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「さようなら」を告げるマイクロコピー

「さようなら」を告げるマイクロコピー

翻訳記事 Sep 01, 2021

この記事はPrototypr.ioのブログ: If you leave me now: the microcopy of saying goodbyeの翻訳転載です。著者のキネレット・イフラさんの許可を得て公開しています。

信じられないようなオファーを断ったりやめたりしたユーザーに対して、何を言うべきか(そして何を言うべきでないか)。


Photo by Jan Tinneberg on Unsplash

相手が本当にあなたのことを愛しているか、感謝しているか、気にかけてくれているかを確認する最も効果的な方法の一つは、「NO」と言うことです。

断られたり、拒否されたりしたときの相手の反応は、その人のこと、そして人間関係の本質について、たくさんのことを教えてくれます。

この方法は、家族内でも(お母さん、今週は行けないよ)、友人との間でも(ごめん、今週は忙しくて手伝えないよ)、クライアントとの間でも(いいや、割引なんてもってのほかだよ)、そして私がおバカさんをふるいにかけて、心のある素晴らしいパートナーを見つけるのにも役立ちました。

つまり:

相手が本当にあなたの利益を第一に考えている場合、あなたが相手にノーと言ったとき(健全な人間関係では避けられない状況です)、最初の反応は当然に「怒りが湧く」ことですが、すぐに冷静な見方の会話に変わり、お互いの立場から状況をよく考え、良い方法を見つけようとするでしょう。あなたが自分の選択を貫けば、相手は最終的にそれを受け入れ、あなたを愛し、感謝し続けるでしょう。

その一方で、自分の利益しか考えていない人からの申し出を断ると、極端な怒りに始まり、執拗に考えを変えようとしてきたりと、全く異なる反応が返ってきます。あなたが考えを変えるよう説得するために、的外れな議論をしたり、考えを曲げない場合には、感情を操ろうとして、罪悪感を抱かせたりしてくることもあります。

ユーザーにどのように別れを告げていますか?

  • しばしば、ユーザーはメーリングリストの登録を解除する
  • 何のアクションも起こさずにウェブサイトを去る
  • サブスクリプションをやめる
  • ソフトウェアを削除する
  • 特典のプレゼントを拒否する
  • お金を払わない

ユーザーが一方的に、あなたの提供するバリューに興味がないと伝えてきたら、どう対応しますか?

彼らを尊重しますか?理解しようと努めるでしょうか?

それとも、なるほどと思わせるお涙頂戴のキャンペーンを展開して、せっかくのバリューを台無しにしますか?

感情的な操作は弱虫のためのもの

確かに、最初は面白かったです。
GetResponseによるこのポップアップは愉快でした。

「なぜ僕を捨てたの?理解できない!なぜそんなことをするの?まだ行かないで!僕にやらせてよ!」


ユーザーは、何か面白いことや驚くべきことがあると、それがきっかけで行動を起こすかもしれません。

しかし、それが流行りになり、ライターたちは、はなからこのスタイルを選ぶようになりました。ブランドは、ユーザーが離れていくのを見て次々と涙を流し、「あなたがいなくて寂しい」と言い、「必ず改善することを誓いますから、行かないでください!」と約束します。



「パーティはもう終わり?」

 

何が起きているかというと、最初の数回は面白かったものが、1万回目にはもう面白くなくなっているということです。今では使い古され、濫用され、やがて眠気を誘う退屈なものになっています。ライターは、ユーザー自身や、ユーザーが去ることを決めた理由に真剣に向き合うのではなく、手っ取り早く解決しようとします。なぜユーザーが去るのか、どうすればユーザーとの関係を維持できるのかを実際に知ろうとしたり、推し量ったりするより、「寂しいです、戻ってきてください!」と書く方がずっと簡単だからです。

 

お別れのメッセージを書くとき、誰のことを考えていますか?

ユーザーの離脱、つまり、ユーザーがプロダクトやサービスを使うのをやめてしまったり、ウェブサイトを閉じたり、アプリを削除したりすることには、正当な理由があります。

  • 以前はプロダクトのバリューを必要としていたが、生活が(ずっと、または一時的に)変わったために必要なくなった
  • メルマガが役立つと思っていたが、結局自分のニーズに応えられなかった
  • もっと自分にぴったりなサービスを見つけた
  • 気に入っていたけれど、予算をオーバーしてしまって、何かを切り詰めなければならなくなった
  • 今はまだ迷っていて、決断する時間がないので、決断を先延ばしにしている
  • プロダクトの性能が十分でない
  • オファーが魅力的ではない

他にもたくさんの理由があります。

これらの理由のどれもが、愚かなポップアップや、ユーザーと別れる不安からの悲痛なメッセージでは適切に対処できません。

例えば、Shovalさんは新しいアカウントの設定を始め、数日間サインインしませんでした。すると彼女は、こんな過剰なメールを受け取りました。


仮に、このメールが彼女に感情的な反応を引き起こし、楽しませたことで、アカウント設定を完了したとしましょう。その後は?私たちはそこからどうすればいいのでしょうか?この感情をもとに、彼女はどのくらいプロダクトを使い続けるでしょうか?

