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The maturing content discipline

成熟するコンテンツ分野

翻訳記事 Jan 26, 2022

この記事はLinkedInの The maturing content disciplineからの翻訳転載です。著者のジョン・コリンズさんの許可を得て公開しています。

私は約20年間、コンテンツの領域で仕事をしてきました。その間、さまざまな変化を見てきましたが、中でも特にワクワクする変化が、コンテンツという分野が成熟してきていることです。

今、コンテンツの分野では4つの主な仕事(役職名ではないことに注意)を認識できる段階にきていると思います。この4つの仕事についての説明や、解説、ニュアンスの違いはいずれ紹介するとして、まずは個人が直接関わる状況について整理したいと思います。

思い出を辿る

数年前、私はソフトウェア会社で働いていました。表向きにはテクニカルライターでしたが、私がやっていたのは、テクニカルライティングのカンファレンスに参加するような優秀な人たちが普通はやらないようなことでした。

私は、ただ成果物としてコンテンツを量産するのではなく、コンテンツの全体像や他のコンテンツとの関連性を考えている人は他にもいるに違いないと考えていました。また、ユーザーインターフェース(UI)のテキストやマイクロコピーを書くことだけに注力している人たちも他にいるはずだと考えていました。

しかし、しばらくはそうした人たちを見つけることができませんでした。(「マイクロコピー」という言葉を発見したときの「おお、これには名前があったんだ!」という嬉しい驚きは、今も覚えています)。

ともあれ、そうこうするうちに、私はコンテンツ戦略に出会いました。コンテンツ戦略がコンテンツの全体像について考えるものだというのはわかったのですが、私にはそれが、UIテキストやマイクロコピーについて深く考えているようには思えませんでした。

数年が経ち、私は会社を移りました。ユーザー向けドキュメントのライティングを続けていましたが、製品デザインチームの一員だった私の仕事の中心は、実際にはUIテキストとユーザーエクスペリエンスにありました。「ライター自身がデザインに使われる文字数を減らすように提案してきたぞ」と言う時のみんなの表情は、なかなかいいものでした。

サラ・ウィンタースが出版した『Content Design』は、私が長い間取り組んできたコンテンツ制作のもうひとつの側面を扱った本です。

この業界において、私のようなタイプの仕事をする人の多くはコンテンツ戦略のチームで働くか、あるいはコンテンツデザインのチームで働いていました。

ですが、そこには食い違いがありました。

当時、私の仕事はコンテンツ プラットフォームの設計に移り始めていました。そこで、クルース・サンダースのコンテンツ エンジニアリングに関する著作を見つけたのですが、それには私の仕事の変化に共鳴するものがありました。

それから、デブオプス(DevOps)やITオプス(ITOps)、ビズオプス(BizOps)、デザインオプス(DesignOps)など、いわゆる「オプス」群の相次ぐ登場に遅れて、コンテンツ オペレーション、またの名をコンテンツオプスContentOps)が出現したのです。

コンテンツオプスが話題になっているのを聞いた時は、「これはない」と思いました。大げさに思えたのです。コンテンツというバズワードと「オプス」というバズワードがひとつになっただけだと思ったのです。

ですが、私は何が起きているのか考え始めました。そしてそこで、コンテンツの分野が成熟していることに気づいたのです。

コンテンツにおける4つの新たな仕事

これらの仕事は、すでに何年も前からさまざまな役職に偽装されていたもので、今ようやく、どうすればこれらの肩書きと仕事の整合性が取れるのか見えてきたところだと思います。

この4つの仕事が揃わなければ、ユーザーにコンテンツを届けることはできません。

コンテンツデザイン

コンテンツデザインの仕事は、ユーザーのニーズを理解し、そのユーザーのニーズを満たすコンテンツを作成、またはキュレーションすることに重点を置いています。

「コンテンツ」には、文章だけでなく、画像やインフォグラフィック、動画、コード、音声なども含まれます。

私がこの6年間働いているAtlassianにはコンテンツデザイナーがいますが、他の肩書きでも、この仕事をしている場合はあるでしょう。サポートエンジニア、コンテンツマーケター、UXライター、テクニカルライターなどがその例です。

コンテンツデザインについてよく知らない方は、サラ・ウィンタースの著書『Content Design』を手に取ってみてください。

コンテンツ戦略

コンテンツ戦略とは何かについて、業界では曖昧な点が多くあります。このブログ記事では、ごく基本的な定義に留めておきましょう。

コンテンツ戦略は、コンテンツがどのようにユーザーのニーズを満たすかを考えるという点ではコンテンツデザインと同じですが、より高度で体系的なレベルでユーザーのニーズを捉え、同時に、ビジネスのレンズを適用します。

