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Writing is Desigining 著者2人へのインタビュー

『書くことはデザインすること』の著者に聞く UXライティングを始めるためのアドバイス

May 12, 2021


今週のインタビューは『Writing is Designing (書くことはデザインすること』の著者、マイケル・J・メッツさんとアンディ・ウェルフルさんです。これからUXライティングを始めようとしている人たちに向けてのアドバイスをいただきました。

マイケルさん、アンディさんこんにちは。お二人はそれぞれUpwork、Adobeでコンテンツデザインをご担当されていますよね。どのようにUXライティング、コンテンツデザインのキャリアを歩み始めたのですか?

マイケル:私は最初、とある非営利団体のライター兼フォトグラファーとして働き始めました。この団体はウェブサイトのコンテンツ制作のお手伝いを探していたのですが、私はすぐに、この団体が必要としているのはコンテンツではなくて、ウェブサイトやアプリ、そのほかのチャネルをより効果的に運用することだと気が付きました。

そこから、できる限りのことを自分で学び始めました。クリスティーナ・ハルヴォーソンの「Content Strategy for the Web」が最初に読んだ本で、自分がユーザー・エクスペリエンス(UX)の分野に情熱を持っていることを実感したんです。

そんなこともあり、コピーのテストやリサーチ方法、ファシリテーションなどの手法を実践するようになりました。UXライティングに力を入れるようになったのは、そのあとにテック系の会社に転職してからです。

アンディ:マイケルと同じように、私も新聞ジャーナリズムの学校に通っていましたが、最終的にはそのキャリアを捨てて、非営利団体で働いていました。

私はいつも、文章とデザイン、それからテクノロジーが互いに交わる部分に魅力を感じています。キャリアを重ねていくうちに、SNS戦略、コンテンツ戦略、そして情報アーキテクチャの道へと進んでいくことになりました。



マイケルと同じように、私もたくさんの素晴らしい本を読みましたよ。クリスティーナの本のほかに、サラ・ワクター=ベッチャーの『Content Everywhere』やエリン・キッサンの『The Elements of Content Strategy』が大好きでした。

2014年には、Facebookのコンテンツ戦略チームの仕事を引き受けて、ベイエリアに来ました。UXライティングについて学び始めたのはその時からです。最終的には、自分で実践の場を設け、チームを立ちあげるためにAdobeに就職し、現在に至っています。

ありがとうございます。これからUXライティングを始める人に向けてアドバイスするなら、どんなことを伝えますか?

マイケル:もしあなたがすでにライター職で、UX中心のコピーライティングにキャリアシフトしていきたいなら、まずは一般的なUXの手法を学んでから、それをライティングの問題にあてはめる練習をしてみると良いでしょう。

たとえば、インタビューによるリサーチもそのひとつです、自分が担当しているインターフェースにおいて、ユーザーがどのような用語を使っているのか、あるいはその用語についてどのように感じているのかを把握するのに役立ちます。

それから、周囲にインパクトを示すことにも時間をかけましょう。ほとんどのポートフォリオは、誰かが書いた最後のバージョンのコピーをただ見せているだけですが、私たちの分野は結果がすべてです。ビジネスやユーザーにとって、どんなメリットがあったのかを示すことが大切です。

アンディ:マイケルの素晴らしいアドバイスにくわえて、私はコミュニティへの参加をおすすめします。UXライティングのコミュニティは世界各国にあり、誰もが歓迎されます。それから「シェアする」素晴らしいカルチャーがありますね。

あなたの地元のミートアップイベントを探してみてください(行われていない場合でも、誰かふさわしい人を探して一緒に始めてみましょう!)。


それから、Content + UXのSlackコミュニティに参加してみてください。たとえば、仕事を探している場合や、新しい仕事に就いたばかりのときなどです。このSlackコミュニティは自分自身を見つめ直し、方向性を見出すのにとても役立ちます。


お二人の1日の仕事の流れはどのようのものでしょうか?また、現在のチーム構成や、取り組んでいるプロジェクトについてもお伺いしたいです。

マイケル:私は今、会社を設立しているところです。なので、1対1のミーティングやコーチングなどのマネジメント業務だったり、積極的な採用活動を行っています。それから、組織にいる人たちがより効果的にプロダクトの文章を書くためのツール作りにも取り組んでいます。

