週刊ニュースレターを読む
ブログ一覧に戻る
UXライティングにおけるローカリゼーションは重要か?

UXライティングにおけるローカリゼーションは重要か?

翻訳記事 Nov 14, 2022

この記事はDANA Product & Techのブログ: Localization in UX Writing: Is It Important?の翻訳転載です。著者のガブリエル・ラトリさんの許可を得て公開しています。

翻訳が不十分な本を読んだことはありますか?

はいの場合、ページを次々めくるときにはどんな気持ちがしますか? 読み心地が良くないので、最初の章を読み終えることができないかもしれませんね。

書籍を翻訳する目的は、より多くの読者に本を読んでもらい、楽しんでもらうことです。拙く翻訳された本だと、読者が本全体を読み終えるまで興味を持ってもらえません。これは、(書籍のおすすめサイトである)Goodreads での悪いレビューにつながります。

拙く翻訳された本を読むことは、悪いプロダクトを使うようなものです。質の悪い翻訳を読まされるというのは、すなわち不快な読書体験です。お粗末で不正確、かつ固い文章を読みたがるような人はいませんよね。

まずい文章は、ユーザーを混乱させ、あなたが伝えたいことを誤解させてしまいます。これは、書籍とすべての UXプロダクトの両方に当てはまります。 UXプロダクトにおいては、下手な文章はユーザーに不快な体験を与え、プロダクトを使用できなくさせてしまいます。ローカリゼーションが、ライティングを通じた最高のユーザーエクスペリエンスを提供するための鍵となる理由はここにあります。

ローカリゼーションと翻訳の間には微妙な境界線があります。テキストをある言語から別の言語に単純に変換するのが翻訳です。文法とスペリングの規則は、翻訳においては重要であると考えられています。一方、ローカリゼーションはそれ以上のものです。ローカリゼーションでは、プロダクト全体を別の言語に変換します。コンテキストに適合している限り、文法とスペリングの規則を曲げることも少なくありません。

UXライティングにおけるローカリゼーションが重要なのは、それがユーザーとのつながりを可能にするためです。ユーザーは、実際にあるプロダクトを使用したいと思う前に、そのプロダクトにつながりを感じる必要があります。

インドネシアのユーザーに合わせて適切なローカライズが必要であることはわかっています。しかし、それはなぜなのでしょうか?

その理由は、インドネシアでは、ほとんどの人が英語に慣れていないからです。彼らは日常会話にインドネシア語やその他の現地語を使用します。ほとんどのインドネシア人は、自分より年上の人と話すときは、フォーマルなインドネシア語を使用します。しかし、友人とコミュニケーションをとるときは、くだけたインドネシア語を使用します。

この文化的な違いにより、英語からインドネシア語へのローカライズは、非常に困難なものとなります。カジュアルすぎたりフォーマルすぎたりすることで、メッセージを理解できないユーザーが出てくるのは困ります。では、実際にはどうすればよいのでしょうか?

コンテキストを理解する

ローカリゼーションと翻訳の主な違いはコンテキストです。翻訳により、プロダクトが意味不明なものになってしまわないように、ライティングの中にコンテキストを含める必要があります。コンテキストとは、ローカライズだけでなく、UXライティング全般において重要なものなのです。私たちは、コピーの機能と、そのコピーがいつどこに表示されるかを理解する必要があります。コンテキスト自体を理解すれば、ローカライズははるかに簡単になります。

専門用語、スラング、イディオムの使用を避ける

ユーザーとうまくコミュニケーションをとるためには、言語的にインクルーシブである必要があります。専門用語、スラング、およびイディオムは、ある言語ではクールに見えるかもしれませんが、別の言語では、混乱を招き、あいまいになることがあります。また、心に留めておくべきなのは、フォーマルなインドネシア語はくだけたインドネシア語とは異なるということです。 UXコピーを作成する場合は、単純明快な語彙が最適です。

一貫性を保つ

ユーザーがプロダクトを使用するときに混乱を招かないよう、UXライティングの一貫性は必須です。これは、アプリやウェブサイト全体で一貫した言葉を選び、使用する必要があるということです。

長い一日の後に、ローファイ・ミュージックのプレイリストを聴きながらゆったり本を読みたいという状況を想像してみてください。突然、プレイリストがヘッドバンギングしながら聴くようなヘヴィメタルの再生を開始します。その結果、あなたは大いに驚いて、本への集中力を失う可能性があります。なんだかすごく間違っているように感じますよね。それは一貫性が失われたときの例です。

UXコピーにおける一貫性のなさは、ユーザーを混乱させる可能性があります。彼らは、そのしっくりこない何かが何なのかを理解するために、余計に頭を使う必要があります。

だから、私たちはライティングの一貫性を保たなければなりません。そのために多くのことができますが、その中のひとつは、常にプロダクトのボイスとトーンを UXコピーに適用することです。たとえば、あるプロダクトには、話し言葉的で親しみやすいトーンがあるとします。次に、私たちのライティングがこのボイスとトーンに当てはまるかどうかを確認しなければなりません。これにより、UXライターは効果的なローカリゼーションプロセスというアドバンテージを得ることができます。