コンテンツ戦略は、ユーザーのニーズとビジネスゴールの両方に応えるものでなければならず、その上で有意義で、成果を達成でき、スケールできるコンテンツを推進しなければなりません。ユーザーのニーズだけでも、ビジネスゴールだけでもダメなのです。

コンテンツ戦略は、言うなれば戦略的、コンテンツデザインは戦術です。

例えば、コンテンツ戦略は、会社がユーザーにアラカルト式ではなくバンドルで購入してもらいたがっていることに気づき、コンテンツがその目標を達成するのに役立つと考えるかもしれません。それに対してコンテンツデザインは、そのコンテンツがどうあるべきかを考えます。

コンテンツ戦略の本はたくさんありますが、私が最初にお勧めするのは、サラ・ワクター=ボエッチャーの『Content EverywhereStrategy and Structure for Future-Ready Content』です。

コンテンツ オペレーション

コンテンツオプス(ContentOps)は、どの情報源に目を向けるかによって、さまざまな分野をカバーしています。

4つの新たなコンテンツの仕事という文脈で言えば、コンテンツ オペレーションの仕事とは、コンテンツをコンテンツ管理システムに取り込み、ユーザーに提供する役割を担うと考えられます。実際のコンテンツというよりは、人材やプロセス、さらにはワークフローや品質、ガバナンス、再利用などに関する目標を達成するのが主な仕事です。

私はコンテンツ オペレーションに関する本はよく知らないのですが、最も引用されているのは、『What is ‘ContentOps’ and why should you invest in it?』です。この本についてはいくつか疑問点もありますが、コンテンツオプスの領域はきちんと描かれています。

コンテンツ エンジニアリング

そして、最後に紹介する新たなコンテンツの仕事がコンテンツ エンジニアリングです。業界の理解では、おそらくこれが一番最近に出てきた仕事でしょう。

また、私のやっていることについて多くを説明してくれる仕事でもあります。

(クルース・サンダースの定義によれば)コンテンツ エンジニアリングとは、コンテンツの形、構造、応用を組織化する活動です。

「コンテンツの形、構造、応用を組織化する」というのは、ちょっと抽象的なので、サンダースの『What is Content Engineering?』から、コンテンツ エンジニアリングの7つの分野を紹介しましょう。サンダースは7つの分野として、モデリング、メタデータ、マークアップ、スキーマ、タクソノミー、トポロジー、グラフを挙げています。

重要なのは、コンテンツ エンジニアリングが、WordPress、Contentful、Drupal、UI strings、Google Docs、Confluenceのページ、または(許されざる)PDFなど、あらゆるコンテンツシステムで行なわれているのを理解することです。

コンテンツ エンジニアリングはどのように展開されるか

私の図では、各仕事の円が重なっていることにお気づきでしょうか。仕事と仕事の間の領域は不明瞭です。これは意図的なものです。

小さな会社や小さなプロジェクトでは、ひとりでこれらの仕事をすべてこなします。4つの仕事を同時に、しかも無意識にこなしている場合もあるかもしれません。

しかし、大企業では、UXライター、コンテンツデザイナー、デベロッパー コンテンツデザイナー、コンテンツアーキテクト、ナレッジグラフ アーキテクト、タクソノミスト、オントロジスト、などなど、かなり特化した職種が作られることがあります。

肩書きに着目したいわけではないのですが、ここでは、こうした仕事において専門化が進み、コンテンツが成熟していることを示唆していると思います。

また、私の経験上、大きなプロジェクトになると複数の人が仕事を分担することになります。

大規模なプロジェクトでは、ワークフローとガバナンスに特化した担当者が必要になるかもしれません。この担当者は、コンテンツ エンジニアリングの担当者と協力して、ワークフローをサポートするコンテンツツールを構築するかもしれません。同時に、コンテンツ戦略の担当者が コンテンツ オペレーションの担当者と協力して、デザインシステムやコンテンツ管理システムの一部となるスタイルガイドを決定することもあります。

これらはすべてコンテンツの専門家にとって重要なことですが、大規模プロジェクトや大企業で、ひとりの担当者に求めるのは大変です。

影響力を拡大する

コンテンツ担当者は、「ただのライター」に分類されることがよくあります。そのような分類が見当違いであるとはわかっていても、やはりこれは辛い。

自分がもたらす価値を示せないために、弱い立場にあると感じている人や、職場で解雇されるかもしれないと感じている人もいるでしょう。4つの仕事のコンセプトと私の図を頼りにすれば、自分の価値をもう少しうまく表現できるかもしれません(役に立てばいいのですが!)

