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利用規約ページのUXを向上する(そのための6つの簡単な方法)

利用規約ページのUXを向上する(そのための6つの簡単な方法)

翻訳記事 Dec 09, 2022

この記事はエリック・エピスコポ氏のブログ:Improving the UX of Your Terms and Conditions Page (and 6 Easy Ways To Do It)の翻訳転載です。著作元のMind the Productの許可を得て公開しています。

ウェブサイトのUXをデザインしたり改善したりするときに、どれくらいの頻度で利用規約のページについて検討することがあるでしょうか?推測するに、めったにないのではないでしょうか。「ホームページや価格ページ、チェックアウトページに取り組むべきなのに、99%の人が読まないページの改善になぜ時間をかけるのか」と思うのはわかります。

こうしたページのデザインには、当然細心の注意を払うべきですが、規約ページにも愛情を注ぎ、配慮するに足る理由もちゃんとあるのです。この記事では、その3つの理由と、利用規約のページを強化するための6つの方法を紹介します。

利用規約とは一体何なのか?

最初にいちばん大切な、利用規約とは何かについて簡単におさらいしておきましょう。利用規約、あるいは利用条件とは、基本的に、ウェブサイトやアプリを利用する際に訪問者が遵守しなければならないルールをまとめた法的な契約書です。

その目的は、サイトの所有者と訪問者の両方を保護し、ウェブサイトやアプリ側が、訪問者の意図した体験を提供することを保証することです。利用規約のページがないと、ウェブサイトはコンテンツ(デザイン、記事など)の所有権を保護するという点で、法的に無防備な状態です。

利用規約のページを改善すべき3つの理由

もし、あなたが利用規約のページにあまり注意を払っていないのであれば、それを修正することが必要だと納得できるはずの理由が3つあります。

1. ブランドへの信頼を築く

利用規約を簡単に理解することができれば、訪問者は、利用あったり詐欺にあったりするのではないかと心配をせずに、安心してサイトを探索することができるようになります。ウェブサイトの利用規約を一読して理解できるというのはとても新鮮なことで、それは、その会社がユーザーを大切にしていることを示すものです。

逆に、最初の段落を読むだけでも苦労するようでは、ユーザーはその会社は利用者のことをちゃんと考えているのかと疑い始めます。さらに、事業運営の指針となるルールを理解できなければ、サイトの利用に対して慎重な姿勢を示す可能性が高くなります。

利用規約のページは、ユーザーからの信頼性を高めると同時に、Googleとの信頼関係も構築することができます。ウェブサイトのプライバシーポリシーや会社概要のページと並んで、利用規約のページは、Googleに信頼できるというシグナルを送るのに役立ちます。Googleがあなたのウェブサイトを信頼すればするほど、ネガティブなSEO攻撃やアルゴリズムによるペナルティの影響を受けにくくなるため、これは重要です。

2. 消費者の反発を避ける

意外に思われるかもしれませんが、人々は「つまらない」と思える法律上の取り決めに、実際注意を払っています。そして、不明確な点や混乱する点を見つけたら声を上げるものです。例えば、2012年、Instagramがアップロードされた写真を広告主に販売できるように規約を変更しようとしていることに気づいたユーザーからの大反対に直面しました。

同社には、#Instascam、#Instafraud、#leavinginstagram、#f*ckyouinstagramといったハッシュタグをつけた怒りのツイートやメールが殺到しました。InstagramのCEOであるケビン・シストロムは、これを誤解だとして、同社の規約に「紛らわしい」表現があったことを謝罪し、正確な表現に置き換えることを約束しました。

Instagramはこの反発を生き延びたものの、中小規模の企業であれば、このようなネガティブな圧力にさらされるなかで、これほどうまくやっていくことはできないでしょう。

3. 訴訟から身を守る

極端な話、利用規約に大きな矛盾があると、法的な罰則を受ける可能性があります。

例えば、2015年、米国の食料品店チェーン「Safeway」は、クラスアクション訴訟でクラス構成員全員に3,000万ドルの支払いを命じられました。顧客が怒ったのは、オンラインストアでの価格が、Safewayの実店舗での価格より高いことに気づいたからです。この訴訟は、その利用規約にある「店舗」という言葉が、Safewayの実店舗を指すのか、オンラインストアを指すのか、という混乱に端を発していました。

Safewayは、消費者のインターネット法に対する意識の高まりに伴い次々と起こり始めている訴訟の一例に過ぎません。

利用規約を充実させるための6つの方法

この記事は、実際に実行可能な利用規約ページの改善方法のヒントを提供しなければ、あまり意味がないでしょう。そこで、以下にウェブ上の事例からヒントを得た6つの簡単な方法を紹介します:

