週刊ニュースレターを読む
ブログ一覧に戻る
データドリブンなUXライターになるには(コピーのA/Bテスト方法)

データドリブンなUXライターになるには(コピーのA/Bテスト方法)

翻訳記事 Aug 10, 2022

この記事はパトリック・スタッフォード氏のブログ: How to become a data-driven UX writer (and how to A/B test copy)の翻訳転載です。著作元のUX Content Collectiveの許可を得て公開しています。

一般的にデータについて語られるのは、開発やプロダクトマネジメントのような、技術的な分野が中心です。 

それがライターとなると、 データに基づいた意思決定が少々あいまいになりがちです。一体、どうやって決めるのか?ライターとして、どのように仕事にデータを取り入れたらいいのでしょう。それだけでなく、ページ上のほかの要素とは別に、コピーの効果をテストするにはどうすればいいのでしょうか?(つまり、コピーのABテストはどうすればいいのでしょうか?)

データ、コピーのABテスト方法、データに基づいた意思決定プロセスを熟知したUXライターやコンテンツストラテジストは、圧倒的な強みを持つことになります。

しかし、そのためには、ちょっとした発想の転換が必要かもしれません...。

 

データドリブンのプロセスを説明する

データドリブンをライティングに活かす方法について話す前に、まずはこの言葉そのものについて説明しておきます。データドリブンとは、どういう意味なのでしょうか。

データドリブンとは、数値やテンプレート、チャートというよりは、ある結論を導き出すための「メンタルモデル」を意味します。

このメンタルモデルを活用する際には、毎回ほぼ同じパターンが繰り返されます。データに基づくクリエイティブな意思決定に直面したとき、次のことを問いかけてみてください。

  • あなたが解決しようとしている、コンテンツに関する主な疑問は何ですか?
  • あなたのデザイン課題の真のゴールは何でしょうか?難しいことではありません。ライターやデザイナーが常に考えていることです。
  • その問いに答えるために役立つデータは何でしょうか?これにより、現状の問題解決に役立つデータのみに集中することができ、情報収集のために情報を集め続ける「データクリープ」を防ぐことができます。
  • どのデータが不十分ですか?あなたのデータセットに欠けているものは何か、考えてみてください。それにより、得られる情報量が少なくなっていませんか?
  • そのデータだけが教えてくれることは何でしょうか?第一原則から考えてみましょう。他の何とも関連性のない場合、そのデータは何を物語っているでしょう。たとえば、ヒートマップを見れば、50%の人がある地点から先にスクロールしていることがわかるかもしれません。しかし、その理由はわかりません。
  • そのデータは信頼できますか?信頼できる情報源から得たデータですか?データの出所はどこですか?
  • そのデータから、他のデータでは得られないようなコンテキストが得られますか?

これらの質問から、データの取り扱いとは、必要なときにいつでも情報を得られるというわけではないことがわかります。問題解決のために、適切な情報を、適切なタイミングで、適切なプロセスに沿って導き出すことが重要なのです。

 

データドリブンの考え方は、ライティングにどのように活かされるのか?

UXライターがデータを扱えば扱うほど、こうした疑問は解消されます。しかし、UXライターはどのようにデータを自分の仕事のプロセスに組み込めるのでしょうか。

相手に適切な問いかけをすることはもちろんですが、UXライターはデザイン上の問題を解決するために、多くのデータソースが使えることを知るべきです。例えば、以下のような情報があります。

  • ユーザーテストセッション
  • インタビュー
  • テレメトリー(遠隔測定法 )
  • カードソーティング
  • ヒートマップ分析
  • 画面レコーディング
  • アイトラッキング
  • A/Bテスト結果

もちろん、問題はライターがそのデータをどのように自分のプロセスに組み込めるかです。

例を挙げてみましょう。

 

 A/Bテストの方法

このプロセスについて、できる限り多くの場面で話し合うことが大切です。UXライターやコンテンツストラテジストとして、もっとも多くのデータを扱うプロジェクトのひとつが、A/Bテストです。今回は、これらの文脈から、データドリブンのメンタルモデルを考えてみましょう。

エクササイズの目的は何か?
A/Bテストは、あるページのあるバージョンが他のバージョンよりも優れたパフォーマンスを示すかどうかを判断するためのものです。例えば、私たちが製菓会社で働いていて、ある新しいコピーをテストしたいとします。目標は、コンバージョンを増やすことです。まず、ここから始めます。

