改善しない限り、非常に恐ろしい数字に直面することになるでしょう。

・解約率(チャーンレート)とは?
・UXライティングの解約率への影響
・この主張を証明するケーススタディ
・高い解約率を下げるための効果実証済みの戦略

チャーン(解約)レートとは?

チャーンレートとは、ある企業からの購入をやめた顧客の割合です。言い換えれば、あなたのビジネスに別れを告げる人々のことです。

企業が顧客を失うのは、珍しいことではありません。既存のSaaS企業のほとんどは、解約率が年間5%、低いところでは3%程度です。若い企業であれば24%に達することもあり、アプローチを改善しない限り長くは生き残れません。

チャーンが問題になるのにはいくつかの理由があります。

収益の低下。解約により、米国企業は年間1,360億ドル以上の損失を被っています。
顧客維持率の低下。解約したお客様の26人に1人が悪いレビューを残し、評価や口コミマーケティングに影響を及ぼします。
顧客維持コストの増大。新規顧客の獲得には、既存顧客の維持に比べて5倍のコストがかかります。

解約率の高さの最大の要因のひとつは、酷いUXです。良いコピーと悪いコピーのUXの差は明白ですが、ユーザーインターフェースに関しては、さらに重要です。ここではとりあえず、もう一歩踏み込んで、優れたUXが解約率に与える影響を分析してみましょう。

優れたUXの重要性

ユーザー、ユーザーの行動、ユーザーからのフィードバックを重視している人は、ユーザーエクスペリエンスの優先度をすでにご存知でしょう。UXライターの最終的なゴールは、以下の通りです。

・顧客に情報を提供する
・ナビゲーションを簡単にする
・顧客の行動を支援する
・エンゲージメントを高める

消費者があなたのビジネスをどのように理解しているかと、実際に何をしているかには大きな隔たりがあります。結局のところ、あなたが自分のブランドについてどう考えているかは重要ではなく、顧客がブランドをどう思っているかが重要です。また、自分のブランドのライティングが、どれだけ良い仕事をしているかを考えても仕方がありません。お客様がすべてです。この哲学は、バイヤーズ・ジャーニーをシンプルにしたいと考えているSaaSやEコマースの企業にとって非常に重要です。

解約率を下げる真の秘訣は、優れたコピーにあります。

良いコピーが解約に影響を与える

UXライターとして、あなたが書く言葉には何か意味があるはずです。あなたの言葉は、顧客の助けになるか、あるいは苛立たせて永久に離脱させてしまうかのどちらかです。もしあなたが、「短さ」と「簡潔さ」のちょうどいいところを見つけようとすれば、ライティングの真の力を見ることができるでしょう。顧客の解約を防ぐ脅威の力です。

優れたコピーがあれば、顧客をオンボーディングプロセスに導くことができます。コンテンツマーケティングは、いわばこのMVPであり、販促物や教育用コンテンツなどの価値ある情報を生み出します。また、コンテンツは、お客様がサービスの使い方を学ぶための手段でもあります。SaaS企業であれば、お客様の体験をより良く、より簡単に、より時間のかからないものにすることで、自社のユニークバリュープロポジション(UVP)に興味を持ってもらいたいと思うでしょう。

定期的にコミュニケーションを取れば、顧客が解約する可能性はぐっと低くなります。誰だって自分を数字のように扱われたくはありません。顧客のニーズと会社の目標の橋渡しをすることで、全員がハッピーになれます。過剰なコミュニケーションは、決して悪いことではありません。

チャーンの事例

登録者数の減少や、オンラインレビューの低下など、高い解約率は、ビジネスが下り坂になっていることを示しています。しかし、すべての企業が解約の犠牲になっているわけではありません。ライティング戦略を持っている企業もあります。

GrooveHQは、私のお気に入りの例の一つです。このSaaSは、Salesforceと連携しながらテクニカルサポートを提供している比較的実績のある会社です。ある時GrooveHQは、ユーザーの解約率が4.5%に急上昇していることに気付きました。これではスタートアップの成長を維持できません。そこで彼らは、優れた解約防止策の第一歩として、リサーチに着手しました。

リサーチの結果、GrooveHQは、顧客が自分たちのプラットフォームについて非常に混乱しており、最初のいくつかのタスクで行き詰まることが多いことに気づきました。そこで、本格的にユーザー情報の収集を開始しました。

その結果は?危険信号(Red Flag Metrics=RFM)です。これはGrooveHQにとって厳しい現実を突きつけるもので、最初の30日間でユーザーセッションが激減したことを示していました。そしてこれは、UXの悪さが原因であることが判明しました。

そこでGrooveHQは、ソフトウェアのアップデート、ダイレクトメール、優れたテクニカルライティング(コンテンツテストの実施)を組み合わせて、離脱の可能性が高いユーザーに直接連絡を取り始めました。すると、連絡を受けた顧客の26%が実際に回答し、そのうち40%が1ヶ月後もサービスを継続して利用してくれました。プロジェクトを終える頃には、GrooveHQは解約率を71%減少させており、これらはすべて、優れたリサーチと優れたUXライティングによるものです。

