
マイクロコピーにユーモアを上手に取り入れるための7つのヒント
Jun 09, 2021この記事はPrototypr.ioのブログ: Humor in microcopy: 7 guidelines to do it rightの翻訳転載です。著者キネレット・イフラさんの許可を得て公開しています。
マイクロコピーに関する一般的な誤解は、「人間らしく見せようと思ったら、面白いことをすればいい」というものです。
マイクロコピーの重要性が認識されるようになったことで、「わざとらしい」マイクロコピーの事例を多く目にするようになりました。ライターがウケを狙いすぎて、UXライティングの本質を忘れてしまっているように感じます。
わざとらしいマイクロコピーは、ユーザーを助けるのではなく、自分自身が目玉になろうとしているのです。
ユーモアが悪いと言っているわけではありません。ユーモアは、感情移入、ユーザーエクスペリエンスの向上、そして行動を促すための素晴らしいツールです。
この点については、クリフォード・ナス博士の「The Man Who Lied to His Laptop(邦題:お世辞を言う機械はお好き?」と、インターフェイスにおけるユーモアの発見について読むことを強くおすすめします。
では、マイクロコピーでユーモアを使うにはどうすればよいのでしょうか?ここでは、7つのガイドラインをご紹介します。
1. ブランドやプロダクトの個性に合わない言い方をしない
あなたのブランドやプロダクトは、定義上、面白い、またはクールですか?
なぜですか?ブランドのビジョンや価値観がそれを裏付けていますか?
ブランドがどのように響くか、どのような声を出すかは、書きたいことに応じてその場で決めるものではなく、戦略的に決めるものです。
ユーモアや風刺やウィットは、ブランディングや、ユーザーとの関係性の強化に役立つことがある一方で、それらにダメージを与えることもあります。
たとえばそのブランドが、「共有」や「コミュニティの発展」の価値観を広く伝えたいなら、風刺的な表現は、つながりを求めるユーザーを遠ざけかねません。また、ブランドの印象が落ち着いたアットホームなものであれば、ウィットではなく、「ソフトな」ユーモアを使うべきかもしれません。
ですから、気の利いた言い回しを考える前に、どのような価値が、なぜそのブランドにとって重要なのかを確かめましょう。
2. ターゲット層や築きたい関係性にぴったりなときに使う
ターゲットの顧客は、その表現を理解し、つながりを感じられるでしょうか?
その言葉のチョイスは、ユー ザーの属する文化圏や年齢層と合致していますか?
すべてのユーザーがあなたの書いたコピーに共感しなければならない、というわけではありません。楽しいことを少しでも口にすると気に障るユーザーは必ずいます。それでも、コア・ユーザーにとってどのようなユーモアがぴったりかを知るためには、ターゲット・ユーザーについて十分に知る必要があります。
たとえば、未成年者は、私たちマイクロコピーライターとはまったく異なる言葉遣いです。ですから子どもたちやティーンエイジャーのためのライティングでは、同じような年ごろの “ 通訳 ” にあなたのコピーを読んでもらい、違和感がないかどうか確かめてもらうとよいでしょう(あなたが未成年者でない限り)。ユーザーが他の文化圏に属する場合や、標準語とは異なる方言を使う場合も、同じです。
3.ユーモアだけが読みどころとならないように
ライティングのスタイルについて印象に残るのがユーモアだけだとしたら、それはおそらく退屈な文章です。
私たちの書くマイクロコピーの言葉遣いは、実際の人と人との会話のように豊かであるべきです。人は多種多様な味わいを表現でき、「面白い」「かっこいい」だけの人はいません。
たとえばユーモラスでノスタルジック、もしくはユーモラスで未来的。クールでつながりを感じさせる、またはクールで個人主義的。ノスタルジックでつながりを感じさせるタイプ、面白くて未来的なタイプ。個性的だけど、面白くないタイプ。
また、ウィットに富んだ温かみのあるタイプ、シニカル、控えめ、ちょっと偉そう、ゆったりとしたポエム系、キレが良い、センチメンタル、くだらない、我が道をゆくタイプ、ありきたり、などなど。
これらはすべて、あなたのブランド・バリュー次第です。
ユーモア以外は何も伝わらないようなマイクロコピーは、何かがずれています。
4.どこまでいくとトゥーマッチ?