1. 目次を追加する

目次を追加するなど簡単なことのように聞こえるかもしれませんが、利用規約の読みやすさを向上させるという点では、大きな差が出ます。目次があると、規約のナビゲーションが簡単になり、訪問者は探しているものを正確に見つけられるのです。

Spotifyの利用規約は、わかりやすい目次を提供しています。

この目次に派手さはないかもしれませんが、ユーザーは支払いやキャンセルに関するガイドラインを探して、何ページもスクロールする必要はありません。なぜ、サイトが利用規約に数分かけるだけで、訪問者の時間を節約できるようにしないのか、不可解ですよね。

2. 各セクションにTL;DR(要約)を含める

利用規約を読むのが面倒な理由の第一は、弁護士にしか理解できないような法律用語で書かれていることが多いからです。

企業はこの問題に対処するため、「Too Long; Didn’t Read(長すぎるから、読んでない)」訪問者に対して「短い」要約バージョンを提供し始めています。この要約バージョンは、法的専門用語を排除した素人向けのバージョンです。 

これを最もうまくやっているのがTLDRLegalの利用規約で、右側に法律用語バージョン、左側に一般人バージョンでページを構成しています。あなたはどちらを読みたいと思いますか?

Githubの利用規約も同種のもので、各セクションの最初に「縮約版」を設けて、カバーされている内容の簡単な概要を示し、ユーザーがページを素早く読み進められるようにしています。

3. クエスチョンマークのポップアップを使用する

複雑な法律用語に対応するためのもう一つの方法として、以下のようなよくある質問形式のポップアップを設置することもできます。

このポップアップでは、よくわからない用語や文章にカーソルを合わせると、簡単な説明が読め、その定義が明確になります。

4. アイコンや画像を散りばめる

無地の背景は目に負担がかかり、すぐに見飽きるものです。アイコンや画像を使えば、利用規約を視覚的に魅力的にするだけでなく、文書内を見て回りやすくなります。

Mailchimpは、6つの異なる法律関係の方針を見分けやすくするために、アイコンを使用しています。

インペリアル カレッジ ロンドンは教育機関なので、その利用規約も一般的なウェブサイトよりもはるかに強固なものとなっています。インペリアル カレッジは、1つの長いウェブページではなく、わかりやすい画像メニューを使って、規約を個別のカテゴリーページに分割しています。

ほとんどのウェブサイトの利用規約は難しく、面白みがなく見えますが、インペリアル カレッジのページの画像は、利用規約をより親しみやすく、歓迎するように感じさせてくれます。入学希望者は、必要な規約を難なく見つけることができます。

5. フォントと行間の余白を見直す

利用規約の読みやすさを向上させるために最低限必要なことは、すっきりとしたフォントのスタイルとサイズを使用することです。以下のKinjaの利用規約Huffington Postの利用規約のスクリーンショットを見れば、フォントがどれほど大きな違いをもたらすかは明らかです。

どちらが読みやすいですか?

Kinjaの利用規約の方が明らかに読みやすいですね。大きなフォントが使われており、行間に十分なスペースがあるため、段落が過密なテキストの塊のように見えることはありません。一方、Huffington Postのフォントは小さく、段落と段落の間にスペースを使用していないため、その規約は読むのが悪夢のようです(私は場所を見失わないように指で確認する必要がありました)。

理想的なフォントをお探しなら、オンラインで読ませるにはサンセリフ体のフォントがいちばんおすすめです。

6. よくある質問(FAQ)形式

利用規約のページを訪れる人の多くは、質問を抱えています。そこで、訪問者に段落の間に答えを探させるのではなく、疑問に答える形の利用規約にしてしまうのはどうでしょう

BBCの利用規約では、各セクションが質問に分けられています。 

つまり、「コンテンツの所有権」というサブセクションを単にラベル付けするのではなく、BBCでは、「私が投稿またはアップロードしたコンテンツは誰のものですか」という質問として言い換えているのです。このように規約をフォーマット化することで、より使い勝手がよくわかりやすいページができあがります。 

最後に一言

柱となるページよりも利用規約のページに多くの時間を費やすことをおすすめする人などいないでしょう。しかし、デザイナーやウェブマスターは、利用規約のページに必要な注意を払うための時間を確保する必要があります。上に挙げた変更のほとんどは、1日もかからずに実行できます。でもあなたのウェブサイトに対する訪問者の受け止め方には、大きな違いをもたらす可能性があります。

翻訳:Kanako Noda


執筆者プロフィール:エリック・エピスコポ(Erik Episcopo

エリック・エピスコポは、アプリやWebサイトなどのリーガル・ポリシーの作成を支援する企業 Termly.io のプロダクトマネージャー兼スモールビジネスの専門家です。弁護士や法律の専門家のチームと協力し、ビジネスオーナーを支援しています。 
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