ジェンダーニュートラルな代名詞を使用するか、まったく使用しないようにする

インドネシア語にはジェンダーニュートラル(性別において中立である)な代名詞がありますが、英語はそれとは対照的に、性別固有の代名詞を使用します。英語で第三者を指すときは、‘he/she’を使います。一方、インドネシア人は‘dia’を使って第三者に呼びかけます。 ‘Dia’は、男性と女性の両方に使用されるジェンダーニュートラルな代名詞です。

‘my’やyour’などの所有代名詞を使用すると、ユーザーや UXライター自身が混乱する可能性があります。一部のアプリでは、my’ (「マイ プロフィール」、「マイ プレイリスト」、「マイ フレンド」など) を使用して所有権を強調し、よりパーソナライズされたものにしています。より話し言葉的に、 ‘your’ (「あなたのプロフィール」、「あなたのプレイリスト」、「あなたの友達」など) を使用するアプリもあります。

こういったスタイルの決定はプロダクト自体に依存するため、正解・不正解はありません。ただし、所有代名詞の使用法は一貫している必要があります。一貫性がないと、デザイナー、開発者、ユーザー、さらにはライター自身にとっても、UXコピーが疑わしくあいまいなものになってしまいます。

代名詞は、ローカリゼーションプロセスでは混乱を招くため、できる限り使用しない方がよいでしょう。

プロダクト向けのライティングをローカライズする方法がわかったので、これらの例を見て、それを掘り下げてみましょう!


検索バー (英語とインドネシア語)


このコピーは、デジタルウォレットアプリDANA の機能のひとつである Nearby に表示されるものです。この機能は、ユーザーが自分のいるエリアの近くで利用可能な DANA 加盟店を探すのに役立ちます。

では、検索バーを見てみましょう。ほとんどのアプリや Web サイトでは、検索バーのコピーに「検索」と書かれています。良い言葉の選択ですが、もっと良くすることができます。どのように?

私たちは、戸惑っている友人を見ると、「何か探していますか?」またはインドネシア語でlagi cari apa?’ のように尋ねて、手助けを申し出ます。Looking for something?’(英語)やLagi cari apa nih?’(インドネシア語)のような文を使用することで、この機能を使用しているユーザーは、検索バーが探しているものを見つけるのに役立つと感じるでしょう。

また、「何か探していますか?」という文を検索バーで使用することには、話し言葉的なトーンを強調する目的があります。インドネシア語では、Mencari sesuatu?’ またはApakah kamu / Anda mencari sesuatu?’ と翻訳されます。

この翻訳は、インドネシア語を話す人にとってはフォーマルすぎるように聞こえますが、それでも話し言葉的なトーンには合っています。ここで私たちができることは、‘Lagi cari apa nih?’にローカライズすることです。より親しみやすく、ユーザーとつながることができます。

ローカリゼーションを行う際に覚えておくべきもうひとつのことは、文字数または単語数です。インドネシア語は英語に比べて文字数が多い傾向にあります。たとえば、英語で複数の単語を表すには、各単語の末尾にs’を追加するだけです (friends, cards, placesなど)。インドネシア語では、ダッシュを使用して複数の単語を2回書きます (tempat-tempat、teman-teman など)。

これらのボタンを見てください。


「すべて表示」ボタン (インドネシア語)


「すべて表示」ボタン (英語)


これらのボタンの目的は、ユーザーがすべての詳細またはコンテンツを表示できるようにすることです。英語版を見てみると、VIEW ALL’は7文字、一方インドネシア語版のLIHAT SEMUA’ は10文字と、3文字長くなります。これは、ボタンのサイズを調整する必要があることを示しています。これを行うには、UXライターはUXデザイナーと協力する必要があります。ローカリゼーションにおけるコンテキストを理解することは、コピーだけでなくプロダクト全体のUXを改善するのに役立ちます。

結局、ローカリゼーションはUXライティングにおいて重要なのでしょうか?

当然です。 UXライターとして、UXコピーをローカライズすることは重要です。 UXライティングは、正しい文法と語彙で書くだけではありません。また、コンテキスト全体を理解し、ユーザーが実際に理解し、つながりを感じる言葉を使用することによって、ユーザーがプロダクトとつながれるようにします。これにより、UXライター自身も含め、誰もが幸せな体験をすることができます。

最後まで読んでくださってありがとうございます。この記事が、UXライティングについての理解を深めるのに役立つことを願っています。

翻訳:Chieko Kubo



執筆者プロフィール:ガブリエル・ラトリ(Gabrielle Ratri

ガブリエル・ラトリは、デジタルウォレットサービスを提供するDANA IndonesiaのUXライターです。UXチーム、マーケティングチームと協働しながら、モバイルアプリのUXライティングを行なっています。
LinkedIn