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キネレット・イフラさんの記事

誰がマイクロコピーを書けばいい?

翻訳記事 Apr 11, 2021

この記事はinvisionのブログ: Who should write your microcopy?の翻訳転載です。著者のキネレット・イフラさんの許可を得て公開しています。

ユーザーにプロダクトの使い方を説明し、実際に使ってもらい、コンバージョン率を上げる。UXやユーザーエンゲージメント戦略に、マイクロコピーは無くてはならないものになってきました。

マイクロコピーが重要であることは言わずと知れたことですが、どの職業や職種の人がマイクロコピーを書くべきでしょうか。

優れたマイクロコピーライターに必要なスキルとは

 マイクロコピーライターは、コンテンツ、UX、マーケティングを理解している「三拍子揃ったライター」です。

では、マイクロコピーライターに向いているのはどんな人なのでしょうか?

当然ながら、書く時はタイプライターが良いという人は、デジタルプロダクトに不向きです。UXの専門家で、ダミーテキストでも平気という人も、コピーライティングには向いていないかもしれません。

あなたが、UXはやはりUX設計者に任せるべきだと思うマーケティングオタクなら、プロダクトの使い勝手を考えるよりも、いかに潜在的なユーザーを獲得するかを考える方が合っているでしょう。

コンテンツ、UX、マーケティングに対して等しく気を配れる、または少なくともそれらの1つに特化し、全体にある程度の気遣いができるのがマイクロコピーライターです。これが他のライターと違うところです。

では、あなたはどんなタイプのライターでしょうか?


Photo: Carina Konig

コンテンツライター&コピーライター

あなたがユーザーの心に響く文章を書けるのなら、あとはUXとユーザーの行動について勉強するだけです。しかし、この部分は直感的にわかるものではなく、コピーライティングの講座でも教えてくれません。

マイクロコピーは、あなたがすでに知っているコピーライティング(読み手の心に響かせる)の知識と、プロダクトのライティングの知識を組み合わせたものです。たとえば、エラーメッセージはどのような場合に表示されるのか、何を伝える必要があるのか、そしてなぜ表示されるのか、などです。

マイクロコピーライターと他のライターの違い。それは、コンテンツ、UX、マーケティングをどれも平等に気に掛けていること。

コンバージョンの知識を、ボタンや入力欄の機能に活かすと考えてみてください。

ニュースレターやウェブサイトに登録してもらうために、ユーザーの背中を一押しするにはどうすれば良いか?エンゲージメントを高める可能性の高い、確認メッセージの4つの要素とは何か?インラインコピーよりもツールチップ(補足説明をポップアップ表示すること)のほうが効果的なのはどんな状況か?

この種のライティングはUXライティングと呼ばれますが、UXの分野の人々と一緒に仕事していれば、習得不可能ではありません。私自身、UXの知識がゼロだったところから出発し、経験を積んできたのですから信用してください。

学ぶための根気と、教えてくれるチームメートさえいれば(大概は親切に教えてくれます)マイクロコピーは簡単に学ぶことができます。

マーケティングライター

あなたがマーケティングライターであれば、既にニュアンスを大切にしたユーザー目線のライティングができているはずです。コンテンツライターと同様に、親切なUXの専門家がいれば習得することができます。

UI/UXデザイナー

あなたがUI/UXデザイナーであれば、自身で文章を書くこともできますが、自分で書かなくてはと思う必要はありません。あなたは何よりもまずデザイナーであり、誰もあなたにコピーライターになれとは言いません。同僚のコピーライターに、Sketchを使ってUI開発させたりしないのと同じです。

とはいえ、もしあなたが言葉が好きで、コピーに挑戦してみたいのであれば、UXデザインからマイクロコピーライターになるのは、あり得ないことではありません。良いマイクロコピーを書くルールとは、すでにあるUXの知識(基本的にはどうやってユーザーを満足させるか)にマーケティングの要素を少し加えて、いかにユーザーの満足度とエンゲージメントを高めるかです。

しかし、UXの講座でUXライティングを教えるとは限りませんし、たとえUXライティングに触れたとしても詳しく教えることはほとんどありません。そのため、ライティングが得意なデザイナーでも、ユーザーを惹きつける効果的な文章の書き方を知らないことがあります。

たとえば、エンプティステートについて考えてみましょう。UXデザイナーであれば、エンプティステートが、「検索結果がない」または「買い物カートに何も入っていない」状態であることを知っていますが、この行き止まりを、マーケティングやエンゲージメントのゴールにつながる、価値あるやりとりに変える方法は知りません。

このような事例を学ぶために、コピーライティングの学校に通う必要はありません。UXの知識や視点でインターフェースの書き方や事例を学んでいけば、自然に習得できるはずです。

テクニカルライター

あなたがテクニカルライターであれば、インターフェイスを理解し、複雑なコンセプトをシンプルに説明する能力に長けています。優れたマイクロコピーを書くためには、システムではなくユーザーのために書く方法を学べばよいのです。