しかし、すべての解約防止の成功例が、今回のように綿密に行われているわけではありません。例えばMention社は、20万人以上のクライアントを管理するブランドインサイトのSaaSですが、彼らは草の根的なプロジェクトではなく、すでに知っていること、つまり消費者行動を活用しました。その結果、有料、無料トライアルを利用している顧客は、無料プランを利用している顧客よりも価値が高く、メールやウェビナーなどのコンテンツをより多く受け入れていることがわかりました。

非常に価値のある、UXを考慮した計画を作成することにより、Mention社は無料トライアル、コンテンツマーケティング、コンテンツのテスト、プラットフォームにインサイトを与える細かな部分にも焦点を当てました。その結果、3ヶ月間で解約率を22%下げることができました。優れたライティングのメリットについて、私の言いたいことが伝わるでしょうか?

大企業には解約のリスクがないと思っている人は、ぜひ考え直してください。HubSpotはデジタルマーケティングの世界では絶対的な大手企業ですが、年間の解約率が上昇し始めたとき、何か新しいことを試みる時期だと判断しました。他社とは異なり、HubSpotはCHI(カスタマー・ハピネス・インデックス)という指標で解約率を測定しています。HubSpotはエンゲージメントを高めるために、インバウンドコンテンツマーケティング(売り込むのではなく、コンテンツを通じて顧客に見つけてもらうスタイルのマーケティング)を強化し、またモバイルアプリのライティングを強化しました。

このUXライティングの改善は、HubSpotのオンボーディングの顧客だけでなく、以前から不満を持っていた顧客にも影響を与えました。実際に、不満を持っていたお客様の約33%が、より良い文章に触れたことで考えを改めたのです。

解約率を下げるための戦略

ここまでは、戦略の背景にある理由と、それを実践している企業について紹介してきました。ここからは、解約を防ぐための実践的な戦略について詳しく見ていきましょう。

メトリクスを特定する

GrooveHQのように、誰のために書いているのか(そしてその理由)を知る必要があります。コンテンツの欠けている部分、つまりバケツの穴を探します。すべての穴を塞ぐことはできませんが、最も大きな穴を塞ぐことはできます。

・コピーから専門用語やスラングを取り除く
・中学1年生でもわかるように書く(シンプルであればあるほど良い)
・明確で簡潔であること。


コンテンツ制作

あなたが作るコンテンツは、すべてのユーザーに向けたものでなければなりません。自分のプラットフォームを初めて利用する人に何を見せたいかを考えてみてください。自分の直感で、そこから修正していきましょう。

・ネイティブではない人たちを含む、さまざまな立場のユーザーのことを考える。
・言葉を詰め込むのではなく、言葉から生まれる「バリュー」を追求する。
・確立されたブランドボイスを念頭に置く(コンテンツスタイルガイドはあるか?)


技術的な解決策

すべての顧客が技術的な知識を持っているわけではありません。ですから、顧客がプロダクトをより包括的に理解できるように、できる限りのことをしてください。覚えておいてほしいのは、ユーザーはすべての情報を事細かに必要としているわけではないということです。方向性を掴めれば良いのです。

・ネガティブな意味合いを持つ用語(ブラックリスト、スレーブなど)の代わりに、同義語を使う。
・テクニカルな事柄について書くときは、できるだけ平易な言葉を使う。
・単純化しすぎず、シンプルな表現を心がける。

マイクロコピー

マイクロコピーはUXの大部分を担っていますが、それには理由があります。Google I/O '17によると、インターフェイス上の単語を変えただけで、エンゲージメントが17%も向上したそうです。解約率を下げたいのであれば、小さなことから始めましょう。

・メールやニュースレターを短くする
・ユーザーが簡単に読めるヒントやチュートリアルを用意する
・冗長な文章や弱いコピーを減らす

コミュニティからのフィードバック

メールやアプリでのアンケート、ソーシャルメディアでの投票など、顧客の本音を知るためのアンケートを作成しましょう。驚くような結果が得られるかもしれません。

・ユーザーの意見を聞く(聞きたくない意見でも)
・現場やアプリ内でフィードバックフォームを提供する
・企業にとってリスクのある「移り気な」顧客に、どのような支援ができるか連絡する。

今すぐ何を始めるべきか?

解約を止めることが簡単だとは言いません。転がり落ちる岩を止めるには大変な労力が必要ですし、そのための努力をしなければ、うまくいきません。

これを機に、新しい視点でライティングを考えてみてください。ケーススタディが示しているように、優れた文章は、ユーザーが解約するか、プレミアム登録するかの分かれ目になります。また、解約が始まってしまう前にこの事実を認識し、顧客があなたのブランドのメッセンジャーとして特別な体験を味わえるよう、「守り」のライティングをすることも重要です。


執筆者プロフィール:メーガン・シェリー( Meagan Shelley 

メーガンはアメリカ在住のコンテンツライターであり、SEOのスペシャリストです。リサーチ、ソーシャルメディアマネジメントをはじめ、あらゆるメディアへのデジタルライティング、コンサルティングをおこなっています。
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