ユーザーがすぐにプロダクトからのベネフィットを得られるようなメールへと、創意工夫を凝らしたほうがいいでしょう。そうすれば彼女は、プロダクトが寂しがっているからではなく、自分のためにプロダクトを使い続けたいと思うはずです。

その、逆。

これらのポップアップは、UX全般、特にマイクロコピーの基本中の基本である「ユーザーエクスペリエンスのいろは」とは正反対のことをしています。実際、これらはマーケティングの慣習やコールトゥアクションのセオリーに完全に反しています。ユーザーに何かをしてもらうためには、何か良いことが起こりそうな、本当に良い理由を与えなければなりません。もちろん、バリューの根拠を示さなくてもユーザーを動かすことはできますが、それができるのは、愉快だったり、とても驚いたり、それ自体が価値をもたらすような新しくてクールなことを、あなたが思いついたときだけです。しかし、泣き言のようなポップアップや、悲痛なメッセージが日常茶飯事になってしまってから、目新しさやユーモアは失われ、ただの口うるさい存在になってしまったのです。

申し訳ございません。私たちのプロダクトは最低です :(

ちょっと待って。「私たちはヘマをしたので、プログラマーを辞めさせることにしました」なんて、早とちりしないでください。

プロダクトが優れていても、あなたとは関係のないさまざまな理由で、今現在、あるいは全般的に、このユーザーには合わないということは十分にありえます。

ジェシー・ウィーバーは、「ユーザーを維持するためには、時には彼らを手放さなければならない(英語)」という素晴らしい記事を書いています。目を見張るような内容で、ユーザーの離脱に対する考え方を一変させる可能性を秘めています。

登録したくない、どうにかしてくれ

マニピュリンク(ユーザーに肩身の狭い思いをさせること)として知られている、コンファームシェイミング(羞恥心の植え付け)も同様です。これらのボタンやリンクは、メーリングリストへの登録やクラブへの入会など、魅力的なオファーを受け入れなかった場合に、ユーザーが罪悪感を抱くように仕向けられたものです。

このTumblrでは、見事な数のコンファームシェイミングの事例を見ることができます。

あなたがユーザーにバリューを提供し、ユーザーがそれを読み、そしてユーザーが受け入れ、参加または登録してくれれば、誰もがハッピーです。

あるいは、ユーザーにとって、それほど興味を引く内容ではなかったり、単に十分ではなかったりすることもあります。この場合、ユーザーにはオファーを完全に拒否する権利があり、その中で侮辱されることなど何もありません。

罪悪感を抱かせるアプローチが、コンバージョンにつながる良い方法だと思うのであれば、長い目で見たときのコスト・ベネフィットを検討してみてください。「マイクロコンバージョンのためにユーザーに肩身の狭い思いをさせてはいけない」と名付けられたこの素晴らしい記事の中で、ニールセン・ノーマン・グループのケイト・モランとキム・フラハティはこう書いています。

いじめるようなやり方で、ニュースレターに登録してくれる人が増えたとしても意味がありません。このアプローチは、A/Bテストでは数値化できない形で、ユーザーエクスペリエンスに悪影響を及ぼします。ニュースレターの登録者数を増やすことは、信頼性やユーザーからの信用を失うほど価値のあることでしょうか?メールアドレスの数を増やすために、ユーザーとの関係を犠牲にすることは、まさに木を見て森を見ずです。

この記事の最初のポイントに戻りますが、もし現実の誰かが、あなたを罪悪感に訴えて嫌なことをさせようとしたら、おそらくあなたはその人を信用できないし、その人はあなたのことを本当に気にかけていないと感じるでしょう。そんなふうにクライアントに感じてもらいたくはないはずです。

『UXライティングの教科書』の第3章(「モチベーションを高めるマイクロコピー」)では、コンファームシェイミングとユーザーの側に立つことについて、詳しく解説していますのでご覧ください。

ユーザーが「ノー」と言ったとき、何と言えばいいのか?