あなたの有用性はいろいろあるはずです。これは、あなたの目標や会社、上司によっても違ってきます。

例えば、あなたの肩書きがUXライターだとしましょう。その場合、コンテンツデザインに携わる立場と言えるでしょう。でも、賭けてもいいですが、ほとんどのUXライターは、コンテンツ戦略、コンテンツ オペレーション、コンテンツ エンジニアリングもやっています。

すぐにでも、自分が「ただのライター」ではないことは示せます。あなたは、4つの仕事が交わるちょうど真ん中あたりにいるのです。

(たとえ、これらすべてをやっていなくても、コンテンツデザインの仕事と他の仕事が重なっているところは、他にもまだ6つ、可能性があるので、それを指摘できます。)

他の仕事や、その交わりについても、同じ考え方が当てはまります。

焦点を絞る

もしかすると、あなたは今、すべてはやりたくないというキャリア段階にいるかもしれません。専門性を高めたい。その場合は、重なっている領域から専門領域に移ればよいでしょう。

ここでも、あなたの有用性はいろいろで、あなたの目標や会社、上司によっても違ってきます。

私自身、ここ数年はこの方法で動いていて、正式に「コンテンツデザイナー」から「コンテンツアーキテクト」(私はこれをコンテンツ エンジニアリングの仕事に位置づけています)に移りました。

そこで、焦点を絞る例をあげると、あなたはこれまですべての仕事が交わる中心にいました。しかし、あなたは文章を書くのはあまり好きでなく、戦略に興味があります。この場合、コンテンツ戦略に特化した仕事に移ることになります。私はこれまで、言葉を扱うのがそれほど巧みでないコンテンツ戦略家を少なからず見てきました。

あるいは、ただ言葉を扱うのが好きなので、コンテンツデザインに特化したライターに移りたいのかもしれません。アクセシビリティやローカライゼーションの専門家など、活躍の場はきっとあります。

非コンテンツ系の人へ

「自分はコンテンツ担当者ではないけれど、これらの仕事に関連する仕事をしている。ここにどうなじめばいいのか?」と考えている人がいるかもしれません。

そう思うのは当然です。これらのコンテンツの仕事をサポートする仕事、あるいはスキルセットは数多くあります。UXデザイナー、サービスデザイナー、開発者、アーキテクト、プログラムマネージャー、プロダクトマネージャー、そしておそらくその他多くの人が、4つのコンテンツの仕事に当てはまるか、それに似たような仕事をしていることでしょう。ここで紹介した4つのコンテンツの仕事は、あなたたちを排除したり軽視したりするものではなく、スコープマネージメントに役立てて、私たちコンテンツ担当者の仕事を明確にするためのものなのです。

コンテンツ担当者は、あなたがここにいてくれることを嬉しく思っています。あなたがいなくては、私たちはやっていけません。

でも、でも......。

正直に言うと、私はまだこの件に関して考えをまとめ中です。でも、何かあると思うんです。2020年10月にこの考えの一部をシェアし始め、それ以来、いくつかの講演にこの内容を盛り込みました。参加者からは、「参考になった」というフィードバックをいただきました。

私はそれを出版するつもりでまとめていて、今、まさに執筆中です。

Twitterを始め、ネットで私たちの仕事についてたくさんの不安の声が上がっているのを見て、今これを発表すれば、こうした議論に役立つと思いました。 

これが個人のキャリアアップの役に立てば私もとても嬉しいし、業界全体として、ここで説明しようとしたことに何らかの価値を見出すことができれば、素晴らしいだろうと思います。

この記事に対する批判はありませんか?きっとあるはずです。ぜひ思慮に富んだ建設的なご意見をお寄せください。そして、私たちがコンテンツという分野を成熟させ続けられるかどうか、考えていきましょう。

翻訳:Kanako Noda


執筆者プロフィール:ジョン・コリンズ(John Colins

コンテンツ業界で約20年のキャリアを持つジョン・コリンズは、ソフトウェア開発会社Atlassianのコンテンツアーキテクト兼コンテンツエンジニアです。コンテンツデザイン、UXライティング、テクニカルライティング、ローカリゼーションなど、多岐にわたる領域で経験を積んできました。
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