
ユーザーにとって「簡単」の本当の意味を明らかにする
Aug 06, 2022この記事はUX Collectiveのブログ: Defining what ‘easy’ really means to your usersの翻訳転載です。著者のフィンレイ・スティーブンス・ハントさんの許可を得て公開しています。
プロダクト担当者は簡単という言葉を使うのが好きですが、この言葉は曖昧で参考になりません。簡単を実現するには、もっと微妙な違いまで捉える必要があります。ここでは、その方法と理由について紹介しましょう。

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「簡単」という言葉が多用されるのは、プロダクト開発業界全体に、ユーザビリティについて表現する言葉が存在しないことに起因します。別の言い方をすると、私たちの同僚は、自分たちの考えをうまく表現できないために、プロダクトをどのように良くしたいのか説明できないのです。
この記事では、UXデザインのフレームワークにおける、ユーザビリティのカテゴリーに注目して述べていきます。UXデザインのフレームワークを構築する方法とストーリーテリング戦略を構築する方法については、他の記事を参照してください。
なぜ、簡単であることが重要なのか?
フロー理論では、人間は、水のように、目の前の仕事を完了するのに最も抵抗の少ない道を選ぶとされています。ジョブ理論では、人は自分の仕事を成し遂げるためにプロダクトを採用します。彼らは、利用可能なソリューションの選択肢の範囲を常に分析し、最も適したものを選びます。もし、あなたが提供するソリューションが難しすぎると感じたら、人はあなたのプロダクトを「解雇」し、あなたの競争相手を「雇用」するでしょう。
解約を減らし、新規顧客を増やしたいのであれば、顧客の選択肢の中で最も使いやすいプロダクトを作ればよいのです。
プロダクトを開発する組織の問題は、どのような方法ならプロダクトを使いやすくすることができるのか、正確に理解しようとする点にあります。微妙な違いを含めて自分達の考えを表現をする語彙がないばかりに、下手な鉄砲も数打ちゃ当たると、「簡単」というユートピア的なビジョンに向かって、ひたすら努力しているのです。
ユーザーにとって簡単は何を意味するのか?
簡単という言葉は、さまざまなことを成し遂げようとするユーザーにとって、それぞれ異なる意味を持つことがあります。だからこそ、あなたは、個別のプロダクトにおいて、個別のジョブを成し遂げようとしている、個別のユーザーと話すべきです。
プロダクトにおいて、どのような点に本当に価値を見出しているのか、ユーザーに対して尋ねてみてください。また、摩擦を感じているのはどこでしょうか?
プロダクトのユーザーも自分たちと同じだと考えるだけでは不十分です。なんと言っても、私たちはテクノロジーに関する能力の点で、上位1%に位置しています。他の99%のユーザーとはまったく違います。例えば、使われている言葉が難しいと感じていたり、「意味がわからない」と思っているユーザーがいるかもしれません。前職の会社では、成長を目指すSAAS企業の多くと同様、経営陣はアクティベーションを増やすことに高い優先順位を置いていました。つまり、アカウント登録してくれた人たちに実際にプロダクトを使い始めてもらうことです。そこで、アクティベーションの増加を目的とした部門横断的なチームを結成し、便宜上アクティベーション チームと名付けました。そしてこのチームは、オンボーディングのフローの改善を行ない、「アクティベートする」というテキストが入った大きなCTAボタンを設置しました。アクティベーションというビジネス用語が社内に浸透していたので、その盲点に気づく人はいませんでした。当然のことながら、このページに来たユーザーは、「アクティベートする」の意味も、クリックする理由もわかっていませんでした。
簡単さ=能力
B.J. フォッグ行動変容モデルは、どのような要因に人の行動は影響を受けるかについて洞察を与えてくれます。彼は、その人を動機づけるものと、実際にその行動をとれる能力とに分解します。その人がこのマトリックス上でどこに位置するかを頼りに、望ましい行動をしてくれるよう、異なる方法で促すことができます。例えば、あなたのプロダクトのアカウントを作成するなど。このモデルはいろいろあって興味深いので、ぜひチェックしてみてください。ただ、この記事のテーマ上、ここでは能力を中心に見ていきましょう。
能力とは、ユーザーは、どのくらいジョブを成し遂げる能力があるかということです。それゆえ、能力と簡単さは置き換え可能です。私たちの目標は、タスクの難易度の閾値を、ユーザーの能力に見合うように下げることです。では、なぜ今、彼らはジョブを完遂できないのでしょうか?そして、具体的に何につまづいているのでしょうか?
フォッグは能力を次の項目に分解します。
- 時間
- お金
- 身体的努力
- 精神的努力
- 習慣
これらの要素がユーザーにどのような影響を与えるかを理解できれば、的を射た設計上の介入方法を見つけ出すのに、一歩近づけます。
独自の使いやすさを追求する
ユーザーの視点から、独自の使いやすさの属性を書き出しましょう。自由度は高いですが、デザイナーやプロダクト組織の他のメンバーが使えるものでなければならないことも覚えておいてください。また、より一般的な視点からのヒューリスティック分析もおすすめです。
例えば:
直感的
一目見ただけで、何が起こっているのか、どうすれば作業ができるのかがわかるようにする。
時間短縮
私が作業を終わらせるのにかかる時間を短縮する。
共同作業
チーム内の他の人と一緒に作業をするのを助けてくれる。
習慣
自分が使い慣れた言語とメンタルモデルを使っている。
総体的
自分が関わる広範囲の販売エコシステムや、それに伴う使用の障壁が考慮されている。
動機づけ
自分が何かをすべき理由とその価値が示されている。
現状の測定
プロダクトを使いやすくするためには、現在の使いやすさ/使いにくさを把握するための仕組みが必要です。
上記のような測定基準があれば、継続的な測定システムを構築し、マトリクスで記録していくことができます。たとえば、次のようなことです。
プロダクトがこの尺度のどこに位置するか、あなた自身の直感的な推測から始めることができるので、まずはそこから始めましょう。ただし、その後に、実際の顧客調査も行なう必要があります。これは非常に主観的なものなので、特定の洞察については、路線変更したり、深く掘り下げたりできるような管理されたインタビューを実施するのがおすすめです。
尺度
これは、異なる分野の能力について理解し、優先順位をつけるのに役立つシンプルな尺度です。私はこの尺度をジョブ理論のマッピングにも使っていますが、これについては別の記事で詳しく説明します。
まず、質問をします。
当社のプロダクトを使った経験について、以下の項目で1〜5で評価してください。
そして、次のように回答してもらいます。
0 — まったくできない
1 — 難しい
2 — やや難しい
3 — 問題ない
4 — 簡単
5 — 思ったより簡単
未来像を明確にする
当然ながら、あなたのプロダクトはすべての領域で「5」であってほしいですよね?とはいえ、プロダクトの分野によっては、ビジネス価値を達成するために何が許容範囲なのか、異なる閾値があると思います。例えば、ダッシュボードがとても簡単であることは非常に重要かもしれませんが、より詳細な設定ページについてはそこまで重要ではないかもしれません。
ここで重要なのは、最大のギャップはどこか、短期的にも長期的にも現実的に達成可能なことは何かについて、積極的かつ協力的な対話を継続して行なうことです。ローマは一日にして成らず。ただし、毎日、何かが築かれているのです。今日はいったい何ができるでしょうか?
まとめ
プロダクト開発組織は、UXに関して目を覚ます必要があります。私たち全員が、もっと率先して実際にユーザーが体験していることの複雑さを理解しようとしなければなりません。そうすることで、私たちのプロダクトは本当に愛されるものへと一歩近づくのです。
翻訳:Kanako Noda