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ジョージーナ・レイドロウさんへのインタビュー

フリーランスのUXライターとして活躍するには?

インタビュー May 05, 2021

ジョージーナさんこんにちは。ジョージーナさんはメルボルンでフリーランスのUXライターとしてご活躍されているそうですね。今現場で気になっている変化や感じていることはありますか?

20年前、私はデジタル分野のコピーライターとしてキャリアをスタートしました。コンテンツが業界で真剣に扱われるようになり、それに応じてライターに報酬が支払われるようになったのは、これまでにない大きな変化です。今、この分野で活躍するのにとても良い時代だと感じています。

私は、新聞や雑誌が記者の数を減らしていた頃を覚えています。私たちの業界では、人員削減によって仕事が少なくなったり、料金が下がったりするのではないかと心配していましたが、テック系の優秀なライターに対する需要が増え続けていることは、本当に喜ばしいことです。また、この分野では、目立ちたがり屋になるのではなく、純粋に他のライターを助けようとする意欲があり、これもまた素晴らしいことです。

今感じていること。正直に言うと、ここだけの話ですが、ユーザーエクスペリエンスが爆発的に普及したときに、UXデザインの分野がやってしまったことでしょうか。私の経験では、UXライターが座って「奮闘記」や自分が取り組んでいることについて話しているポッドキャストを聞いたり、(どんな種類にせよ)文章の細かい部分についての記事を延々と読んだりすることには価値がありません。これ以上同じような道を歩みたくはないと思っています。

なぜなら時間の無駄にしか見えないからです。教養を身につけようと思って行うのではなく、単に読んだり聞いたりするだけのものであれば、暇つぶしの活動と捉えてください。

私たちに必要なのは、ライティングに関する名言やUXライティングのスーパースター的存在ではなく、個人としてもチームとしても、より良いライターになることです。つまり、自分の弱点を見つけて、弱点を改善するために意識して熱心に練習することです。そして、自分の仕事のプロセスに欠けている部分を見つけ、改善するための最善の方法を考えることです。

自分たちの「技術」を美化する傾向(私の著書では「技術」と呼ぶこと自体が美化であるとしていますが、皆さんごめんなさい!)を、私たちが一丸となって止められることを願っています。

どうもありがとうございます。フリーランスのライターとしてクライアントのチームに参加する場合、どのような仕事の進め方が一般的ですか?

クライアントや仕事の内容によって、本当にさまざまです。たとえば、いま仕事をしている大手企業では、ガバナンスの観点から契約前のレビュー期間が非常に長く、正式な提案書、保険、秘密保持契約などが必要です。無料のサービス(Googleドキュメントなど)を使って仕事をすることは許されません。

大手での仕事では、定期的なチェックインミーティングやスタンドアップミーティング(進捗会議)への出席が求められ、フリーランサーが果たすべき目標やKPIが書かれているのが普通です。

一方、私が一緒に仕事をするスタートアップ企業では、最初にZoomミーティングをしてから、その後、私が見積もりをメールで送って、翌日に仕事を開始することがあります。コミュニケーション方法ですが、案件の規模やプロセスに応じて、メールやSlackを使うことが多いですね。

もちろん、他の無料サービスを利用してコンテンツを共同制作することもあります。だから、本当に様々なことができます。フリーランスになってしばらくすると、変化への対応に慣れてきますし、大切なのは、プロジェクトを受注する際に起きうる変化を予測しておくことです。

例えばですが、新しい企業からの依頼をすぐに受注しようと思わないようにしています。フリーランスになったばかりの頃は、大企業からの契約を待っている間に、仕事を先延ばしにしてしまい後悔したこともありましたから、今ではよくわかります。


ライティングの際に、オーディエンスやユーザーを理解するために、どのようなリサーチを行っていますか?

通常、リサーチはクライアントに頼みます。クライアント側は徹底したリサーチ内容を私に提供できるはずですし、もしできないのであれば、そのための費用を別に支払う必要があります。

一般的に、クライアントはペルソナやセグメントに関する説明、プロダクトがすでに市場に出回っている場合はプロダクトの使用状況に関するデータを提供してくれます。ですが、これらのデータは絶対的なものではなく、あくまで補助的なガイドであることを忘れてはならないと思います。

オーディエンスやセグメントは常に変化していますから、制作したコンテンツをリリースするたびにテストや計測を行うアプローチが大切です。

では、コンテンツの効果をどのように測定していますか?

これは誰もが知りたがる質問ですが、答えは無数にあります。

ブログのコンテンツであれば、そのコンテンツが検索やメーリングリスト、サイトの読者にとってどれだけ魅力的か、どれだけ読まれているかを、統計的な観点から簡単に判断できます。一方で読者の感情の評価は難しく、一般的には測定にコストがかかります。

サポート資料においても、やはり訪問者の統計を見ることですね。ヒートマップツールを使ってページのどの部分が最も注目されているかを確認するのも良い手だと思います。長い操作手順を説明する記事であれば、なおさらです。

プロモーションやセールスマーケティングのためのウェブサイトであれば、何がうまくいっているのか、ファネルのどこで漏れが生じているのかを確認するために、ビジネスにおける販売データも必要になるかもしれません。UXコピーであれば、フローやインターフェースの使用パターンを見て、問題点や改善のポテンシャルを明らかにする必要があります。

どのような仕事であっても、コンテンツのゴールとその達成度合いをどのように追跡するか、ライティングの前に確認しておきたいものです。

ジョージーナさんが使ったことがあるものの中で、素晴らしいと思ったライティングやコンテンツはありますか?

私が昔から愛用しているのは Clue Appですね。このジェンダーレスなアプリを使用すると、ユーザーは生理(月経)に関する研究に継続的に貢献することができるんです。

何より、研究から得られた情報を、百科事典を通じてユーザーに還元するという方法は、素晴らしいものです。優れたコンセプトが見事に実現されています。


ありがとうございます。では最後に、フリーランスのライターとしてのキャリアを歩みたいと考えている人たちに、アドバイスを3つ与えるとしたら何でしょうか?

  • 本業を辞める前に、しっかりとしたネットワーク、貯金、それから手に職があることを確認してください。私がフリーランスとして成功するためには、仕事上のネットワークが欠かせませんでした。

  • 税金の支払いや退職後の貯蓄を、あなたの時給、日給、そして契約時の料金に織り込むことですね。オーストラリアでは、会社に所属するすべてのサラリーマンは、給料に加えて退職金が支給され、それが自動的に年金管理会社の年金口座に入ります。 フリーランサーになるために年金を犠牲にするべきではありません。 なので、自分の給料にその分を上乗せして、退職したときのための口座に振り込んでおくようにしてください。

  • 誰と仕事をするか、しないか(業界や特定の行動をとる人など)、危険信号は何か、支払い条件はどうするかなど、自分の中でルールを決めておきましょう。また、仕事を得るためにルールを破るようなこともしないでください。あなたは、楽しい仕事をするためにフルタイムのサラリーマンを辞めたのですから、その目標を達成できるかどうかはあなた次第です。

(Special Thanks! インタビュー協力:Beatrix Holland)



今週のインタビュー:ジョージナ・レイドロー (Georgina Laidlaw


オーストラリアのメルボルンを拠点に活動するUXライター。英語教師の資格を持つ彼女は、UX、コンテンツライティング、マーケティング、そしてブランドコミュニケーションのスペシャリストとして20年以上のフリーランス経験があります。

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