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ピッチ・ポートフォリオ:まだないところに、UXライティングの仕事を作る

ピッチ・ポートフォリオ:まだないところに、UXライティングの仕事を作る

翻訳記事 Sep 25, 2022

この記事はウゾマ・イベクウェ氏のブログ: Pitch Portfolio: Create a UX writing job where there is noneの翻訳転載です。著作元のUX Content Collectiveの許可を得て公開しています。

ユーザーエクスペリエンス・ライティングとはどんなものかを学び、ポートフォリオを作り、転職活動を始めたものの、不安は募るばかりです。UXライティングは、あなたの地元の多くの雇用主にとって、まだ未知の概念なのです。さて、どうしましょう?

初心者、特にUXライティングの仕事が少ない地域に住む私は、求人サイトで何時間も費やしても、ほとんど何の成果も得られないことに気がつきました。UI/UXデザイナーの求人が65件もあったとしても、「経験あり」のUXライターの求人は1件も見つからず、ましてやエントリーレベルのUXライターの求人は見つからないことがほとんどです。

もしあなたがこんな状況なら、またはこれから積極的に転職活動をしたいのであれば、その解決策はあります。

身の回りのチャンスに気づく

物事には表と裏があります。

UXライティングが認知されておらず、プロダクトのマイクロコピーやユーザー体験が酷いケースが多いため、私はたくさんの仕事のチャンスに恵まれていることに気づきました。一般的に、この手のプロダクトチームでは、エンジニアやユーザーインターフェースのデザイナー、あるいは「書ける」人になら誰でもUXライターの仕事をさせていて、それが如実に表れているのです!

例えば、私はある銀行のモバイルアプリをダウンロードしたことがあります。そのアプリは優れたマーケティング戦略で人気を集めていました。しかし、会員登録の3分後には、ありえないほどにイライラさせられたのです。
その問題とは?プロフィールページで、個人情報をアップロードするボタンのテキストに「KYC & transaction limits」と書かれていたのです(KYCはKnow Your Customer=「本人確認」の略語)。


スクリーンショット:モバイルバンキングアプリの「KYC & 取引限度額」


あなたもゾッとするはずです。

予想通り、私は会員登録を完了できず、サービスの利用を見送りました。

この会社のプロダクトチームには、専属のUXライターがおらず、そのせいでプロダクトのコンバージョン率、ひいてはビジネスそのものが苦しくなっていることが明らかです。

このような状況だからこそ、ピッチ・ポートフォリオの手法を使うことで、初心者でもUXライティングの仕事を作り出せるのです。

ピッチ・ポートフォリオとは?

ピッチ・ポートフォリオは、自身のプロジェクトやケーススタディを紹介するような、よくあるポートフォリオとは違います。UXライターの役割を知らない企業に対して「なぜビジネスを成功させるためにUXライティングが必要なのか」「なぜUXライターであるあなたがチームに必要なのか」を説明するために特別に作るポートフォリオです。

さらに、ピッチ・ポートフォリオには、応募先の企業と同じ業界のプロダクトに焦点を当てたプロジェクトが1つだけ含まれており、親しみやすく、将来の雇用主をギョッとさせないように配慮されています。何しろ、彼らはまだその内容を知らないのですから。

また、このテクニックを使えば、通常のポートフォリオを作成する際に、どのUXライティングプロジェクトに着手するか、戦略的に考えることができます。これは、Win-Winの関係です。

5つのステップでピッチポートフォリオを構築する方法

  1. 問題提起する
  2. 解決策を示す
  3. モックアップを見せる
  4. 事実で裏付ける
  5. 自身のサービスを売り込む

問題提起する

ピッチ・ポートフォリオは、応募先の企業が抱える問題を明らかにすることから始めます。例えば、コンバージョン率が非常に低いことによる回転率の悪さはその一つでしょう。

この問題を解決するには、あなた自身がその会社のプロダクトを使い、Google PlayストアのレビューやYelpなどで顧客のフィードバックを確認する必要があります。また、ソーシャルメディアや、身の回りの人々がそのプロダクトについて交わす会話に耳を傾けるのも役立ちます。

私の場合、カスタマーレビューを確認する前に、ユーザージャーニーを体験してみるのが好きです。なぜなら、偏見なくプロダクトを見ることができ、そこでさまざまなペインポイントを把握できるからです。これは、次の3つの段階に分けて行います。

  1. ユーザーのワークフローをざっと見て、使いやすさのレベルを判断し、際立って悪いUXライティング手法のみをメモする。
  2. カスタマーレビューを確認し、優れたUXライティングによって問題が解決、改善されるかどうかを判断する。
  3. UXライティングを改善することで問題が解決・改善されることが明らかになった段階で、プロダクトを作り直す。

ピッチ・ポートフォリオでは、その企業が直面している、あるいは気づいていない問題を示すことから始めます。それがいかに大きな犠牲を払っているかを示すことができれば、確実に相手の注意を引きつけられます。そのため、可能ならば、いくつかのレビューのスクリーンショットを含めると、さらに効果的です。

「怖い」「イライラする」。どんなプロダクトのマイクロコピーでも、想起させてはならない二大禁句です。ユーザーから「エラーメッセージでひどい思いをした」とはっきり指摘された場合、その原因は専門用語、曖昧な表現、役に立たない表現であることがほとんどです。

解決策を示す

応募先の企業が直面する問題を明らかにした後は、その解決策を示す番です。ここでは、ユーザーエクスペリエンス・ライティングのコンセプト、どうやって問題を解決するのか、顧客だけでなくビジネスにとっても多くの利点があることを説明します。

