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絵文字とアクセシビリティ:適切な使い方

絵文字とアクセシビリティ:適切な使い方

翻訳記事 Aug 04, 2021

この記事はUX Collectiveのブログ: Emojis and accessibility: How to use them properly の翻訳転載です。著者のライアン・タンさんの許可を得て公開しています。

絵文字が嫌いな人はいないでしょう。あなたがスマホでさまざまな人とやりとりした、直近の10通のメッセージの中には、少なくとも1つ、絵文字が含まれているはずです。

今や、絵文字なしの生活は考えられません。若い世代だけではなく、年配の方も絵文字を受け入れています。私の母や、義理の母は50歳を超えていますが、絵文字が大好きで、絵文字だけを使ってメールを返信してくることもあります。特に「親指を立てる」絵文字が大好きで、欠かせないようです。テック業界では、スタートアップ企業が「ロケット」の絵文字を使うのにハマっているようで、ウェブサイトやアプリのいたるところで見かけます。

仕事上のコミュニケーションがより砕けた言葉になっていく中で、絵文字を使ったウェブやアプリ上でのメッセージのやりとりは、よりエモーショナルで、人間的で、効率的な体験になっていきました。感情や気持ちを伝えられるのは、まさに絵文字の最大の魅力かもしれません。しかし、この記事では絵文字がいかにクールであるかを語るのではなく(それはすでに皆が知っていることなので)、むしろ、よりインクルーシブなプロダクトをデザインするために、どのようにして絵文字を適切に使うことができるかを話したいのです。

1. 絵文字を言葉の代わりに使わない


言葉を使って、明確なコールトゥアクションを伝える


言うまでもなく、絵文字がどんなに説明的で分かりやすいものであっても、言葉に取って代わるものであってはなりません。絵文字はユーザー体験を高めるのに非常に役立ちますが、やはり言葉が王様です。絵文字だけを使うと、スクリーンリーダーはその絵文字の代替テキスト(alt属性)しか読み上げないため、メッセージの意味合いが完全に変わってしまいます。読み手が絵文字をあなたの意図とは別の形で解釈してしまう可能性が高まり、土台となるメッセージとして機能するテキストがないため、認知負荷が大幅に増加します。

2. 絵文字を繰り返したり、多様しない


ただでさえ忙しない文章に、絵文字を使う必要はありません


絵文字は、何千種類もの中から選べるため、ついつい使いすぎてしまうことがあります。しかし、1つの文章につき1つの絵文字を使用するか、必要な場合にのみ使うことを明確にしておきましょう。絵文字には代替テキストが埋め込まれており、スクリーンリーダーによって読み上げられることを忘れないでください。

右の例では、「週末にサンタバーバラでフェスティバル(クラッカー)に参加した後、コロラドに戻ります。10月の予定を立てて(えんぴつ)(えんぴつ)できれば誕生日(プレゼント)(バースデーケーキ)(風船)にはここに戻って来られるようにしたいと思っています。お医者さんの予約スケジュールとフライトの日程がわかったらすぐに知らせるね(飛行機)(飛行機)」と聞こえます。

ですから、スクリーンリーダーを通して、絵文字を含めた自分の文章が、どのように読まれるかを確認しておきましょう。

 

3. 重要なメッセージやCTAの前に絵文字は置かない、テキストを優先する


右の画像は「(握り拳)(握り拳)(握り拳)レッツゴー」と読み上げられる


絵文字は常にテキストの後に置き、決して前に置くことはありません。言葉が王様であるように、言葉はいつも最初に来るべきです。私たちは何よりも、人々にメッセージを最初に伝えたいと考えています。テキストの前に絵文字を使うと、スクリーンリーダーの利用者にとっては使い勝手が悪くなります。以前、いくつかの業務効率化アプリが絵文字をコンポーネントに採用していることに気づきました。それ自体はまったく問題ないのですが、絵文字がテキストより先に来ると問題が生じる場合があります。絵文字の働きはアイコンとはやや異なるため、それぞれを異なる方法で扱う必要があります。