この問題に関連するデータは何か?
Bバージョンを決めるために使える、あらゆるデータを考えてみましょう。覚えておいてほしいのは、得られるすべてのデータを使うのではなく、どのデータが結果に最も直結しているかを見極めることです。

まずは次のデータから始めましょう:

  • ヒートマップ。これは、ユーザーがページにどのようにアクセスしているかを示してくれます。
  • ユーザーテスト。ページが実際にテストされたものであれば、そのリサーチに立ち戻り、ユーザーが何を好み、何を好まなかったかを把握できます(定量データではなく定性的データだったとしても)
  • 過去のA/Bテスト。例えば、そのページで過去に行ったA/Bテストが5件あったとします。そのテストがコピーに関わるものであればなおさら、そのすべてを検証し、過去のテストを踏襲しているかどうかを確認する必要があります。
  • トラフィックとコンバージョンのデータ。過去3ヶ月間のデータから、このページのパフォーマンス、特にウェブサイトの他のページと比較したパフォーマンスを確認できます。

 

その情報の限界は何か?また、不足しているデータは何か?

第一原則を思い出してください。つまり、それぞれの情報が何を語っているのか。目の前の情報や それ以外を見ることで、何を得られるか?

  • ヒートマップ。マップから、折り返し地点を超えてスクロールするユーザーは25%しかいないことが分かった。
  • 過去のA/Bテスト。これらのテストでは、長いページよりも短いページの方がコンバージョン率が高いことがわかった。
  • トラフィックとコンバージョンのデータ。過去3ヶ月間、オーガニックトラフィックは減少し、コンバージョン数は10%減少していた。

これがデータからわかる点です。理由はすべて推測に過ぎません。ユーザーが短いページを好むと言うのは簡単ですが、必ずしも真実とは言えません。私たちが知っているのは、ユーザーは短いページの方がコンバージョンが高いということだけです。この2つは同じではありません。

データドリブンの考え方を実践するには、何がわかっていて何がわかっていないのかを明確にする必要があります。ご覧のように、私たちはあるデータを見失っています。各バージョンのページのどこが好きなのか、ユーザーへのインタビューは行っていません。私たちが把握しているのは、数字とコンバージョンのデータだけです。

 

データから得られた情報を視覚化するために、マトリクスを作成する

すべての情報について考えようとすると、混乱してしまいます。知っていることと知らないことを、次のようなマトリックスに置き換えることから始めましょう。

仮説を立て、検証する

情報を整理したところで、仮説を立てます。人々がサイトを訪問しない、あるいはコンバージョンしない理由はいくつか考えられますが、A/Bテストによって、その中から疑わしい理由を見つけ出せるかもしれません。

重要なのは、このメンタルモデルのプロセスを踏んでいて、あなたの仮説が信頼できる情報に基づいていることです。

誰かがあなたの作った仮説を批判するかもしれませんが、少なくともその仮説は事実に基づいています。これが、良いUXライターと、データの扱い方を理解している偉大なライターの違いなのです。

練習あるのみ

これは一朝一夕に習得できるものではありませんし、ABテストコピーの習得もその一例に過ぎません。全く新しいオンラインフローやアプリの新画面を作るとき、あるいは新しいメールキャンペーンを作るときにも、同じ原則が当てはまります。

データドリブンのプロセスをライティングの現場で使うには、時間がかかりますが、正しく理解することが大切です。データドリブンのプロセスをより深く理解することで、採用担当者や企業がデータに基づいたスキルを持つクリエイターを求める次の10年に、自分が価値ある味方であることを証明できるのです。

コーディングの勉強をする必要はなく、考え方を変えるだけでいいのです。そうすれば、他の追随を許さない競争力を手に入れられるでしょう。

 


執筆者プロフィール:パトリック・スタッフォード( Patrick Stafford 

パトリック・スタッフォードはUX Content CollectiveのCOOです。UXライティングとコンテンツ戦略に関するオンラインコースを提供しています。また、世界中のUXライターやコンテンツストラテジストのインタビューを集めたポッドキャスト「Writers of Silicon Valley」を主催しています。

LinkedIn | UX Content Collective