どんなプロダクトにも学習曲線があります。UXライティングは、プロダクトがその目的を十分に果たし、ビジネスが成果を上げるために、新規ユーザーと既存ユーザーの両方をガイドする役割を果たします。ビジネスにおいて絶対に避けなければならないのは、潜在顧客がサービスを利用する際に、プロダクトの使い方を理解できずに、見捨てられたような気持ちにさせてしまうことです。

このような「見捨てられ感」は、たいていプロダクトのユーザーインターフェースのマイクロコピーが、役に立たない、あいまい、わかりにくい場合ときに起きます。プロダクトはやがて見放され、潜在顧客であった人々は機会損失となり、さらに一部の潜在顧客はその企業のサービスを利用することを躊躇してしまうと考えてよいでしょう。

しかし、ユーザーエクスペリエンス・ライティングを取り入れれば、プロダクトのUI上のすべての言葉が明確になり、ユーザーにとって役立ち、人間味あふれるものになり、ユーザーはプロダクトの機能をシームレスに使いこなすことができるようになります。このような顧客はコンバージョンまで導かれ、高い直帰率、低い回転率などのビジネス上の問題を解決することができます。

これは、UXライティングによるビジネスの問題解決法の1つです。その他にも、一貫したブランドボイスの開発、ユーザーエンゲージメントの向上など、さまざまな効果があります

架空の企業、トラベライトのピッチポートフォリオの例

さらに、そのビジネスに与えるUXライティングの影響を個別に説明することもできます。もし可能ならば、UXライティングが他のプロダクトに与える影響や、世界中でUXライターのニーズが高まっていることを裏付けるデータを差し込みましょう。その狙いは、問題解決の手段として、UXライティングの概念を紹介することです。

短く、面白く、要点を絞って話すことを忘れないでください。

私は(ポートフォリオの中で)「顧客ファースト」という言葉を使いましたが、これはビジネスとの親和性が高く、より理解しやすいと思ったからです。常に彼らの言葉を使うように心がけましょう。

モックアップを見せる

UXライティングについて話した後は、実際にそれがどのようなものかを見せる必要があります。このステップでは、相手のプロダクトとの比較対象として、あなたのバージョンを提出します。あなたはプロダクトを作り直す大変な仕事をしたのですから、あとは、自らの作品に語せる番です。そのためには、あなたのバージョンの画像だけを見せるか、個々の画面のビフォーアフター画像を比較するとよいでしょう。

私からのアドバイス:作品全体を見せるのではなく、あくまでティザーとして見せること。あなたのバージョンが実装されたのに、雇われることも報酬をもらうこともなかったら、大変なことになりますから。

事実で裏付ける

「オーケー……見栄えをよくするために文章を変えたけど、実際どうなんだろう?いい文章を書くためだけに人を雇う必要があるのかな?」

未来の雇い主の頭には、きっとこのような考え、あるいは少なくとも似たような考えが浮かんでいることでしょう。結局のところ、その会社は「UXライティング」というものに馴染みがないのです。

そこで、このステップでは、UXライティングが優れた文章以上のものであることを納得させるのです。事実、UXライティングはインパクトある仕事であり、多くの労力がかかります。ですから、あなたの探偵ぶりを発揮して、裏付けとなる事実を探し出してください。あなたならできます。

  • UXライティングを取り入れた結果、パフォーマンスが向上したプロダクトの情報を示す。
  • UXライティングが、コンバージョン率の向上、回転率の向上、またはロイヤルカスタマー層の拡大に繋がったという事実を示す。例えば、マギー・スタンフィル(GoogleのUXディレクター)は、2017年のGoogleカンファレンスで、ホテルの部屋を予約する画面の2つの単語を変更した結果、ユーザーエンゲージメントが17%増加したことを示しました。
  • プロダクトの別バーションのユーザーテストを行い、その結果をレポートで共有する。ボビー・ウッドによるコンテンツテストとリサーチに関するこのウェビナーでは、デザインの有無にかかわらずコンテンツをテストする方法と、その結果を信頼できる方法で示す方法を解説しています。
  • ある言葉をマイクロコピーに採用するまでのプロセスを簡単に説明する。

UXライターを雇うメリットを裏づける事実を伝えることで、企業は2つの選択肢に直面します。お金を稼ぐか、お金を失うかです。

このステップは、ピッチ・ポートフォリオの中で最も重要な部分です。なぜなら、応募先の企業に、「UXライティングは投資する価値がある」と説得する、あなた自身の手腕にかかっているのですから。

自身のサービスを売り込む

すべてのハードワークを終えた今、残るは自分自身を売り込むことです。プロフィールや職務経歴書、自分のWebサイトや、いつものUXライティング・ポートフォリオへのリンクを追加しましょう。まだポートフォリオを作成していない場合は、適切に構成するためのヒントがあります。

UXライターのジョエル・レミーは、自分のスキルをアピールするために、雇用主があなたのポートフォリオを見る際に注目する3つの重要ポイントを挙げています。あなたのチャンスを広げるために、ぜひ取り入れてみてください。

これで準備完了です。あなたのピッチポートフォリオは、狙いの企業に提出する準備が整いました。頑張ってください!



執筆者プロフィール:ウゾマ・イベクウェ(Uzoma Ibekwe


ウゾマ・イベクウェは、TweakCentric SolutionsのUXライターです。データドリブンな言葉を用いて、人間らしく、役に立つプロダクトを設計しています。
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