4. 言葉の途中に絵文字を入れない


スクリーンリーダーが文章を読み上げる途中で「プレゼント」と聞こえてくる


前述したポイントと同様に、絵文字は文章の最後に置くべきです。絵文字を途中に置くと、スクリーンリーダーの利用者は、代替テキストをメッセージの一部として聞いてしまうため、ひどく混乱します。絵文字は文末の意味を強調するのに最も役立ちます。

5. 誰もが知っているわかりやすい絵文字を使用する


バルカン・サリュート


すべての絵文字がわかりやすい訳ではありません。誤解を招く可能性のある、あいまいな絵文字は避けてください。私たちはできる限りインクルーシブ(包括的)でありたいと考えています。ユーザーにできるだけさまざまな情報を届けたいと考えており、ユーザーの中には、年齢、文化、宗教、国籍など、異なるバックグラウンドを持つ人々がいることを覚えておかなければなりません。解釈は読み手に委ねられるため、絵文字の意味が変わったり、メッセージに混乱が生じたりする可能性があります。

その絵文字が何なのかを読み手に考えさせないようにしましょう。すぐに理解できる絵文字であれば、彼らはコンテンツを読む時間を短縮できます。

6. 顔文字を使わない


絵文字が使えるのに、どうして顔文字を使うの?


絵文字の優れた点は、代替テキストが埋め込まれており、スクリーンリーダーでテキストとして読み上げられることです。一方、顔文字は記号や句読点をあしらったものなので、ただの記号として、そのまま読まれてしまいます。

スクリーンリーダーの利用者はこれを、文法の誤りやタイプミスと考えてしまうかもしれません。目の不自由な方やロービジョンの人たちの中には、「コロン・右カッコ」をすぐにスマイリーフェイスと認識できる人もいるかもしれませんが、慣れていない人はすぐには認識できない可能性があります。しかし、実際に問題となるのは、「肩をすくめる(Shurg)」顔文字のように、異なる記号を組み合わせて顔文字を作成する場合です。¯\_(ツ)_/¯

7. 明るい背景でも暗い背景でも効果のある絵文字を使う


ニュートラルなスキンカラーの絵文字は、ダークスキンやホワイトスキンの絵文字よりも汎用性があります


ここでもアクセシビリティにおける「コントラスト」のルールが当てはまります。暗い背景と明るい背景で、絵文字を必ずテストしてください。明るい背景に明るい絵文字を使ってはいけませんし、その逆も然りです。絵文字の色合いにいくつかのトーンがある場合は、明るい背景でも暗い背景でも最もよく機能するものを使ってください。選んだ絵文字が明るい背景や暗い背景でうまく機能しない場合は、何千もの絵文字の中から十分な選択肢があるはずです。例えば、「ケーキ」を表す絵文字だけでも約5種類あります。

プロからのアドバイス:絵文字を使用するときは、肌の色が暗かったり明るかったりするものは避け、背景色との調和が取れるニュートラルな黄色にしましょう。

結論

文章を書くときに絵文字を使うのはとても楽しいことですし、私もよく使います。しかし、プロダクトデザインに絵文字を用いる場合には、そのプロダクトを使う人たちのことを意識する必要があります。目の不自由な人やロービジョンのユーザーは、プロダクトに含まれるテキストや代替テキストを頼って操作しており、目で見ているユーザーのように画像や絵文字を理解できません。特定のユーザーに残念な体験をさせないためにも、プロダクトに絵文字を使用するかどうかの線引きをすべきときです。デザイナーは、自分たちがデザインするプロダクトが、可能な限りアクセシブルであることを保証する必要があります。私たちはプロダクトの基本姿勢として、すべてのユーザーを考慮しています。

 


執筆者プロフィール:ライアン・タン(Ryan Tan

ライアン・タンは、インタラクション、ユーザーインターフェイスデザイン、アクセシビリティを専門とするプロダクトデザイナーです。ライアンは現在、アンケート調査と解析ツールを提供する英国のSmartSurveyで働いています。
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