
ChatGPTが登場した今、ロレム・イプサムを終わらせることができるか?
Feb 17, 2023この記事はUX Collectiveのブログ:Now that ChatGPT is here, can we please let lorem ipsum die?の翻訳転載です。著者のクリストファー・ウォンさんの許可を得て公開しています。

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私はAIがUXデザインを殺すとは思っていませんが、これでやっと馬鹿げたデザインの慣習を終わらせることができると思っています。
もしご存じなければ、ChatGPTは、GPT-3と呼ばれる大規模言語処理モデルの開発元であるOpenAI社によって作られた高度なチャットボットです。ユーザーは、あらゆるトピックについて自由回答(オープンクエスチョン)形式の質問をすることができ、その質問に対して個別に生成された回答を得ることができます。
スクラムについてChatGPTが生成した回答
しかし、その騒動がようやく落ち着き、UXプロセスへの取り入れ方を模索する人が増えてきた今、次第に明らかになりつつあることがあります。それは、「ロレム・イプサム(ダミーテキスト)」をいまだに使っていることに、もはや何の言い訳もできない、ということです。
その理由を語るには、まず、なぜUXにライティングが重要なのかを理解する必要があります。
UXデザインにおけるライティングの重要性
私が実感していることのひとつは、すべてのデザインの背後には、ビジネス上のニーズがあるということです。あなたはユーザーのニーズに基づいてリデザイン(またはデザイン)するかもしれませんが、そこに予算やリソースが当てられるのは、ビジネス側もそれを気にしているからです。
(新規顧客を増やすために)ユーザーが求める新機能を作る場合も、(ユーザーの囲い込みのために)ユーザーが嫌う箇所を修正する場合も、UXに予算とリソースが与えられるのは、ビジネスとユーザーの両方を支えるためなのです。
デザイン要素はユーザーの行動や心理を重視するかもしれませんが、使用するテキスト要素はビジネスニーズに直結していることが多いものです。
「デモを入手する(Get a Demo)」と「デモを予約する(Schedule a Demo)」のように、シンプルな単語の変更がユーザーにとって大きな意味を持つことがあり、64%のユーザーに「予約する」が好まれたのはそのためです。
シンプルな言葉の変更が、予想以上に重要な意味を持つことがあります
しかし、このような役割をUXデザイナーが担うことはほとんどありません。もし、チームに熱心なUXライターがいるのであれば、おそらく不要でしょう。しかし、それ以外のほとんどの場合、UX担当者がこの役割を担うのが最も適しています。
その理由は2つあります。デザインの後半までコンテンツを後回しにしていると問題が発生するからです。また、チームメンバーにとっては「当たり前」のことが、一般の人にとっては見慣れないものであることに気付かない可能性があります。
出典:XKCD
しかし、あなたはまだ躊躇しているかもしれません、なぜならUXライティングの勉強をどのように始めたらいいのかわからないからです。幸いなことに、ChatGPTはあなたが最も気にかけていること、たとえば最初のデザインのイテレーション(反復)や 下書き原稿の作成を手助けしてくれるでしょう。
ChatGPTは、プロトタイプを含め、最初の下書きを作成するための強力なツールです
私はChatGPTにかなり懐疑的です。なぜなら、世の中の人々は3-6ヶ月ごとに新しいテクノロジーをゲームチェンジャーとして過大評価するのが好きだからです。
しかし、ChatGPTが最も得意とするのは、初稿のブレインストーミングとアイデア出しです。これは、あなたのデザインのための最高の文章パートナーになります。プロダクトコピー、ボタン名、ヘッダーなど、ChatGPTはあなたのデザインに挿入する複数のオプションを生成することができます。

ChatGPTで生成されたランディングページのサンプルコピー
ですから、ロレム・イプサムを使い続ける理由はないのです。ロレム・イプサムをコピーするのと ChatGPTのプロンプトを書いてコピーするのが同じ時間なら、わざわざ劣った方を使う理由はないでしょう。
あなたは今、次のようなたくさんのややこしい疑問を抱えているのではないでしょうか。
- AIからコピーすることの倫理や剽窃のチェックはどうなっているのだろう?
- 他人の仕事を邪魔しているのでは?こんなことをしたら怒られるのではないか?
- 文章が変になったらどうしよう?ChatGPTが不正確なものを書いたらどうしよう?
- その他諸々
あなたが現行のデザインとテキストのままでWebサイトを公開するのなら、これらは妥当な質問です。しかし、実際はそうではないでしょう。あなたはプロトタイプを作成しているのです。プロトタイプを作成する際には、次の2つのことを行う必要があります。
- チームの他のメンバーやユーザーからフィードバックを得る
- コンテンツによってデザインを変更する必要があるかどうかを確認する
ChatGPTは、この2つのタスクを支援するものであり、これは重要です。
ステークホルダーがロレム・イプサムに意見することは(ほとんど)ない
プロトタイプを作るのは、アイデアを検証するためだけでなく、ステークホルダーにプロジェクトのイメージを同じように視覚的に理解してもらうためでもあります。これにより、彼らは自分の目で見たものに対して率直にフィードバックをすることができるのです。
出典:UX Magazine
テキストも同じように扱われるべきです。テキストパターンとしてロレム・イプサムを使用することは、「ここにプレースホルダー画像を入れる」と言うのとほぼ同じことです。ステークホルダーは、基本的にそこに表示されているものを無視して、話を進めます。
しかし、サンプルのコピーを見せれば、誰もが話し始めるようになります。たとえそこに書かれているコピーに不満があったとしても、実物らしいものを入れることで、必ず何かを学ぶことができるのです。例えば、ボタンのラベルを変更する必要があることを学ぶかもしれません。なぜなら、ボタンは他のプロダクトとの一貫性を保つ必要があるからです。
このように、自分のアイデアを人に見せることで初めて見えてくるものがあります。ロレム・イプサムの代わりに何を入れるかを想像するよりも、その場にあるテキストに対してコメントする方が、はるかに簡単なのです。
これは、私たちデザイナーが力を発揮できる部分でしょう。
ChatGPTは、ロレムイプサムに代わる、より生産的な手段
私は文章を書くのが好きで、だから記事や本、ニュースレターを書いています。しかし、ライティングがすべての人に向いているわけではないことはよくわかっています。
私はこれまで、ロレム・イプサムに代わるものとして、他のテキスト代替案(スケッチコピーなど)について話してきましたが、ChatGPT はこの流れを変えました。AIによるライティングは、機械の強み(60年前にポール・フィッツが定義)に焦点を当てているため、人間よりも初稿が上手に書けるのです。スピード、パワー、そして複製性です。
ポール・フィッツによる、人と機械の両方の強みのリスト
それは、UXライティング(またはライティング)に取って代わるものではありません。なぜなら、あなたが公開する文章は、あなたの初稿ではないからです。あなたの判断、批判的思考、そしてリテレーションが依然として必要なのです。しかし、あなたがデザインした成果物についてステークホルダーに意見を求め、フィードバックを得ようとするのであれば、デザイン要素だけで終わらせないでください。ChatGPTで生成したサンプルテキストを含めて、それに対するフィードバックも得るようにしましょう。
そうすることで、コンテンツとデザインが最後の瞬間まで分断され、問題が生じるのを防ぐことができます。もしあなたが、デザインにどんなテキストを入れるべきか悩んだことがあるなら、ChatGPTがもたらすパワーをぜひ検討してみてください。