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会話調かくだけ調か ー UXライティングにおけるトーンの違い

会話調かくだけ調か ー UXライティングにおけるトーンの違い

翻訳記事 Jun 08, 2022

この記事はMediumブログ: Conversational vs. casual — the different tones in UX writingの翻訳転載です。著者のヤエル・ベン・デイヴィッドさんの許可を得て公開しています。

会話調でコピーを書くことの重要性については、誰もが耳にしたことがあるはずです。でも、それは実際には何を意味するのでしょうか?また、どうしても反対がある場合、どう対処すべきでしょうか?

会話調

「会話調」とは、コンピューターのようにではなく、人間が話すように書くということです。

例えば、肯定文でI'llやWe'reのような縮約形を使う場合がそうです。(否定文における縮約形については、リーダビリティのガイドラインと合致しないのですが、どんなルールにも例外はありるものです。)私の個人の経験則では、それほど重要性がないとても軽いメッセージの場合を除き、慎重を期して否定文での縮約形は使わないことにしています。例えば、「You are not approved(承認されませんでした)」と書き、「aren't approved」とは書きません。というのも、このメッセージは重要だからです。「Not your jam? Don't worry(好みではないですか?でも大丈夫)」などは、それほど重要なメッセージではないので縮約形もOKとしています。

ただし、「会話調」なら何でもありということではありません。例えば、インクルーシブであることや翻訳を考えると、やはり普通はスラングは避けるのがベストです。「会話調」とは、12歳の子供が書くような文章を意味するのではありません。ただ、人間が話しているように書くという意味です。

くだけ調

「くだけ調」は、打ち解けて、形式張らないトーンを意味します。銀行員が取締役会で話したり、大手術の直前に外科医が患者に話したりする場合ではなく、普段友達同士で話すような感じです。コピーをくだけ調にするかどうかは、ボイス&トーンにおける大きなテーマです。ブランドによってはくだけ調が正解の場合もありますが、そうでない場合もあります。

「会話調」にして間違うことはありません。

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UXライティングについて聞かれたら、私がいつも勧める本のひとつが、クリフォード・ナスの『お世辞を言う機械はお好き? コンピューターから学ぶ対人関係の心理学』です。本書では、人々がどれほどデジタル インターフェースに人間のような語り口を期待していて、それが叶わない場合にプロダクトのエンゲージメントがどれほど損なわれるかについて、実に興味深く、見事な研究が取り上げられています。

新しく昇進したティーチングアシスタントは、生徒との関係をカジュアルとは考えていなくても、彼女は人間であるため、会話を交わします。

 では、何が問題なのか?

多くの人はまだ「会話調」と「くだけ調」の違いを理解しておらず、UXライターは、会話調コピーはくだけすぎているという反発を受けます。ですが、これは、パーティーがにぎやかすぎると言っているようなもの。でも、パーティーは常ににぎやかであるべきです。となると、それは、うるさすぎるという意味かもしれません。ですが、にぎやかなのとうるさいのは同じではありません。うるさくなくてもにぎやかであることが可能なように、くだけ調になることなく会話調にすることはできます。うるさくてくだけた口調が適切な時と場所もありますが、常にそうとは限りません。会話調であるのとうるさいのは同義ではないのです。

この難問をうまく説明する良い方法は、実は私にもわかっていないのですが、例を挙げると大抵わかってもらえます。それには、パーソナリティの観点から説明を試みるのがいいかもしれません。なぜなら、ブランドボイスは、ブランドのパーソナリティを実際に反映するものでなければならないからです。例えば、ブランドボイスが、うつ病のホットラインカウンセラーのように、控えめで、共感できるものだと仮定しましょう。そのホットラインのモバイルアプリのコピーを書いているとします。「お問い合わせ」のフローのコピーで、ターゲット層は危機的状況にあるユーザーだとします。

  • NO/ 会話調かつくだけ調:どうも、ほんと辛いよね。良かったら電話ちょうだい。
  • NO/ 会話調ではなくくだけ調でもない:関係各位:連絡先を入力してださい。
  • NO/ 会話調ではないがくだけ調:こんにちは、電話番号を送信してね。私たちが電話をかけます。
  • YES/ 会話調だがくだけ調ではない:こんにちは、こちらからご連絡しますので、いちばん都合の良い電話番号をお教えください。

最後の例が、私たちが目指すものです。

もし自分で書いていて、「こんな話し方をする人はいないな」とか「こんな言葉、今まで一度も使ったことがない」と思ったら、そのコピーは会話調ではありません。だからと言って、あらたまった関係とくだけた関係の両方で、あるいは威圧的な環境と慣れ親しんだ環境の両方で、言葉の裏にポジティブな感情やネガティブな感情を抱きながら、誰かが話すのを聞いたこともなければ、自分自身が話したこともないはずだと言っているのではありません。とはいえ、どのような場面でどんなトーンであっても、そこでのあなたと、あなたが関わる人たちは、普通の人の話し方をしています。コピーもそうであるべきなのです。

翻訳:Kanako Noda


執筆者プロフィール:ヤエル・ベン・デイヴィッド (Yael Ben-David)

サンフランシスコを拠点とする金融サービスプラットフォームFundboxのUXライター。ヤエルは複雑なプロダクトを専門とし、革新的なテクノロジーを一般市場に届けることに情熱を注いでいます。チームとの密な連携をとりながら、マイクロコピーやトランザクションメールのライティング、ボイス&トーン、スタイルガイドの作成を行っています。
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