システムのためのライティングは、システムができること、できないことに焦点を当てます。ユーザーのためのライティングは、システムがユーザーのために何ができるか、システムがユーザーにどんな価値をもたらすかに焦点を当てます。ユーザー視点にシフトするには、プロダクトマネジャーや開発者のために書くのではなく、ユーザーのために言葉を書く必要があります。*

*いつの日か、すべての文書がユーザー向けに書かれるようになってほしいと願っています。技術マニュアルが化学の教科書のように書かれていても仕方ありませんからね。

この類で分かりやすい例が、警告やエラーメッセージです。テクニカルライターにとって、エラーメッセージの報告はシステムに宛てたものです。たとえば、「入力された値は無効です」 のようなエラーメッセージです。しかし、ユーザーを対象にした文章では、何よりも人間味のある言葉を使わなければなりません。メッセージの読み手が怖がったり、責められていると感じたりしないように、何が問題なのか、どうすれば解決できるのかを理解してもらう必要があります。

ブランドイメージとして許されるのであれば、ちょっとしたユーモアでユーザーの気分を盛り上げることができます。Hipmunk(トラベル検索エンジン)で30日間ホテルを予約してみてください。





では、誰がマイクロコピーを書くのか


大企業の場合はどうでしょう?

大企業の場合はどうでしょう?

組織の規模が大きくなればなるほど、それぞれのライターの担当領域には、違いや区別が生じます。プロジェクトや予算にもよりますが、マイクロコピー専門のライターを配置することをお勧めします。

そうすることで、広告やマーケティングのスローガンやバナー、販売ページを担当するコピーライター。ニュースレターやランディングページ、ブログ記事、ソーシャルメディアなどを書くコンテンツライター。

そしてプロダクトそのものに表示されるコピーを専門とするマイクロコピーライター(UXライターとも呼ばれる)が存在することになります。

可能な限り、マイクロコピーに特化したライターを配置すること

 

理想的には、3人のライター全員が同じトーンとブランドボイスに沿って書くことで、会社全体で首尾一貫したメッセージを届けることができます。

リリース用のコピーのように、1回限りのプロジェクトの場合は、トーンやブランドボイスの設計を取りまとめて、それに合わせてマイクロコピーを書いてくれる外部の契約者と協力する方が理にかなっているかもしれません。

もちろん、複数のプロダクトや、継続的な更新、リリースを行う場合にもこの方法は使えます。しかしその場合は、社内のライターに頼むか、フリーランスのライターと時間単位で長期契約する方が合理的です。

専属のマイクロコピーライターと長期的に仕事することで、彼らがプロダクトの奥深さや複雑さ、ターゲット層に精通したライターになり、彼らのコピーがライティング全体のパズルにフィットするようになります。

社内でマイクロコピーを書きたいが専属のライターがいない場合、組織体制やプロダクトの担当部署が、誰がコピーを書くかを決める上で重要になります。マーケティング部門がプロダクトのコピーを書く場合もあれば、コンテンツ制作部門がマイクロコピーも書く場合もあるでしょう。テック系の企業になればなるほど、テクニカルライターにマイクロコピーライティングを担当させるのが一般的です。


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スモールビジネス

規模が小さい会社ほど、一人あたりの仕事の範囲も広くなります。

たとえば、小規模のEコマース企業では、コンテンツ(会社概要、ブログ記事など)、コピー(スローガンや見出し)、マイクロコピー(オンラインショップそのもののコピー)それぞれにライターを雇う余裕はありませんし、雇うべきでもありません。資金面の問題だけでなく、お互いをよく知らない2、3人のライターにトーンやブランドボイスを合わせる作業をさせても、収拾がつかなくなるおそれがあります。

コンテンツライターにマイクロコピーの経験がない場合、購入、リードフォームの記入、または手厚いサポートの必要なフォームへの記入など、デリケートなプロセスのユーザー行動を理解している人とペアを組むべきです。

また、UX担当者がマイクロコピーライティングを理解しているなら、彼ら自身がライティングを担当することもできます。(ただし、ブランドの言葉に精通していて、一貫性を保つことができる場合に限ります)

いずれにしても...

あなたの会社のマイクロコピーの担当者は、プロダクト上でユーザーをガイドし、販売するための両方の知識とスキルセットを持っていなければなりません。つまり、優れたマーケティング用のライティングと、UXやユーザーの行動パターンに対する徹底的な理解です。

このような重要な用語をただ知っている人ではなく、プロダクトに実際に落とし込める人を見つけてください。

 



執筆者プロフィール:キネレット・イフラ(Kinnert 
Yifrah

イスラエルのトップクラスのマイクロコピー専門スタジオ、ネマラの代表。デジタルプロダクトのコンテンツとマイクロコピーのライティングで10年の実績を誇り、あらゆる業界、あらゆる規模の企業のためにボイス&トーンのデザインを続けている。
著書:UXライティングの教科書(翔泳社)  |  オンラインコース LinkedIn