- 最初から最後まで読み手を笑わせたいですか? 面白おかしい表現は、途中でいったん引っ込めるのも手です。
- メッセージを、オチで閉めたいですか?それならメッセージの入り口では、シンプルな言葉を使うことをおすすめします。
文章をできるだけ分断せず、全体をひとつの流れで構成すると、上質のユーモアやウィットをうまく散りばめることができます。通常、複雑な動作の前後に表示され、動作中には表示されないので、物事をシンプルに保つことができます。
結局のところ、一番大切なのは、ユーモアの適量をわきまえることです。
ユーモアやウィットはスパイスのようなもので、使いすぎてはいけません。これは、Google Israelのランゲージ・マネージャーであるYael Sela氏から学んだことです(同社のローカリゼーションプロジェクトについてはこちら)。
グーグルは、自社のボイス&トーンのデザインについてこういいます:森に一角獣がいるなら(それで十分)、フラフープができる(芸達者な)サルは要りません。
5.わかりやすさを犠牲にしてかまわないものはない
ユーザーが途中で止まってもう一度読み直さないと理解できないようなら、それは書き方に問題があります。
ユーザビリティの原則です。
ユーモアは、マイクロコピーが持つ他の性質(簡潔、明快、役に立つ)の強力な相棒にはなり得ますが、決して代役にはなりません。
ユーモアをやりすぎないようにする素晴らしいテクニックのひとつは、目を閉じて、スクリーンリーダーを使うユーザーがどのように聞いているかを想像することです。実際に画面を見ずに、自分が置かれている状況を正しく理解できるでしょうか?(アクセシビリティについては、こちらの記事で詳しく説明しています)
6.状況をよく考えて
「うわ、システムがクラッシュ! どうしてこんなことが起きたのか、まったく見当がつき ません。データは未保存、最悪です。全部消えました! でもまあ、アフリカにはインターネットを使うことさえできない子どもたちがいますからね」...こんな言い方では笑えません。
7.ジョークの詰め込みすぎに注意
ユーザーが頻繁に目にするメッセージを書く場合は、ウィットや感情的な表現は避けましょう。ジョークは、おそらく3回目くらいで楽しめなくなるものです。
おまけ:ユーザーをジョークのネタにしてはいけません。ただし...
上記の7つのガイドラインをクリアしている場合には、このルールを破っても構いません。プロダクトの個性、ターゲット層、そしてお互いの関係性から、ユーザーをからかうことが許される、あるいは必要とされる場合は、ジョークのネタにしても構いません。しかし、慎重に行いましょう。
例えば、Hipmunkは、旅行を計画するユーザーと楽しい関係を築いています。最大の利用可能期間を超えてホテルを予約しようとするユーザーに対し、次のように言います。
Carrot Hungerはさらに先を行きます。彼らは自らを「ズバっと物を言うカロリー計算アプリ」と紹介し、ユーザーとの関係をこの姿勢に基づいて築いています。
もちろん全員にフィットするわけではありません。しかし、このようなコミュニケーションがモチベーションや楽しさにつながるユーザーは、夢中になってアプリを使うでしょう。
はっきりさせておきますが:ユーザーを楽しませるユーモアに、人種差別(racism)、性差別(sexism)、年齢差別(ageism)、そのほかすべての形の「-イズム」が含まれることは決してありません。
執筆者プロフィール:キネレット・イフラ(Kinneret Yifrah)
イスラエルのトップクラスのマイクロコピー専門スタジオ、ネマラの代表。デジタルプロダクトのコンテンツとマイクロコピーのライティングで10年の実績を誇り、あらゆる業界、あらゆる規模の企業のためにボイス&トーンのデザインを続けている。また、イスラエルを拠点にマイクロコピーのコミュニティを運営し、講演やワークショップも開催。
著書:UXライティングの教科書(翔泳社) | オンラインコース | LinkedIn