1. まず、この質問に答えてください:あなたのオファーはユーザーの生活をどのように良くするのでしょうか?

ユーザーにアプリをもっと使って欲しいなら、「寂しい」と言うのではありません。アプリを利用する価値を思い出してもらいましょう。なぜそうすることに価値があるのか、それがどのようにユーザーのベネフィットを促進し、サポートできるのかを思い出させてください。

HeadSpace社の(素晴らしい)ライターが、自社のアプリを私にもっと使ってほしいと言ったとき、彼らは 「ああ、あなたがいなくて寂しい、あなたを抜きに瞑想はできない、戻ってきて!」とは言いませんでした。彼らは、自分たちやプロダクトのことは一切触れません。私のこと、そして瞑想がいかに私のためになるかということだけを話しました。残念ながら私は、その素晴らしいプッシュ通知を保管していませんでしたが、それは次のような内容のものでした。

多くの人は、瞑想を、ストレスや打ちのめされたときの解決策と考えています。確かに、そのような時には効果がありますが、天気の良い日に毎日継続して行うことで、全体のストレスレベルを大幅に下げることができます。数分間のリラックスタイムを設けてみてはいかがでしょうか。

このようなプッシュ通知を読むと、Headspaceの人たちは私の人生を改善したいと思っているのだと心底思います。

結論 - このやり方は機能したか? : もちろん、私はHeadspace社のデータを持っているわけではありませんが、個人的なメモとして、そのメッセージを受け取って以来、本当に私の心に残り、今ではアプリをより沢山使っています。きっと私だけではないはずです。

2. 理由を尋ねる

ユーザーがなぜ離れていくことにしたのか、わかったつもりになってはいけません。理由を尋ね、その回答にきちんと敬意を持って応えてください。

次は、前述のジェシー・ウィーバー氏の記事から引用した、Spotifyの配信停止プロセスのスクリーンショットです(この記事のすぐ後に読むのを忘れないでくださいね)。Spotifyは、ユーザーが離脱する理由を尋ね、その答えに対してベストな回答をしています。

3. ユーザーを中心とした真の価値を提供する

例えば、ユーザーがあなたのウェブサイトを去ろうとしているときには、あなたのブランドのターゲット層にぴったりの付加価値を約束する、質の高いオンラインガイドを提供しましょう。

これは、マリー・フォレオのサイトの離脱時のポップアップです。彼女は成功したビジネスウーマンであり、世界的なメンターでもあります。ここでは、「いいえ、結構です」というシンプルな表現で、自尊心を保ち、ドラマ性を排除した、センスの良い閉じるリンクテキストに注目してください。


「No, thank you(いいえ、結構です)」

 

4. 興味を抱かせる

これは THINX のサイト離脱時のポップアップです。



5. あなたの提供するサービスに関連した興味深い質問をして、相手を驚かせる

これがPanayaのサイト離脱時のポップアップです。

6. 代替案の提示

J. Petermanは、私に代替案を提示し、その理由も尋ねています(回答は任意)。洗練されたツールチップを見てみましょう。これこそ、真のバリューを提供しながら行動を促す方法です。



6. 離れていくユーザーには、最初に来訪したときと変わらぬ敬意をもって接する

Duolingoはこの点で素晴らしい仕事をしています。ユーザーがあるメーリングリストから退会したとしても、Duolingoは「どうしたらもっとユーザーを助けられるだろうか?」と自問自答し、希望者には他のメーリングリストへのリンクを提供しています。

「自分のことを一番に考えてくれている」と感じてほしいのなら、しがらみを捨てて、同じように自信と敬意を示してください。Duolingoのようになりましょう!

そして、これは Microsoft のものです。彼らは、アクティブユーザーへの対応と同じように、離脱するユーザーにアンインストールに必要なすべての情報を提供しています。



離脱するユーザーにシンプルで素敵なお別れを提供し、いつでも戻ってきたいと感じてもらえるようにする。最高の締めくくりとして、これもまたHeadspaceの事例をご紹介します。私がどれほどHeadspaceを気に入っているかは、もうお伝えしましたっけ?


執筆者プロフィール:キネレット・イフラ(Kinnert Yifrah

イスラエルのトップクラスのマイクロコピー専門スタジオ、ネマラの代表。デジタルプロダクトのコンテンツとマイクロコピーのライティングで10年の実績を誇り、あらゆる業界、あらゆる規模の企業のためにボイス&トーンのデザインを続けている。
著書:UXライティングの教科書(翔泳社)  |  オンラインコース リンクトイン