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エラーメッセージの極意

エラーメッセージの極意 - 物事がうまくいかないときに、明快で役に立つコピーを書く方法

翻訳記事 Jun 30, 2021

この記事はMediumのブログ: The Art of the Error Messageの翻訳転載です。著者のマリーナ・ポズニャクさんの許可を得て公開しています。

テック業界では「失敗を受け入れる」という考え方が大きな意味を持っています。「誰よりも早く、たくさん失敗しなさい(Fail fast, fail often)」は業界のマントラといっても過言ではありません。しかし、プロダクト開発のプロセスでは、あまり注目されない日常的な失敗があります。それは「謙虚なエラーメッセージ」です。

エラーメッセージは、ユーザーが問題を解決して先に進むのに役立つものです。

エラーメッセージの問題

「パスワードが正しくありません」というエラーは、誰もが一度は(あるいは毎日)目にしたことがあるのではないでしょうか。期待通りに動作しないとイライラすることもありますが、普通は大したことではないと受け流します。しかし、このような小さなイライラの積み重ねは何をもたらすでしょうか?

すべてのエラーメッセージは、私たちを邪魔する小さな障害物です。役に立たないメッセージが表示されれば、このまま続けるか、それとも諦めるかの判断の分かれ目になることもあります。エラーメッセージは、コルチゾールのレベルを高めて、体にストレス反応を引き起こすという研究結果さえあります。

下記のようなメッセージを見たときの、受け取り方の違いを考えてみてください。

こんな風に、よりアクション志向なメッセージもあります。

アプリの開発に取り組んでいるライター、デザイナー、開発者は、表示するエラーに注意を払うことで、ユーザーのフラストレーションを和らげることができます。

そのエラーメッセージが本当に必要かどうかを考えてみてください。何かを書き始める前に、そもそもエラーが発生しないようにエクスペリエンスを再設計する方法はないか、よく検討します。ただシンプルに動作させる方法はないでしょうか?最高のエラーメッセージは、エラーメッセージがないことです。

エラーメッセージが必要な場合は、そのメッセージについて慎重に考えてください。うまくいかなかったとき、アプリが機能しなくなったとき、何か役に立つことを言いましょう。そのメッセージは、ユーザーが問題を解決して次のステップに進むのに役立つものでなければなりません。

役に立つエラーメッセージを書くためのヒント

根本的な問題を解決できず、どうしてもエラーメッセージを表示しなければならない場合は、以下の点に注意してください。

何が起きたのか、なぜ起きたのかを説明する

ほとんどのエラーメッセージは曖昧です。本当に漠然としています。可能な限り、何が起こっているのかを明確にしましょう。ちょうど良い量​​の詳細情報を伝えますが、専門的になりすぎないようにしてください。誰もが簡単に理解できる方法で書いてください。つまり、専門用語は使わないということです。

ユーザーがSpotify Premiumの広告を見て、無料体験を開始するためのリンクをクリックしたとします。すると、あるページにたどり着き、次のような画面が表示されます。

ユーザーが 「これを入手してください 」というメールを受け取ったばかりなのに、なぜ対象外なのか、これでは明確ではありません。どうしたんでしょうか?
この場合、ユーザーに何が起こったのか(オファーの対象外であること)、その理由(以前に無料トライアルに申し込んだことがあること)を伝えることが重要です。

そうですね。メッセージが長くなってしまいましたが、このようにお役立ち情報の追加が必要な場合もあります。

次のステップを提案する

何が起こったのかを説明した後、問題を解決するために何ができるかをユーザーに伝えます。ボタン、リンク、または別のCTA(コールトゥアクション)を含めます。要点を素早く伝えるために、わかりやすい見出しを書きましょう。

新しいポッドキャストを探したいとします。アプリを起動すると、エラーメッセージが表示されます。

このメッセージは、何が悪かったのか、なぜ悪かったのかを伝えていますが、次のステップを示唆するものではありません。明快な見出し(「アプリは最新ではありません」)と行動を促す内容(ダウンロードボタン)を入れた方が良いでしょう。

適切なトーンを見つける

UXライターである私たちは、適切な情報を適切なタイミングで伝えたいと思っています。しかし、何を言うかだけでなく、どのように言うかも重要なポイントになります。トーンに関しては、適切なバランス、つまりスウェーデン語で言うところの「ラーゴム」を見つけようとします。

トーンとは、言葉の性格や態度のことです。同じブランドボイスでも、状況に応じて文章のトーンが変わります。誰に向けて書いているのか、何について書いているのかによって、シリアスだったり、ニュートラルだったり、フレンドリーだったりします。友人や両親、上司との会話を思い浮かべてみると、常にトーンを変えています。

正しいトーンを選ぶにはどうすればいいのでしょうか?まずは、自分自身に問いかけることから始めましょう。

  • このような状況で、ユーザーはどのように感じるでしょうか。もしそれがストレスのかかる深刻な問題であれば、くだけたトーンは不適切でしょう。
  • あなたは実生活でこれを言うでしょうか?メッセージを声に出して読んでみると、修正すべき単語やフレーズを見つけるのに役立ちます。

不正なリクエスト:入力されたパスワードは無効です。→ 「不正」や 「入力された」などの言葉で、ロボットのように聞こえます。

パスワードが一致しませんでした。もう一度お試しください。→ これはかなりわかりやすくて親しみやすいですね。いいですね。

オーノー! パスワードが一致しませんでした。もう一回やってみる?→ これを実際に声に出してみてください。ちょっとふざけすぎですね。

これら3つのメッセージは、同じことを伝えていますが、それぞれトーンが異なります。エラーメッセージを書く際には、読み手や文脈にぴったりなトーンを選んでください。

ほとんどの場合、ユーザーエクスペリエンスの良し悪しを分けるのは「細部」です。明快なエラーメッセージを書くことで、ユーザーのフラストレーションを和らげ、アプリやサービスを使い続けてもらうことができます。そのようなユーザーには、愛情を注ぐ価値があります。次にエラーメッセージを作成する際には、今お伝えしたヒントを参考にしてくださいね。

  • 何が起こったのか、なぜ起こったのかを説明する。
  • 次のステップを提案する。
  • 適切なトーンを見つける。

最後に、メッセージを声に出して読み上げ、ややこしい専門用語を取り除くことも忘れずに。



執筆者プロフィール:マリーナ・ポズニャク(Marina Posniak

マリーナ・ポズニャクはコンテンツストラテジスト、UXライター。編集やテクニカルライティングの経験を持つマリーナは、過去にDropbox、Opower、Facebookなどでコンテンツ設計を担当してきました。現在は、スウェーデンのヨーテボリにあるSpotifyで働いています。

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