
初心者のためのマイクロコピーガイド
Jul 28, 2021この記事はprototypr.ioのブログ: The Beginner’s Guide to Microcopyの翻訳転載です。著者のキネレット・イフラさんの許可を得て公開しています。

Photo: BongkarnThanyakij/Getty Images
朝、オフィスに着いたとき、どちらの貼り紙がコーヒーメーカーに貼られているほうが良いでしょうか?
こちらでしょうか。
「故障中」
それともこっち?
「壊れちゃいました。でも、2階にある私とそっくりのマシンへ
美味しいエスプレッソを飲みに来てください」
これは、デジタルプロダクトではなく、貼り紙なので、正確にはマイクロコピーではありません。しかし、この2つの貼り紙の違いこそが、マイクロコピーの本質なのです。このような言葉には、がっかりさせられたり、悔しい思いをさせられたりすることがありますが、適切な表現をすることで、ユーザーとのつながりをより人間的に、わかりやすく、やる気にさせ、楽しいものにすることができるのです。
マイクロコピーとは...
デジタルプロダクトにおいて、ユーザーの行動を促すための言葉やフレーズのこと。デジタルプロダクトとは、Webサイトやアプリはもちろんのこと、複雑なシステム、業務用システム、ATMなどのデジタルキオスク端末などを意味します。
マイクロコピーの定義:
- 行動を起こす前にモチベーションを向上させる(CTAやオンボーディング)
- 行動に伴って指示を与える(ヒント、ツールチップ、操作ラベル、ボタン、メニュー)
- 行動の後にフィードバックを返す(何かがうまくいかなかった場合のエラーメッセージ、アクションが意図したとおりに完了した場合の成功メッセージなど)
それでは、マイクロコピーの4つのガイドライン(Human、Clear、Motivating、Enjoy)に沿って、より良いマイクロコピーがどのようにビジネスに役立つかを見ていきましょう。
1. 人間的であること:会話体の文章を使う
なぜ機械が人間のような声を出す必要があるのか。クリフォード・ナスとコリーナ・イェンの共著『The Man Who Lied to His Laptop(邦題:お世辞を言う機械はお好き?)』を読むことを強くおすすめします。スタンフォード大学の教授であるナスは、人とコンピューターとの関係を研究するために、100の実験を行いました。
最も興味深い発見のひとつは、コンピュータを操作する人々は、デジタルプロダクトが人間社会の規範に沿って行動することを期待しているということです。デジタルプロダクトが社会的な慣習に従わなかった場合、人は気後れしたり、気分を害したりします。人間ではなく機械のように聞こえるユーザーインターフェースに、人は怒りを感じてしまうのです。
人が話しているように聞こえるには、数十年前にさかのぼる必要があります。少し前までは、フォーマルで複雑な文章を書くための言葉と、よりダイナミックで、短く、流れるような会話のための言葉がはっきりと区別されていました。
しかし、インターネットがすべてを変えてしまいました。私たちはインターネット上で言葉を書きますが、それは、正式な書面によるやりとりというよりは会話に近いものです。
エリカ・ホールは著書『Conversation Design』の中で、テクノロジーが、書くことと話すことの古くからのカテゴリーを壊し、会話体ライティングという第3の選択肢を生み出しているとまとめています。
例えば「ご希望のお支払い方法を選択してください」と書くのは構いません。しかし、目の前に立っているユーザーを想像すると、「お支払い方法は何になさいますか?」と言いますよね。
最初の文は長く、「選択してください」など、普段言わない言葉を使っています。一方、2つ目の文は短く、流れもよく、お互いに会話をしているように聞こえます。これはまさに私たちが目指しているものです。
下のスクリーンショットは、Pinterestのアプリ画面からです。「Pinterestがカメラへのアクセスを求めています」とは言わず、超シンプルな、そして威圧感のない質問として表現しています。
これは、Gmailが新機能を紹介している画面です。
ユーザーは、その機能がどんな働きをしているのか、どのように役立つのかを簡単に理解できます。これが会話体ライティングの役割です。
次は、Microsoft Officeからの事例です。Apple信者ではない方は、ここ2、3年の間にMicrosoftの言葉が、技術的でフォーマルな言葉から、より会話体の言葉へと、大きく変化していることにお気づきでしょう。これはその好例です。
2. すべてを明快に:事前に質問に答え、懸念点を洗い出す
デザイナーとユーザーは、同じゴールを共有しています。ダウンロード、デモのお試し、フォームの送信、登録、購入など、ユーザーが無事にアクションを完了してほしいのです。ユーザーができるだけ早く、簡単にゴールにたどり着けるようにしたいのです。
そのためには、ユーザーが行き詰まったり、プロダクトの利用をやめてしまう可能性のある隠れた摩擦ポイントを特定し、予測しなければなりません。私たちは、ユーザーの立場に立って、プロダクトを通じて質問をする必要があります。
- ユーザーが何を誤解しているのか、何をすればいいのかわからないのか。
- 何がユーザーを不安にさせたり、疑わせたりするのか?