これは、自社のブランドボイスに合った文章を書くための簡単なチェックリストのようなものです。それから、これは最も大事なことですが、組織とのつながりを構築して、どこにニーズがあるのか、私のチームがどのような形で支援できるかを常に考えています。

アンディ:ミーティング!たくさんのミーティングですね。私自身は大手企業で8人のチームをマネジメントしています。1対1のミーティングやチェックインミーティングなど、いわゆる一般的なマネージメント業務をしていない時は、チームの成長や優先順位づけなど、チームが戦略を構築できるように働きかけています。

今は、デザインシステムのチームと連携をとっているコンテンツデザイナーと協力して、エラーメッセージを書くためのドキュメントやフレームワークを開発しています。チームの人員数やツールを改善したり、仕事のプロセスを円滑化できるように、私はいつもプロダクトリーダーを説得しているんです。


デザイナーとのコラボレーションする場合にはどのようなツールを使っていますか?またそのデザインツールを使うことにどんなメリットがありますか?

マイケル:Figmaのようなツールを使えば、ライターがプロダクトデザイナーと簡単にペアを組んで仕事ができるのでとても気に入っています。私たちのチームでもよく使ってますがFigmaは本当に素晴らしいです。それから、Miroのようなホワイトボードアプリは、簡単にビジュアル・シンキングができるようになるので、とても気に入っています。

アンディ:もちろんAdobe XDも使っています。これはFigmaやSketchによく似たプロトタイピングツールです。また、Dropbox Paperもよく使っています。これは、サクサク動作する共同作業用ツールで、文書の下書きを作ったりチーム間で共有ができます。

それから私のチームでは、Airtableもよく使っていますね。用語を集めたり、ファイルを整理したり、リクエストの優先順位を付けたり、いろいろなことに使っています。もちろん、ほかの多くのテック企業と同様に、Slackも毎日使っています。

個人的には、スケッチしたり、リストを書いたり、ぼんやりと落書きしたり、大事なことを忘れないように、仕事中は常に鉛筆と紙を使っています。


アンディさんは、オンラインのコラボツールだけでなく実際に手を動かして書くことも大切にしているんですね。では、UXライターがいない職場で働く人たちへアドバイスはありますか?



マイケル:コピーを改善するために、チームの仲間が参考にできるシンプルでお手軽なツールがあると良いでしょう。

たとえば、私たちの本にはエラーメッセージを作るためのフレームワークが掲載されています。このフレームワークは、エラーを避け、説明し、解決する方法に焦点を当てています。それから、ボタンのコピーの書き方に関するAtlassianのガイドラインのように、一般向けに公開されている素晴らしいリソースもあります。

アンディ:デザインチームに専任のコピーライターがいなくても、文章が役に立っているか、使いやすいかどうかを確認する方法はいくらでもあります。

デザインだけでなく、使っている言葉が一緒にアップデートされているかを確認してください。ユーザビリティテストを行って、ユーザーがあなたの言葉を理解しているかどうかを見るのです。ユーザーが何かを説明するときに使う言葉に耳を傾けて、その言葉をプロダクトに反映しましょう。

もしあなたがデザイナーで、何らかの形で文章を書く必要があるなら、私の友人のScott Kubieが書いた『Writing for Designers』をチェックしてみてください。


ありがとうございます。最後に、マイケルさんとアンディさんが素晴らしいと感じたコンテンツの事例を教えていただけませんか?

マイケル:最近だと、Monzoの利用規約ページ周りにシェアしています。法律用語を人間らしく表現するのはとても難しいのですが、Monzoは素晴らしい仕事をしていますね。

アンディ:私は、UX Writers Collectiveが発行しているニュースレターの「The Dash」が大好きです。たくさんの記事やインタビュー、業界にいる面白い人や役に立つ人へのリンクが掲載されていますよ。

(Special Thanks! インタビュー協力:Beatrix Holland)

 


今週のインタビュー:マイケル・J ・メッツさん と アンディ・ウェルフルさん

Upworkのコンテンツデザイナーのマイケル・Jメッツと、Adobeのコンテンツデザインマネージャーのアンディ・ウェルフルは、2020年に共著『Writing is Designing』を出版しました。二人はUXライティングの実践的なワークショップを開催しており、世界中のチームや個人に、デザインを通じてより良いプロダクトやサービスを構築する方法を教えています。
マイケル・J・メッツ アンディ・ウェルフル | 書籍 Writing is Designing