- ユーザーがサポートに連絡したり、あきらめたりするのは何か?
これらの質問に答えれば、ユーザーが感じている懸念点を事前に解決できます。ユーザーはスムーズにプロダクトを使い続けることができ、タスクの完了率は高まります。
サラ・ウォルシュは、InVisionで行った講演で、キャピタル・ワンのウェブサイトで、フォーム画面の文字数を2倍に増やし、余白をすべて潰し、操作上のアドバイスを入力欄の周囲に書き加えたことを紹介しています。その結果、フォームへの入力率が26%から92%へと3倍になったとのことです。
それでは、よくある摩擦ポイントと、その対処法の例をいくつかご紹介しましょう。
摩擦のポイント1:それってどういう意味?
ほぼすべての業界には、外部の人間には理解できない特定の用語があります。これは、The Noun Projectのアイコン素材を扱うストアの事例です。
ユーザーがグーグルで調べたり、プロダクトから離れたりする必要がないように、それぞれのライセンスの定義をツールチップに表示しました。
摩擦ポイント2:それは何のために?
これは、チーム管理ツールのMondayからの引用です。プロダクトのさまざまな機能に名前をつけるとき、私たちは独自の決めごとを作っていますが、新しいユーザーはそれを理解できないかもしれません。その名前が何を意味するのか、その機能が何をするのか、説明する必要があります。MondayはカラフルなTooltipsを使って素晴らしい仕事をしています。
摩擦点その3:どこでその情報を得るのか?
これはHPの例です。登録したい製品の名前や番号を入力するように言われたときに、その情報をどうやって見つけるのかという疑問に答えるリンクが表示されます。リンクをクリックすると、画像付きで答えが表示され、すべてが明らかになります。
摩擦ポイントその4:どんなフォーマット?
これは、銀行口座とPayPalアカウントを接続するフォームの例です。PayPalは、ユーザーに正しいフォーマット(2桁の数字、スペースなし)のヒントを与え、どこで情報を得られるかを伝えています。これにより、ユーザーは途中でイライラするようなエラーメッセージを受けることなく、フォームを完成させることができます。
摩擦ポイントその5:なぜこのような個人情報を求めるのか?
ユーザーに生年月日や電話番号などの個人情報を尋ねると、ユーザーは自分のプライバシーを気にして、なぜこの情報が必要なのかを知りたがります。
これもMonday.comからです。
摩擦ポイントその6:無料体験は本当に無料なのか?
ユーザーが無料体験版を利用するかどうかを検討する際に一番気になるのは、無料体験版の期限が切れたらすぐに課金が始まるのではないかということです。そこでSpotifyは、他の多くの企業と同様に、この懸念に対処するため、登録時にクレジットカードが不要であることを前もって明記し、無料体験の期限が切れても請求できないようにしています。
商品や業界によっては、この他にも様々な疑問や不安があると思いますので、商品を確認し、弱点を洗い出し、マイクロコピーを使って事前に対処しておきましょう。
3. ユーザーの行動意欲を高める:ドアを開き、足を踏み入れる理由を与える
すべてのデジタルプロダクトには、販売とは関係のない、ユーザーに起こしてもらいたい、たくさんのマイクロアクションがあります。例えば、次のようなものです。
- 連絡先、位置情報、カメラへのアクセスを許可
- カレンダーへの追加
- 評価する
- クッキーへの同意
- 広告ブロッカーの解除
- 新機能を試す
- メーリング・リストに登録する
- プロフィールを入力する
- お問い合わせ
- 会話を始める
- 友達と共有する
- 別の検索をする
ユーザーにこれらのマイクロアクションを起こしてもらい、プロダクト内のトラフィックを増やすために、私たちは非常に基本的なマーケティングの原則を利用しています。つまり、誰かに何かをしてもらいたいのであれば、それを実行する正当な理由を与え、どのようなメリットがあるのかを伝える必要があるのです。
自分のことやプロダクトのことではなく、相手のことを話してください。
例えば、ユーザーに自社のプロダクトのことを友人へシェアして欲しい場合、シェアすることでプロダクトの成長につながることを伝えても意味がありません。ほとんどのユーザーは、私たちがプロダクトを成長させることに興味がないからです。The Infatuationは、レストランを紹介するウェブサイトです。ユーザーに情報を広めてもらいたいとき、彼らは自分たちのプロダクトの良さを語ったりしません。その代わりに、こう言います。
つまり、あなたがThe Infatuationのことをシェアすれば、友人はあなたに感謝し、あなたのことをもっと好きになるのです。友情は、人々が気にかけ、行動する動機になります。
ユーザーにニュースレターに登録してもらいたい場合、「ニュースレターに登録してください」と書くだけでは不十分です。なぜなら、ユーザーにとって何がいいのかがわからないからです。これはGood UIの例ですが、基本的には「私たちが全部やります。あなたはA/Bテストの結果から学ぶだけです」と言っています。どんな価値を提供できるかがはっきりしていますね。
これはMediumの登録ページです。Mediumはユーザーにアカウントを作ってもらいたいので、ユーザーの体験をどのように向上させるかを伝えています。
Mediumのユーザーは、プラットフォームを最大限に活用するために、これらの機能を心から必要としています。
プロダクト内のトラフィックを増やすもうひとつの方法は、プロダクト内で行き止まりがないようにして、次のステップを提示したり、代替案を示したりすることです。
Quettra社のデータによると、平均的なアプリは、インストールしてから3日以内に、日別アクティブユーザーの77%を失います。30日以内には90%が失われます。Dina Chaiffetz氏によると、その理由の1つは第一印象であり、エンプティステート画面では、教育したり、喜ばせたり、動機付けたり、といったことがなされていません。例えば、ショッピングカートは、こんなふうに行き止まりになっていることがあります。
しかし、Society6では、その行き止まりを開かれたドアに変えたのです。
膨大な数のエンプティステートを集めたこのサイトを見て、インスピレーションを刺激してください。
4. 楽しい旅を演出する:ユーザーを心地よくする
マイクロコピーは常にクールで面白いものでなければならないという、よくある誤解があります。しかし、それは間違いです。実際には、ほとんどの場合、マイクロコピーは非常に真面目なものです。他のガイドラインで見たように、マイクロコピーはユーザーを助け、質問に答え、モチベーションを高めることを目的としており、ユーザーを楽しませるものではありません。
そのため、ブランドやプロダクトが面白いものでなければ、無理に表現しても不自然に感じられ、ユーザーはそれに気づくでしょう。
しかし、ブランドの声やトーンに少しの喜びや楽しさのスパイスが効いていれば、ユーモアは最高の味方になります。ナス教授の研究によると、ユーザーを笑顔にすると、彼らは気分が良くなり、ブランドをより好きになり、元気になって行動するようになるそうです。
では、どうすればユーザーに心地よくなってもらえるのでしょうか?
これは、Imperfect Produceというサイトの例です。このサイトでは、見た目が悪いために人々が買いたがらない野菜や果物を販売しています。これ以上にぴったりなウェルカム・ページがあるでしょうか?
ナス教授によると、このような褒め言葉は効果的で、お世辞だと分かっていても、ユーザーは好感を抱くことがわかりました。人は不思議な生き物ですから、どうぞ気前よく褒めてあげてください。(人生のヒントにもなりますからね)。
ユーザーが動揺していたら、元気づけてあげましょう。これはDuolingoの事例です。
喜んでいる時は、一緒に祝ってあげてください。
この画面ではThe Next Webがクッキーの同意を求めています。イメージとコピーの組み合わせが見せ所です。
エラーメッセージを面白いものにもできますが、注意しなければならないのは、何よりも明確で役に立つものでなければならないということです。
OurHomeアプリでは、年齢を122歳以上と入力すると、こんな愉快なエラーメッセージが表示されます。
この4つのガイドラインは、どれもユーザー中心に作られています。しかし、ビジネス面ではどうでしょうか?マイクロコピーの投資対効果(ROI)とは?より良いマイクロコピーは、ビジネスにどのようなメリットがあるのでしょうか?
マイクロコピーのROI
1.優れたマイクロコピーは、ユーザーが離脱する理由を減らします。会話体ですべてを説明し、疑問や不安を事前に解消しておくことで、プロダクトやサイトへの理解が深まります。
2. 同時に、プロダクトの利点を示し、ドアを開き、彼ら自身や私たちに対して良い印象を与えることで、ユーザーは行動する理由が増えます。
プロダクトから離脱する人が減り、行動する人が増えれば、笑顔を浮かべながら、目的の行動を達成するユーザーが増えることになります。